ドライアイで悩む人必見! 新しい治療法「IPL治療」の効果や注意点を医師が解説!
「ドライアイ」は、単に目が乾いた状態だけを指すのではなく、治療の対象になる病態なことをご存じですか? ドライアイの治療法にはいくつかあり、その中でも新しい治療法である「IPL治療」は、光エネルギーを用いてドライアイの症状を緩和する画期的な方法です。今回は、IPL治療の効果や従来の治療法との違いなどについて、「CS眼科クリニック」の宇井先生に解説していただきました。
監修医師:
宇井 牧子(CS眼科クリニック)
ドライアイとは?
編集部
ドライアイとは、どんな状態ですか?
宇井先生
私たちの目は、泣いていないときでも涙で覆われています。涙のことを専門用語で「涙液」というのですが、涙液の安定性が低下し、様々な眼症状が出る状態をドライアイと言います。涙は1%の脂(油層)と99%の水(液層)で構成されているので、ドライアイも「水が足りないタイプ(涙液減少型)」と「脂が足りないタイプ(蒸発亢進型)」の2タイプに分類されます。
編集部
具体的に、どのような症状が出るのでしょうか?
宇井先生
- ごろごろするといった異物感
- 目が疲れる(眼精疲労)
- 痛みや刺激感がある
- 涙目になる
- 灼熱感がある
- かゆい
- 充血しやすい
- 朝、目があけにくい
編集部
ドライアイになりやすい生活習慣はありますか?
宇井先生
ドライアイを引き起こす生活習慣には、様々なものがあります。特に「スマートフォンやパソコンの使い過ぎ」「コンタクトレンズの長時間利用」「エアコンなどで乾燥した場所に長時間いる」「瞬きが少ない」などが原因となります。こうした状態が続くと涙が蒸発しやすく、目の表面の細胞が傷つきやすくなるのです。また、目の表面が傷ついていなくても症状が出ることもあります。
編集部
ほかにも、ドライアイの原因はありますか?
宇井先生
水が足りないタイプのドライアイは、涙を作る涙腺の機能低下などによって涙の量が不足することで起きます。加齢をはじめ、「シェーグレン症候群」などの自己免疫性疾患、薬物アレルギーによる「スティーブンス・ジョンソン症候群」といった病気などが原因として挙げられます。
編集部
脂が足りないタイプの場合はどうですか?
宇井先生
最近の研究で、「脂が足りないタイプのドライアイが全体の86%以上である」ということがわかりました。つまり、成分の1%である涙の脂が大切ということです。その脂を出すのが、上下のまぶたにある「マイボーム腺」です。マイボーム腺の働きが悪くなっている状態を「マイボーム腺機能不全」と言います。
ドライアイの治療法
編集部
ドライアイの治療法について教えてください。
宇井先生
まず、点眼薬による治療があり、ヒアルロン酸ナトリウム、ジクアホソルナトリウム、レバミピドなどが使用されます。
編集部
薬物治療以外の治療法もありますか?
宇井先生
脂が足りないマイボーム腺機能不全の治療の1つとして、「温罨法(おんあんぽう)」というまぶたを温める方法があります。マイボーム腺の脂を溶かし、まぶたの血流を改善します。まぶたの温度を38度前後に上昇させ、じっくりと5分以上保つことが重要です。
編集部
ほかには、どんな治療法がありますか?
宇井先生
まぶたを清潔に保つ「眼瞼清拭(リッドハイジーン)」という方法もあります。汚れたマイボーム腺の脂の排出を促し、固まってしまった古い脂や角化物を除去、さらにマイボーム腺周囲の細菌量を減らすためにおこないます。温罨法の後に、指の腹でまつ毛の根元周囲を優しくマッサージするとさらに効果が高まります。洗顔や歯磨きと同様、毎日やるのが有効です。
新しいドライアイ治療「IPL」
編集部
それでも改善しなかった場合、どんな方法がありますか?
宇井先生
水が足りないタイプのドライアイに対しては、涙点にシリコン製の小さな栓をはめ込む「涙点プラグ挿入術」という方法があります。水が足りないタイプの場合、涙腺から分泌される涙の量が少ないのに、涙の排出口である涙点からはしっかり排出されてしまうことでドライアイが起こるので、涙点を栓(涙点プラグ)で塞いで、少ない涙を目の表面に溜めるようにするのです。なお、涙点プラグは永久的に使えるわけではないため、定期的に処置を継続する必要があります。
編集部
最近は光を用いた治療もあると聞きました。
宇井先生
脂が足りないタイプのドライアイに対する「IPL治療」ですね。IPL(Intense Pulsed Light)は、レーザーのような単一波長ではなく、広い波長の光エネルギーを出す器械です。IPLを目の回りに当てることにより、マイボーム腺の働きを改善させることができるのです。熱によってマイボーム腺の脂を融解させるだけでなく、抗炎症作用や細菌・まつげダニの感染抑制、そしてマイボーム腺そのものの修復も期待できます。
編集部
具体的に、どのような流れでIPLを当てるのでしょうか?
宇井先生
まずは洗顔をしていただき、当てる部分(目の周り)にジェルを塗り、眼球を保護するアイシールドを装着した後にIPLを当てます。個人差はありますが、IPLを当てている間は、弾かれるような痛みと温かさ、まぶしさを感じます。その後、洗顔をして帰宅という流れです。施術時間は10分ほどで、1回でも効果が感じられるケースもありますが、3~4週間ごとに、4回の治療がおすすめです。
編集部
IPL治療を受ける上での注意点はありますか?
宇井先生
保険適用ではなく自費診療となるので費用がやや高額な点と、医療機関によって費用に差がある点には、注意が必要です。なお、治療そのものについての副作用やリスクなどは、現時点で報告されていません。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
宇井先生
点眼薬によるドライアイ治療は、あくまでも症状を緩和するものであって根本治療ではありません。マイボーム腺機能不全など、脂が足りないタイプのドライアイに対する新しい治療法であるIPL治療は、マイボーム腺そのものの働きを改善させることが期待できます。副作用やリスクもないので、ドライアイに困っているのであれば、ぜひ一度試してみてください。ただし、IPL治療は比較的新しい機器を使用するということもあり、対応している医療機関は限られています。事前に電話やインターネットなどで確認してから受診することをおすすめします。
編集部まとめ
新しいドライアイ治療法「IPL治療」について解説していただきました。IPL治療は、これまでの点眼薬による治療とは異なり、根治治療が期待できる画期的な選択肢となり得ます。施術時間も10分ほどで、副作用も報告されていないということなので、ドライアイに悩んでいる人は、IPL治療が受けられるお近くのクリニックを探してみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷3-15-1 美工本郷ビル8F |
アクセス | 東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線「本郷三丁目駅」 徒歩5分 東京メトロ丸ノ内線・JR「御茶ノ水駅」 徒歩10分 |
診療科目 | 眼科 |