「一部のドライアイには市販の温熱アイマスクが有効」眼科医が教えるドライアイ対策
目の乾きだけが症状だと思われがちな「ドライアイ」ですが、眼精疲労によって肩こりや頭痛などを伴う可能性があるということをご存知でしょうか。様々な原因の中でも「マイボーム腺機能不全」によるドライアイは、目の周りを温めることで症状の緩和が期待できるとされています。そこで今回は、ドライアイの原因や症状、その対策について、ドライアイが専門分野で目の病気予防や健康増進に力を入れている「丸山眼科クリニック」の丸山先生にお話を伺いました。
監修医師:
丸山 登士(丸山眼科クリニック 医師)
東京医科大学医学部卒業。群馬大学眼科学教室入局後、関連病院等で勤務医・眼科医長を務める。2019年より「丸山眼科クリニック」に勤務。円錐角膜、ドライアイが専門分野。医学博士。群馬大学眼科非常勤講師、三栄会ツカザキ病院眼科顧問。日本眼科学会専門医、日本抗加齢医学会認定医。
ドライアイとは?
編集部
そもそも、ドライアイとはどのような状態なのでしょうか?
丸山先生
※ドライアイ研究会「日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016 年版)」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000172618.pdf
編集部
ドライアイの原因はなんでしょうか?
丸山先生
ドライアイの原因は、加齢によるものや目の病気によるもの、パソコンの長時間使用によるまばたき回数の減少、コンタクトレンズの装着による目の酸素不足など様々です。また、寝不足や精神的ストレスが原因でドライアイになることもあります。
編集部
ドライアイになってしまうと、具体的にどのような症状がみられるのでしょうか?
丸山先生
よく言われている目の乾き以外にも、ゴロゴロするなどの違和感や目が開けにくい、かすんで見える、充血などの症状がみられます。また、目の疲れなどの眼精疲労から、肩こりや頭痛を引き起こしてしまう人もいらっしゃいます。
編集部
目だけでなく、全身に症状が出ることもあるのですね。
丸山先生
そうですね。原因や生活習慣によって症状は人それぞれなので、目だけでなく全身に症状が現れることもあるようです。
ドライアイに温熱アイマスクは効果的?
編集部
ドライアイになってしまった場合、市販の温熱アイマスクなどを使用することは有効ですか?
丸山先生
どんな症状にも効果があるとは言えません。しかし、マイボーム腺機能不全が原因のドライアイの場合は、目の周りを温めることでドライアイによる症状が緩和されることはあるでしょう。
編集部
マイボーム腺機能不全について解説をお願いします。
丸山先生
マイボーム腺機能不全とは、涙液中の油分を分泌するマイボーム腺という小さな穴が正常に機能しなくなる状態です。ドライアイの患者さんの多くがマイボーム腺機能不全を併発していることがわかっています。加齢が原因であることが多いのですが、若い女性でもアイメイクの影響などでマイボーム腺が詰まってしまうことがあります。
編集部
マイボーム腺が機能しなくなると、目が乾きやすくなるということですか?
丸山先生
はい。マイボーム腺から分泌される油分は涙の蒸発を防ぐ役割があるので、マイボーム腺が詰まってしまうことで涙が蒸発しやすくなってしまうのです。このタイプのドライアイでは、目の周りを温めることによってマイボーム腺の詰まりやまぶたの血流が改善されて、油分が分泌されやすくなります。
編集部
温熱アイマスクを使用する際の注意点はありますか?
丸山先生
ドライアイを改善するために温熱アイマスクを使う場合、1カ月以上は継続して使うことが大切です。1回使用しただけでは、あまり効果が期待できません。また、個包装タイプの温熱アイマスクは、素材によっては肌に合わない人もいらっしゃいます。そのため、肌が赤くなったり痒くなったりした場合には、使用を中止した方がいいでしょう。
編集部
電子レンジで温めて繰り返し使える温熱アイマスクもありますよね?
丸山先生
繰り返し使用できるタイプは、高温にならないよう気をつけましょう。また、使用後は清潔に保つことも重要です。市販の温熱アイマスクの選び方としては、肌への刺激感などを確かめるために、最初は個包装タイプを使用してみて、合わなかったら繰り返し使用できるものに変えるといいかもしれません。個包装の商品は清潔で、使用する度に温める手間がない一方、コストがかかるというデメリットがあります。電子レンジなどで温めて繰り返し使用できるタイプは、低コストで温度が調整できるというメリットはありますが、衛生管理をする必要があります。そのため、各々の状況に応じて選んでみましょう。
編集部
反対に、温熱アイマスクを使用しない方がいい場合などはありますか?
丸山先生
結膜炎や眼瞼炎など、目の周囲に炎症を生じている場合は温めないよう注意してください。温めることで炎症が悪化してしまうことがあります。ご自身の目の症状が温めるとよくないのか判断できない場合には、自己判断で温めたりせずに一度眼科を受診してください。
ドライアイの予防法や改善法
編集部
ドライアイを予防するには、どうしたらいいでしょうか?
丸山先生
仕事などでパソコンを長時間使用する場合は、適宜目を休ませるようにしてください。時折、意識的にまばたきをすることも有効です。パソコンを使用していない場合でも、目の疲れを感じたら目を瞑って休ませてください。また、その際に温熱アイマスクを使用してもいいでしょう。
編集部
では、すでにドライアイが生じている場合の対策はありますか?
丸山先生
まず、ドライアイの原因を取り除くことが大切です。パソコンの長時間使用が原因である場合は目を休ませる時間を取る、空調や乾燥が原因の場合は加湿器を使用するといった、根本原因の除去をおこないましょう。また、普段からコンタクトレンズを使用している人は、帰宅後や週末はメガネに変えるのも対策の1つです。
編集部
ドライアイの症状が出たら、受診した方がいいですか?
丸山先生
そうですね。いくつもの原因が重なっているドライアイもあったり、慢性的になってしまって色々な症状があってもご本人が気付いていなかったりすることもあります。また、「たかがドライアイ」と思っていても、眼精疲労から全身に症状を伴うこともあるのです。そのため、ドライアイが疑われる場合には、一度眼科を受診した方がいいでしょう。
編集部
ドライアイに対して、どのような治療がおこなわれるのでしょうか?
丸山先生
まずは自覚症状や他覚的な所見を診察し、必要に応じて点眼薬などの治療を検討します。また、ドライアイの原因を取り除くほかに、生活習慣を改善するための注意点やアドバイスなどをお伝えすることもあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
丸山先生
ドライアイはご本人が気づかないうちに進行し、慢性的な症状になってしまうことがあります。そのまま放置すると、やがて全身症状につながることもあるため、定期的に眼科で診てもらうことが重要です。また、精神的な問題が原因でドライアイになってしまうこともあります。寝不足を予防するほか、適宜ストレス発散を心がけるようにしましょう。
編集部まとめ
ドライアイはパソコンの長時間使用のほか、乾燥や精神的なストレスなど、様々な要因で生じる疾患とのことでした。また、温熱アイマスクはマイボーム腺機能不全によるドライアイの場合に有効とされていますが、温めてはいけないケースのドライアイもあるため、一度眼科で相談してから対策をしていきましょう。
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診療科目 | 眼科 |