「変形性関節症」になりやすい人の特徴はご存じですか? 症状・対処法も医師が解説!
変形性関節症で痛みのあるときは、どうしても安静にしがちですが、適度に運動をした方がいいのだそうです。今回は、変形性関節症の予防・治療のために運動すべき理由について、「田中整形外科医院」の田中先生に解説していただきました。
監修医師:
田中 秀(田中整形外科医院)
変形性関節症とは? どの関節に起こりやすい?
編集部
まず、変形性関節症について教えてください。
田中先生
変形性関節症は、関節の動きを滑らかにするための軟骨が摩耗し、関節の変形や炎症が生じる慢性疾患です。関節軟骨の役割である「衝撃の吸収」や「関節の滑りを助ける」という役割ができなくなるため、動きにくくなったり痛みが生じたりします。
編集部
どのような症状が出ますか?
田中先生
変形性関節症の発症初期は、痛みや動かしにくさだけであることが多いですね。進行してくると、腫れや関節の可動域の制限、関節の変形なども起こってきます。さらに進行した場合には、関節そのものが使えなくなってしまいます。
編集部
どんな人が変形性関節症になりやすいのでしょうか?
田中先生
とくに50歳以上の女性に多くみられます。酸化ストレスや食後高血糖による糖化ストレス、DNA損傷、ミトコンドリア機能低下などが加齢によって起こるためです。その一方で、若い人や男性も発症します。ほかのリスク要因には、遺伝的要因、関節に負担のかかる生活習慣や環境、過去の関節の怪我や感染などがあります。
編集部
どの関節が変形性関節症になりやすいですか?
田中先生
理論上は全ての手足の関節に起こり得る疾患ですが、股関節や膝関節などの使う頻度が高く、体重がかかりやすい関節に起こることが多いですね。
変形性関節症になったらどうすればいい? 放置するとどうなるの?
編集部
変形性関節症を発症したら、どうすればいいのでしょうか?
田中先生
変形性関節症は、一度発症してしまうと完治するのは困難です。そのため、早期に発見して進行を予防していくのが治療の目的となります。
編集部
変形性関節症を放置するとどうなるのですか?
田中先生
衝撃の吸収や滑らかに動かすことができなくなった関節を無理に使い続けていると、関節面にさらに負担がかかります。その結果、痛みも増しますし、その関節自体が機能を失っていくだけでなく、症状のある関節を庇おうとしてほかの関節にも負担がかかってしまいます。機能しなくなった関節は、人工関節置換術などの手術をするしかありません。
編集部
具体的に、どのように進行を予防していくのでしょうか?
田中先生
関節にかかる負担を減らすのがポイントです。とくに足の関節の場合、過体重の人は体重を減らすのがとても大事ですね。それに加えて、適度な運動をして筋力を維持することも大切です。
変形性関節症でも運動するの? 整形外科医が解説!
編集部
関節が痛くても運動した方がいいのですか?
田中先生
もちろん痛みが出ない範囲にはなりますが、筋肉をつけるための運動をおこなうことをおすすめします。筋肉がつけば関節にかかる負担を減らすことができますし、関節を動かすことで血流が良くなり、関節液が軟骨に吸収されるので栄養が届きやすくなるからです。例えば当院であれば、膝の変形性関節症に対して、内転筋や大腿四頭筋、腹筋や骨盤底筋群のトレーニングを指導しています。
編集部
運動が有効なのですね。
田中先生
しかし、ただやればいいというわけではありません。適度なウォーキング程度であれば問題ありませんが、筋トレなどを自己流でおこなうと関節に余計な負担がかかるリスクもあります。大事なのは痛くない運動からはじめ、徐々に負荷を上げていくことです。できれば一度、理学療法士などの専門家から指導を受けてから運動することをおすすめします。
編集部
関節に負担のかかりにくい運動を教えてもらうのですね。
田中先生
それだけでなく、筋肉のバランスには個人差がありますし、関節に負担のかかりやすい生活動作や生活環境で過ごしている場合は、そちらに対しても個別のアドバイスがもらえると思います。初期のうちに対応すれば、進行を食い止めることができるのです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
田中先生
運動には様々な効果があり、今回解説した変形性関節症だけではなく、ほかの慢性疾患の発症・進行予防にもなります。繰り返しになりますが、ただやればいいというわけではないので、特に痛みのあるケースなどは自己流ではなく一度専門家の指導のもとで運動することをおすすめします。1人でも生涯手術を必要としない人が増えることを切に願っています。人生100年時代、「何歳になっても、今が一番幸せ」と思える人生を応援しています。
編集部まとめ
今回は、変形性関節症の症状や進行を予防する方法などについて解説していただきました。筋力低下を防いだり、血流を良くしたりする意味でも、適切に運動することが重要とのことでした。ただし、自己流でおこなうと怪我や症状の悪化の原因にもなりかねないので、医療機関や専門家から指導を受けたうえで取り組んでみてください。
医院情報
所在地 | 〒827-0002 福岡県田川郡川崎町池尻329-8 |
アクセス | JR日田彦山線「池尻駅」徒歩3分 |
診療科目 | リハビリテーション科、整形外科 |