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変形性膝関節症はどんな痛み・症状で診断されるかご存じですか? 原因や治療も解説

 更新日:2023/11/20
変形性膝関節症はどんな痛み・症状で診断されるかご存じですか? 原因や治療も解説

膝が痛くなり、放っておくと関節がどんどん変形していく「変形性膝関節症」は、何が原因で、どんな人が患いやすいのでしょうか? そこで変形性膝関節症について、病態や原因、治療法などを整形外科医の北里精一朗先生(北里整形外科クリニック院長)にMedical DOC編集部が聞きました。

北里 精一朗

監修医師
北里 精一朗(北里整形外科クリニック)

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1998年、東京慈恵会医科大学医学部を卒業後、22年間にわたり、大学病院および関連の基幹病院にて整形外科の診療、教育、研究に携わり、様々な膝関節外科手術や膝関節専門外来の経験を積む。2020年10月2日、新宿区江戸川橋で「北里整形外科クリニック」を開院。現在に至る。

変形性膝関節症とはどんな病気? ひざの痛み以外の症状・原因も知りたい 高齢でなくても20~30代で発症することはある?

変形性膝関節症とはどんな病気? ひざの痛み以外の症状・原因も知りたい 高齢でなくても20~30代で発症することはある?

編集部編集部

変形性膝関節症とはどんな病気ですか?

北里 精一朗先生北里先生

膝関節を滑らかに動かす役割をしている「軟骨」がすり減って、痛みや動かしにくさを引き起こす病気です。初期は痛みや動かしにくさのみのことが多いのですが、進行すると、腫れが生じたり、関節そのものが変形したりするのでこのような名前がついています。

編集部編集部

痛みだけではないのですね?

北里 精一朗先生北里先生

初期は「立ち上がりや動き始めにちょっと痛むだけ」という方が多いのですが、その後動かしにくさや動作時の異音(関節内でのクリック音やカチカチ音)などが伴ってきます。さらに、水が溜まってきて関節が大きく腫れたり、O脚やX脚などに変形したりしていきます。

編集部編集部

変形性膝関節症の原因は何ですか?

北里 精一朗先生北里先生

「変形性関節症」は膝関節だけではなく手足の指などにも起こりますが、とくに膝関節や股関節などの荷重関節に多く、やはり「荷重」と深い関係があるとされています。肥満や長時間の立ち仕事、立ちしゃがみの多い生活習慣などの過度な負荷は変形性膝関節症の要因とされていますし、ほかにも、遺伝的要因も関与していると言われています。男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢になるほど罹患率は高くなっています。

編集部編集部

20~30代で発症することはありますか?

北里 精一朗先生北里先生

稀ではありますが、20~30代で発症する方もいらっしゃいます。先ほどの荷重負荷や遺伝的要因に加え、スポーツなどで外傷の既往がある方だったり、骨や軟骨に何らかの先天的要因があったりする方は、若くても発症しやすいと思います。

変形性膝関節症の診断方法・基準を医師が解説 整形外科などの病院ではどんな検査で調べる? 自分でチェックは可能?

変形性膝関節症の診断方法・基準を医師が解説 整形外科などの病院ではどんな検査で調べる? 自分でチェックは可能?

編集部編集部

変形性膝関節症は、どのように診断されるのですか?

北里 精一朗先生北里先生

変形性膝関節症の診断は、症状や身体の状態を総合的に評価して行われます。一般的には問診(症状などの聞き取り)や膝関節の動き・腫れの確認、レントゲンやMRIなどの画像を評価して診断します。

編集部編集部

レントゲン画像ではどんなところを確認するのですか?

北里 精一朗先生北里先生

主に「関節裂隙狭小化」といって、関節の隙間がどれだけ狭くなっているかなどを確認します。立ち上がりや正座、階段の昇降の際に、一時的な膝の痛みやこわばりを感じるなどの症状が見られ、レントゲン画像で正常な関節と比べて一定程度の関節裂隙(太ももの骨と脛の骨の隙間)が狭くなっていることが認められると、変形性膝関節症と診断されます。ほかに、変形性膝関節症の患者さんには「骨棘(こつきょく)」と呼ばれる骨のトゲのような現象がみられることもあります。

編集部編集部

では、MRI検査は何を確認するのですか?

北里 精一朗先生北里先生

レントゲン検査では、骨の部分は確認できますが軟骨や半月板などの軟部組織の状態を確認することはできません。一方、MRI検査では軟部組織の撮影が可能ですので、関節裂隙狭小化や骨棘だけでなく、軟骨がすり減っているかや半月板の状態、骨髄病変などを見ることができます。あとは、診察やレントゲン撮影で変形性膝関節症以外の疾患が疑われた場合に、MRI検査を行う場合もあります。

編集部編集部

変形性膝関節症を自分でチェックする方法はありますか?

北里 精一朗先生北里先生

ご自身で診断することはできませんが、以下の項目に当てはまるものが多い方は変形性膝関節症の可能性があります。

□立ち上がった時や、歩き始めに膝が痛む
□膝の曲げ伸ばしで音が鳴ることがある
□正座ができなくなってきた
□膝がまっすぐに伸びない
□膝の関節が大きくなってきた気がする
□50歳以上である

当てはまる項目の多い方は、お近くの整形外科に相談することをお勧めします。

変形性膝関節症と診断されたらどうやって治療するの? 手術をしない保存療法とは? 症状の改善にはリハビリも必要?

変形性膝関節症と診断されたらどうやって治療するの? 手術をしない保存療法とは? 症状の改善にはリハビリも必要?

編集部編集部

変形性膝関節症の治療についても教えてください。

北里 精一朗先生北里先生

変形性膝関節症の治療は、大きく分けると保存療法と手術療法があります。基本的には、まずは保存療法で経過を確認し、症状が変わらなかったり、悪化していったりする場合に手術が検討されます。

編集部編集部

保存療法にはどんなものがありますか?

北里 精一朗先生北里先生

はじめに行われるのは、体重コントロールや関節に負担のかからない日常動作などの生活指導です。ほかには薬物療法として、消炎鎮痛剤の飲み薬やヒアルロン酸、ステロイドの注射。また運動療法、いわゆるリハビリテーションで筋肉をつけたり、体重コントロールをはかったりします。あとは温熱療法などの物理療法が選択されることもあります。薬物療法や物理療法は、比較的すぐに効果が感じられますが持続はせず、逆に運動療法はすぐ筋肉がつくわけではないので、結果が出るまで時間を要します。

編集部編集部

では、手術療法は?

北里 精一朗先生北里先生

変形性膝関節症の手術療法で最も多いのは、「人工膝関節置換術」です。関節そのものを、チタンやポリエチレンなどの人工関節に取り替えます。痛みや変形などの症状はかなり改善しますが、入院が必要だったり、術後のリハビリにやや時間がかかったりします。また、人工関節にしない術式として「膝周囲骨切り術」というものもあります。こちらは自分の関節を温存できますが、人工膝関節置換術よりもさらに長期間のリハビリが必要です。

編集部編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。

北里 精一朗先生北里先生

変形性膝関節症は基本的に、我慢していて自然に治癒するということがありません。むしろ適切に治療を行わないと、どんどん進行してしまいます。痛みが軽度であっても、立ち上がった時だけであっても、痛いようなら悩まずに病院を受診してみてください。それぞれの状態にあった適切な治療を紹介してもらえますし、ここでは触れませんでしたが、最近では保険適用外の最新治療である、再生医療を用いた「PRP療法」などの選択肢もあります。

編集部まとめ

立ち座りや歩行の際、常に体重がかかり続ける膝関節。適切に治療していつまでも元気で歩きたいところです。不調を感じる方は、我慢しても良いことはないようですので、早めに病院を受診しましょう。再生医療「PRP療法」など、治療の選択肢も広がっているようです。

医院情報

北里整形外科クリニック

北里整形外科クリニック
所在地 〒162-0811 東京都新宿区水道町4-13 3F(スーパーマルエツ内クリニックモール)
アクセス 東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅4番出口より徒歩3分
東京メトロ東西線「神楽坂」駅1番出口より徒歩8分
診療科目 整形外科、リハビリテーション科、スポーツ整形外科、小児整形外科

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