「変形性膝関節症」の症状別治療法を整形外科医が解説 運動療法・薬物療法・手術療法の違いは?
変形性膝関節症とはどんな病気かご存知でしょうか? 自力で治すことはできるのか、手術やヒアルロン酸注射、痛み止めなど、治療・対処法なども気になるところです。そんな「変形性膝関節症の症状別治療法」について、運動療法・薬物療法・手術療法の違いなどを中心に、整形外科医の竹内弘毅先生(たけうち整形外科院長)に話を聞きました。
監修医師:
竹内 弘毅(たけうち整形外科)
目次 -INDEX-
変形性膝関節症とはどんな膝の病気?病院やクリニックに行かずに自力で治すことはできる?
編集部
変形性膝関節症とはどんな病気ですか?
竹内先生
膝の関節にある軟骨がすり減って、関節に痛みや動かしにくさを引き起こす病気です。初期は痛みや動かしにくさのみのことが多いのですが、進行すると、腫れを生じたり、関節そのものが変形したりするのでこのように呼ばれています。「変形性関節症」は、膝関節だけではなく手足の指などにも起こりうる病気ですが、とくに膝関節や股関節などの荷重関節に多くみられます。
編集部
どんな方が変形性膝関節症になりやすいのですか?
竹内先生
患者さんの8割は女性です。また、軟骨がすり減ってしまうのは、加齢や肥満が主な原因です。ほかにも、O脚で膝が横揺れ(スラスト/thrust)しがちだったり、大腿四頭筋の筋力が低下していたりすることも、変形性膝関節症と関連があると報告されています。生活環境では、スポーツ活動を多く行っていた方や、正座・横すわりといった習慣のある方、立ちしゃがみの多い仕事をされている方なども、変形性膝関節症になりやすいと言われています。
編集部
変形性膝関節症は自力で治すことはできますか?
竹内先生
進行を遅らせることは出来ると思います。そもそも一度すり減った軟骨を元に戻すのは難しいのですが、対症療法的に筋力強化や体重コントロール、生活動作の改善、サポーターの装着などで、膝関節への負担を減らし、症状を感じにくくすることは可能です。
変形性膝関節症の治療法 運動療法・薬物療法・手術療法は何をする? ヒアルロン酸注射・マッサージは有効?
編集部
変形性膝関節症の治療にはどんなものがありますか?
竹内先生
変形性膝関節症の治療は、大きく分けると、運動療法・薬物療法・手術療法の3つです。
編集部
それぞれについて教えてください。まずは運動療法から。
竹内先生
運動療法は、いわゆるリハビリテーションですね。筋肉をつけたり、身体の正しい使い方などを習得したり、さらには有酸素運動をしたりすることで体重コントロールもはかっていきます。筋肉は、すぐにつくわけではないので、コツコツと継続することが大切です。
編集部
続いて、薬物療法は?
竹内先生
変形性膝関節症に対する薬物療法には、消炎鎮痛剤の飲み薬や湿布などの外用剤、関節軟骨を保護するヒアルロン酸や抗炎症作用のあるステロイドの注射などがあります。いずれも即効性はありますが、効き目が持続しないので、薬の効果が切れると、また痛くなってしまう人も多いですね。
編集部
マッサージなどはどうですか?
竹内先生
マッサージや物理療法は筋緊張の緩和や血行促進などの効果があり、「痛みが楽になった」という方は多くいらっしゃいますが、炎症を抑えるような根本的な治療ではなく、効果は短期的な事が多いですね。
変形性膝関節症の治療で手術療法を医師が説明 術後の症状の経過・改善度合い、生活上の注意点は?
編集部
手術療法について教えてください。
竹内先生
最も一般的なのは、人工膝関節置換術です。痛んだ関節軟骨を削って、チタンやポリエチレンなどのインプラントに取り替えます。人工膝関節置換術以外では、大腿骨やすねの骨を切ってO脚を矯正し、痛みの改善をはかる骨切り術という術式もあります。
編集部
症状はすぐに改善するのですか?
竹内先生
手術ですので、傷の痛みはしばらくありますが、歩行時の痛みはかなり改善し、O脚変形も解消されるため、手術前と比べて非常に活動的になる方が多いですね。もちろん、手術後すぐにスタスタと歩けるわけではありません。術後リハビリを行って、少しずつ活動性を上げていきます。
編集部
術後はどれぐらい改善が期待できるのですか?
竹内先生
痛みが改善することで、今までできなかった活動ができるようになり、旅行に行けるようになった、と言っていただくことも良くあります。ただ、ほとんどの人工膝関節は、正座や横すわりなどの動作に対応できるようには設計されてはいませんので、それらの動作は推奨していません。術後に、せっかく手術をして置換した人工関節に負担をかけないためにも、生活環境の見直しをお勧めしています。可能であれば、畳・床すわりの生活ではなく、椅子に座る生活環境にシフトしていただけたらと思っています。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
竹内先生
「痛み」や「動かしにくさ」というのは、QOL(Quality of life:生活の質)を大きく下げます。手術をせずに自力で症状を緩和したり、進行を遅らせたりするのも良いですが、根治治療である手術療法も、ぜひ検討してみてください。また、最近は「再生医療」という新しい選択肢もできつつあります。まだ保険適用にはなっていないため自費診療となりますが、「どうしても手術は避けたい」とか、「仕事や家の都合でまとまった期間の入院が難しい」という方は、お近くの医療機関を調べてみると良いと思います。
編集部まとめ
「変形性膝関節症」について、病態や症状、治療法などについてお話を伺いました。運動療法・薬物療法・手術療法、それぞれについて特性を知ることで、患者さん自身の選択の幅も広がると感じました。生活環境も大事ですね。
医院情報
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アクセス | JR「西荻窪駅」より徒歩14分 西荻窪駅より関東バス「桃井四丁目」下車すぐ |
診療科目 | 一般整形外科、スポーツ整形外科、小児整形外科、リハビリテーション科、リウマチ科 |