FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. “乳がん検診”で「要精密検査」と判定されたら? 細胞診・針生検についても医師が解説

“乳がん検診”で「要精密検査」と判定されたら? 細胞診・針生検についても医師が解説

 公開日:2024/02/13

乳がん検診で「要精密検査」という結果が出たら、不安で眠れなくなってしまう方や、怖くて受診を先延ばしにしてしまう方がいるそうです。では、「要精密検査」との結果を受け取った場合、どのようなことをすればよいのでしょうか? 高崎乳腺外科クリニック 院長の吉田 崇先生にお聞きしました。

吉田 崇

監修医師
吉田 崇(高崎乳腺外科クリニック)

プロフィールをもっと見る
1992年に山梨医科大学(現 山梨大学医学部)卒業後、埼玉県立がんセンター 乳腺外科、群馬大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科、SUBARU健康保険組合 太田記念病院 乳腺外科などで経験を積み、2020年、群馬県高崎市に「高崎乳腺外科クリニック」を開院。日本乳癌学会 乳腺専門医・指導医、日本外科学会 外科専門医・指導医、検診マンモグラフィ読影認定医(A判定)、乳がん検診超音波検査実施・判定医。

乳がんはどんな病気? 初期の症状は?

乳がんはどんな病気? 初期の症状は?

編集部編集部

まず「乳がん」とはどんな病気ですか?

吉田 崇先生吉田先生

乳房の中には、「乳腺組織」という組織があります。乳腺組織は、乳汁を作る「小葉」と作られた乳汁を乳頭まで運ぶ「乳管」からできており、これらががん化して異常に増殖することによってできる悪性腫瘍が、乳がんです。

編集部編集部

初期の乳がんにはどのような症状がありますか?

吉田 崇先生吉田先生

ごく初期の段階だと、症状はあまりみられません。進行するにつれて、しこりや人によっては血性分泌物、エクボのような凹凸、皮膚のただれなどが現れます。しかし、気がつかず何カ月も経ってしまったという方も多いので、40歳以上の方は特に早期発見・早期治療のためぜひ定期的に乳がん検診を受けてください。

編集部編集部

乳がんの検診では、どのように乳がんを発見するのですか?

吉田 崇先生吉田先生

まずはマンモグラフィ乳腺の超音波検査を行い、疑わしい所見があった場合にはさらに細胞や組織を取って調べる検査を行います。

乳がん検診、それぞれの検診方法について教えて!

乳がん検診、それぞれの検診方法について教えて!

編集部編集部

マンモグラフィではどんな検査を行いますか?

吉田 崇先生吉田先生

マンモグラフィは、乳房専用のレントゲン検査です。乳房を圧迫するため痛みがありますが、超音波検査ではわからない早期の乳がんも見つけることができます。一方で、画像の性質上乳腺が発達している若い人や、閉経後でも乳腺の量が多い人は乳がんが見つかりにくいことがあります。最近では、従来のこういった弱点を補うことのできる3Dマンモグラフィを導入する病院も増えてきています。当院でも導入していますが、以前は見えにくかったしこりがはっきりと写し出されます。

編集部編集部

では、超音波検査とはどんな検査ですか?

吉田 崇先生吉田先生

超音波エコーを使って、しこりの性状や大きさ、乳房内病変の有無、腋下リンパ節への転移などを調べます。マンモグラフィのように放射線による被曝の心配がありませんので、妊娠中でも検査が可能です。最近は、エラストグラフィという機能が加わっている超音波検査装置が出てきており、精度が向上しています。

編集部編集部

先ほどの「疑わしい所見があった場合」の方法も教えてください。

吉田 崇先生吉田先生

はい。マンモグラフィや超音波検査などで疑わしい所見があった場合には、追加検査として画像検査ではなく実際の組織を採取して検査します。一般的には「細胞診」と「針生検」という検査が行われます。

画像で乳がんを疑う所見が! 追加検査について医師が解説!

画像で乳がんを疑う所見が! 追加検査について医師が解説!

編集部編集部

「細胞診」について教えてください。

吉田 崇先生吉田先生

細胞診」とは、病変が疑われる部分に細い針を刺して細胞を取り、確認する検査です。体への負担が比較的少ない検査で、主に良性疾患を疑うときに行います。また、乳頭からの分泌液を取って調べるときもあります。

編集部編集部

では、針生検はどんな検査ですか?

吉田 崇先生吉田先生

針生検」は組織検査とも呼ばれ、主に乳がんが疑われる時などに病理診断を確定するための検査です。注射針より太い針(約2mm)を使用して病変の組織を取ります。先ほどの細胞診に比べて確実な診断ができ、乳がんであった場合は組織の種類や性質なども調べることができる検査です。また、最近は吸引式針生検という方法で組織検査を行うこともあります。針は太くなりますが、採取できる組織量が増えるのがメリットです。

編集部編集部

では、針生検で乳がんと診断されるのですね。

吉田 崇先生吉田先生

そうですね。針を刺すので痛みを伴いますが、顕微鏡でがん細胞の有無を確認して診断が確定するので、治療に進むためにも必要な検査になります。痛みについては、局所麻酔を使うことができます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

吉田 崇先生吉田先生

しこりなどの自覚症状があって受診した方より、検診結果から受診された方のほうが早期乳がんの割合が高いことが分かっています。厚生労働省の「令和2年度地域保健・健康増進事業報告の概況」では、精密検査を受けた方の約4.7%の方からがんが発見されました。つまり、95%以上はがんではなかったということになり、要精密検査になったとしても悲観的になる必要はありません。しかし、楽観的になりすぎるのも良くないので、要精密検査と判定された場合は、その理由を知るためにも必ず精密検査を受けましょう。

編集部まとめ

今回は、乳がん検診で「要精密検査」とされた場合の追加検査などについて解説していただきました。精密検査を受けた方の中でも、がんが見つかったのは約4.7%という結果が出ているそうです。決して高い割合ではありませんが、楽観的になったり悲観的になったりして受診を先延ばしにしていると発見が遅れてしまうリスクもあります。検診で「要精密検査」と言われたら、乳がん専門医のいる医療機関できちんと精密検査を受けましょう。

医院情報

高崎乳腺外科クリニック

高崎乳腺外科クリニック
所在地 〒370-0015 群馬県高崎市島野町1416
アクセス JR両毛線井野駅 車10分
診療科目 乳腺外科、内分泌外科

この記事の監修医師