【医師解説】乳がん検診で「要精密検査」といわれた…どんな検査をするの?
乳がん検診で「要精密検査」と指摘されたら誰でもドキッとするもの。一体、乳がん検診後の精密検査ではどのようなことを行うのでしょうか? 検査の流れや具体的な検査方法、注意点などを柏の葉ブレストクリニックの森島先生にお聞きしました。
監修医師:
森島 勇(柏の葉ブレストクリニック)
目次 -INDEX-
乳がん検診の検査方法とは? マンモグラフィや超音波検査で何が分かるの?
編集部
乳がん検診にはいろいろな検査方法がありますが、それぞれどのようなことがわかるのですか?
森島先生
代表的な検査方法としては、マンモグラフィと超音波検査があります。マンモグラフィは乳房を上下・左右方向に挟んで撮影するレントゲン検査で、触診では見つからない小さな腫瘤や石灰化などを発見することができます。
編集部
超音波検査はどうですか?
森島先生
超音波検査では乳房の表面から超音波の機械をあて、その跳ね返りを利用して内部の様子を観察します。これにより、乳房内部の腫瘤の有無を見つけ、大きさや性状などを把握できます。またその腫瘤が良性なのか悪性なのか、ある程度判別することができます。
編集部
どちらの検査を受ければ良いのですか?
森島先生
どちらも触診では見つからない病変を発見できますが、それぞれに特徴があります。マンモグラフィは石灰化、超音波検査は腫瘤の発見が得意です。単純な優劣はなく、お互いに補い合う関係にあります。マンモグラフィや超音波検査を受けることは、早期にがんを発見するのに有効です。市町村の対策型検診では、「40歳以上を対象に、問診とマンモグラフィを2年毎に行う」という国の指針にのっとって、マンモグラフィを基本に行われています。
編集部
それではマンモグラフィだけ受ければ良いのですか?
森島先生
いえ、必ずしもそういうわけではありません。特に若い人の場合には乳腺が発達しているためマンモグラフィでは乳腺が白く写るので、同じく白く映る腫瘤が隠れてしまうというデメリットがあります。一方、超音波検査は年齢には関係なく腫瘤の検出ができます。市町村の対策型検診の対象になっていない40歳未満の方は超音波検査が勧められます。40歳代では、特徴の異なるマンモグラフィと超音波検査を組み合わせることでがんを発見する確率が高まります。
編集部
両方を受けた方がいいのですね。
森島先生
はい、乳がんの罹患が多く、乳腺量も多い40歳代の方たちはマンモグラフィに超音波検査をプラスすることで乳がんの発見率が1.5倍になるというデータがあります。クリニックでの任意型の個人検診では、40歳未満では超音波を基本に、35歳を超えたらマンモグラフィを1回受けて石灰化の有無確認と乳腺量を把握し、40歳になったらマンモグラフィと超音波検査の両方を1年毎あるいは交互に受けることをお勧めしています。
乳がん検診結果が「要精密検査」になったらどうしたらいい? 専門医に聞く精密検査・再検査の内容と再受診のタイミング
編集部
検診で「要精密検査」となるのは、どのようなときですか?
森島先生
マンモグラフィでは、画像を読影した結果を5段階で評価します。カテゴリー1が「異常なし」、2が「良性」、3が「良性。しかし悪性を否定できない」、4が「がんの疑い」、5が「がん」というものです。カテゴリー3以上と判定されれば「要精密検査」の対象となります。
編集部
超音波検査ではどうですか?
森島先生
超音波検査でも所見に対してカテゴリー判定を行い、カテゴリー3以上は「要精密検査」の対象となります。
編集部
「要精密検査」となると、ドキッとします。
森島先生
ほとんどの方がそういう感覚になると思います。しかし、実際は乳がん検診の結果「要精密検査」となったとしても、良性であったり、経過観察になったりするケースが大半です。必ずしもがんとは限らないので、あまり不安になりすぎず、落ち着いて精密検査を受けるようにしましょう。
編集部
精密検査を受けるには、どこを受診すれば良いのですか?
森島先生
なるべく早めに、乳腺科、乳腺外科、乳腺外来など乳腺専門の診療科を標榜している医療機関を受診してください。その際、所見の書かれた結果用紙に加えて検診時の画像データを持参することが重要です。
編集部
検診の結果も持参するのですか?
森島先生
はい。結果用紙の内容から解決できることもありますが、マンモグラフィや超音波検査の画像があるとスムーズ、かつ正確に検査を進められます。もしそれらの画像データがなければ再度検査を行わなければならないこともありますから、「要精密検査」と指示された場合にはあわてず、必要な書類やデータを準備してから医療機関を受診してほしいと思います。
編集部
精密検査は保険が適用になるのですか?
森島先生
はい、乳がん検診を受けたあとの精密検査は、保険診療になります。費用は行う検査によって異なりますが、1~3割の自己負担で受けられます。
乳がん検診の再検査・精密検査で乳がんが見つかる確率は? 検査で石灰化・しこりなどどんなことが分かる?
編集部
精密検査ではどのようなことを行うのですか?
森島先生
必要に応じて、再度マンモグラフィや超音波検査を行うほか、より詳しく調べるために、細胞診や針生検(組織診)を行います。細胞診と針生検(細胞診)を行うことで、「良性か悪性か?」「悪性だとしたら、どのような性質のがんなのか?」ということがわかります。
編集部
それぞれの検査について教えてください。
森島先生
細胞診とは、しこりから吸引した細胞や乳頭からの分泌物を顕微鏡で観察する検査のことです。麻酔を使わず行うことができます。一方、針生検(組織診)は細胞診よりも太い針を使用して、しこりの一部の組織を採取し、顕微鏡で観察する検査です。局所麻酔を使い、針が太いため内出血のリスクがあり、細胞診に比べて体の負担が大きくなります。組織での診断が確定診断となります。
編集部
それらによってがんが見つかる可能性はどれくらいですか?
森島先生
一般に1000人の検診受診者がいた場合、精密検査が必要になるのは50~60人とされており、そのなかから実際にがんが見つかるのは3人程度と言われています。つまり、実際にがんであるのは「要精密検査」となった人のうち、約20人に1人という計算です。「要精密検査になったからといって、必ずしも乳がんであるわけではない」ということを、きちんと理解してほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
森島先生
「要精密検査」という指示には、「良性と考えられるけれどもがんが否定できないので追加の確認が必要です」という場合もありますし、「がんが疑わしいので詳しい検査が必要です」「ほぼがんに間違いないのできちんと話を進めてください」など、幅広い意味合いが含まれます。「要精密検査」になったからといって、焦りやショックを受ける必要はありません。精密検査を受けた結果、異常がなかったら安心することができますし、仮にがんであったとしても早期に発見して適切な治療を行えば治る確率が高いので、「要精密検査」となっても焦らず、冷静に専門医を受診してほしいと思います。
編集部まとめ
日本人女性がかかるがんのなかで、もっとも多いのは乳がんですが、がんの死亡数でいえば、乳がんは4位です。 早期発見としっかり治療を行えば命が助かる病気ですので、万が一精密検査でがんが見つかっても、「早めに治療を始められて幸運」と考え、落ち着いて医師の指示に従うようにしましょう。
医院情報
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診療科目 | 乳腺外科 |