1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 【闘病】まさか私が「乳がん」に? あの時検査を先延ばししなければ…

【闘病】まさか私が「乳がん」に? あの時検査を先延ばししなければ…(1/2ページ)

 更新日:2025/02/21
【闘病】まさか私が「乳がん」に? あの時検査を先延ばししなければ…

日本人女性が生涯で乳がんに罹患する確率は9人に1人と言われています(国立がん研究センターがん情報サービスがん登録・統計サイト「最新がん統計」2017年)。年々増えている現状ですが、果たして私たちは乳がんについての正しい知識を持ち合わせているでしょうか? そこで職場の健康診断で乳がんが発覚した加藤扶美さんに、闘病中の体験や感じた想いなどを聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年7月取材。

加藤扶美さん

体験者プロフィール
加藤 扶美

プロフィールをもっと見る

神奈川県横浜市在住、1975年生まれ。家族構成は、夫・娘・両親。横浜市立小学校教諭として勤続25年。2022年8月末に職場の健康診断で乳がんが発覚し、10月に左乳房全摘手術と同時再建手術(一期)を受ける。現在はホルモン療法を受けながら、大胸筋下に挿入したティッシュエキスパンダーを少しずつ膨らませて皮膚を伸展し、二期的再建手術の準備をしている。主治医と相談し、2023年度末まで休職する予定で診断書を提出したが、休職が認められず復職辞令が急に発令され、動揺しながらも7月より復職。療養者のための時短制度などがまったくないため、不調時や通院時は有給を使いながら、なんとかフル勤務をしている状態である。

寺田 満雄

記事監修医師
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

しこりの違和感も「来年の健康診断まで」待ってしまった

しこりの違和感も「来年の健康診断まで」待ってしまった

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

加藤扶美さん加藤さん

職場の健康診断のオプションで乳がん検診(マンモグラフィと超音波)を行いました。通常は1カ月ほどで結果が郵送されてくるのですが、検診後すぐに再検査の電話がかかってきました。そして再検査のときにその場で医師から、「5cm程のがんがある。確定診断ではないが、ほぼ間違いないであろう」と宣告されました。

編集部編集部

自覚症状などはあったのでしょうか?

加藤扶美さん加藤さん

実は、数年前から左乳房に違和感を覚えることがあり、当時通院していた大学病院(婦人科)の医師に伝えて乳がん検査をしてもらっていました。定期的に検査をしながら様子を見ようと言われていたのですが、その主治医から別の医師に変わってからは、前の主治医ほど親身になってもらえず、他院での検査を勧められ、そこで私もすぐに違う病院を受診するなど動けばよかったのですが、仕事(小学校教諭)の忙しさも相まって「来年の健康診断まで待つからもういい」と考えてしまって……。結局、翌年受けた健康診断でがんが見つかり、早く受診をしなかったことを後悔しました。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

加藤扶美さん加藤さん

最初にかかった大学病院の医師には、「とにかく焦るな、検査が全部終わるまで相当日数がかかるし、治療に入るまでは何カ月もかかる。それまでは普通通りの生活を送るように」と言われました。大学病院のシステム上やむを得ないのかもしれませんが、でも私は大きながんが体内にあるとわかっていながら平常心で仕事をしたり日常生活を送ったりすることが非常に困難でした。こうしている間にもがんが進行してしまったり転移してしまったりするのではないかと、毎日不安でたまりませんでした。

現主治医との出会いと「説明」から得られる安心感

現主治医との出会いと「説明」から得られる安心感

編集部編集部

とても平常心ではいられないですよね……。

加藤扶美さん加藤さん

はい。1カ月後、その医師の退職に伴い新しい病院を紹介されたのですが、転院先の医師(現在の主治医)は、初診から私の想いを時間をかけて聞いてくださり、その日のうちにできる検査を沢山実施してくれました。その上で、先に抗がん剤でがんを叩いてから手術する方法と、そのまま手術して術後薬物療法をする方法があることや、術法は部分切除と全摘出が選べるが、私の場合は部分摘出ではがんが残存する可能性があること、乳頭・乳輪を温存する方法もあるが、同じくがん残存の可能性があることなどを一つひとつ丁寧に説明してくださりました。

編集部編集部

細かく説明してもらえるのは安心につながりますね。

加藤扶美さん加藤さん

さらに乳房再建についても、再建することのメリットを明るく話してくださり、再建する場合は、形成外科医が診察に参画し一緒に手術するとのことでした。詳しく説明を聞き十分に納得した上で、術前療法なしの全摘出、同時再建を選択しました。10月1日初診、10月18日手術という驚異的なスピードで、とてもありがたかったです。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

加藤扶美さん加藤さん

検診で引っかかって再検査で大きながんがあると言われたときは、ありきたりな表現ですが、目の前が真っ暗になりました。全身が震えて、涙が止まりませんでした。「まさか自分ががんに? なんで? 私死ぬの? これからどうなるの?」と、様々な感情が押し寄せました。帰り道に泣きながら主人に電話した後、どうやって家まで帰ったのか覚えていません。本当にショックでした。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

加藤扶美さん加藤さん

転院前の大学病院では検査や治療を待っている期間は非常に不安で辛く、精神的に不安定になってしまい、家族に当たり散らしてしまうことも多くなりました。家で何をしていてもがんの進行や転移への恐怖が頭から離れず、楽しい家庭生活がまったく送れませんでした。仕事についても、本当は今すぐにでも仕事を休んで治療したいのに、実際は確定診断がおりて治療方針が決まるまでは勤務し続けなくてはならないという現実に対して理不尽さを感じてしまい、具合の悪さも相まって仕事に対する意欲ややりがいを見失いつつありました。

編集部編集部

そのような苦労があったのですね。

加藤扶美さん加藤さん

ですが、転院後すぐに手術を受けてからは、胸の痛みや薬の副作用はあるものの、「悪い部分を切除してもらった」という安心感が大きく、少しずつ前向きに生きられるようになりました。再発、転移を少しでも防止して健康的な毎日を送ろうと、家でのリハビリや運動は今でもほぼ毎日続けています。また、発症前は甘めの炭酸飲料が大好きでよく飲んでいたのですが、今は体に優しいお茶を飲んだり、炭酸飲料も無糖のものを選んで飲んだりするようになりました。

編集部編集部

乳がんに向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

加藤扶美さん加藤さん

やはり家族(夫・娘・同居の両親・愛犬)の存在が大きいですね。娘(現在大学生、当時高校生)は役者の卵なのですが、私ががん告知を受けた日にちょうど初舞台の出演が決まったんです。舞台に立つ娘をこの目で見たいという一心で治療やリハビリを頑張りました。退院後、娘の晴れ舞台を観ることができたときは心から嬉しく感動しました。諦めなくてよかったと思いましたし、少しずつ回復している自分を感じて大きな自信につながりました。夫は同業者ということもあり、職場との話し合いに同席してくれたり、療養と仕事の兼ね合いについてアドバイスをくれたりと、いざというときに頼りになります。両親は、今回私ががんに罹患してからずっと心配し、私の体調に一喜一憂しています。そんな家族や愛犬のリボンのためにも、強く明るく生きていきたいと思っています。

意図せぬ復職を迫られ…

この記事の監修医師

S