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【闘病】まさか私が「乳がん」に? あの時検査を先延ばししなければ…(2/2ページ)

 更新日:2025/11/21
【闘病】まさか私が「乳がん」に? あの時検査を先延ばししなければ…

意図せぬ復職を迫られ…

意図せぬ復職を迫られ…

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

加藤扶美さん加藤さん

自分の体を第一に考えて、働き方を工夫しよう。そして、体に異変を感じたら忙しくてもすぐに受診しよう」と言いたいです。そして、「がんにかかってしまっても、怖れなくて大丈夫。素晴らしいお医者さんや医療スタッフの皆さんに巡り合って、自分らしく生き続けることができるよ」と自分を安心させたいです。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

加藤扶美さん加藤さん

手術後からホルモン療法を開始しました。具体的には毎朝のタモキシフェン服用と3カ月に1回のゾラデックス(一般名:ゴセレリン酢酸塩)注射をしています。ゾラデックス注射はお腹に打つのですが、とても痛く、打ってから数日間はお腹に大きな痣ができて、それも痛みます。タモキシフェンは、車酔いをしたようなめまいや吐き気、肩や首の張りと痛み、イライラなどの副作用が酷かったです。それでも調子が悪い日は横になって何とか耐えていました。

編集部編集部

手術後も闘いは続いていたのですね。

加藤扶美さん加藤さん

はい。くわえて今年度いっぱい休職する意向を教育委員会に伝え診断書も提出したにも関わらず、急に復職の辞令が出てしまいました。私と一度も面会することもなく、審議会の中で復職が決まったそうで、復職辞令日の10日前に突然その通達を聞いたときには非常に動揺し、ますます調子を崩してしまいました。色々な機関に相談したのですが、結局復職するしか方法がなく、非常に具合の悪い中バタバタと復職しました。本当はちゃんと元気になってから、児童たちや保護者の皆さんとお会いしたかったのですが……。こんな状態での復帰で職場の皆さんに迷惑をかけてしまうことも心苦しかったです。

編集部編集部

復職後の体調はいかがでしたか?

加藤扶美さん加藤さん

復職すると、タモキシフェンの副作用が耐えられないほど酷くなり、ついに主治医から服薬中止を提案されました。その提案を聞いたときはとても悲しく、主治医に相談しました。すると、「日本ではまだ承認されていないから保険適用外になるけれど」という前提のもと、アナストロゾール服用の提案をしてくださいました。副作用が私にとってはタモキシフェンよりも少ないかもしれないことや、再発・転移に対しても効果が認められていることなどを聞いて、アナストロゾールに変更することを決心しました。アナストロゾールを服用し始めてからまだ2日間しか経っていないので副作用については未知数ですが、だるさやドキドキする感覚はあるものの、車酔いのような気持ち悪さは減って少し楽になりました。10月の再建手術のときまで、なんとか勤務を続けられるように頑張っているところです(取材時)。

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

加藤扶美さん加藤さん

乳がんは、タイプによって治療法や進行スピードも違います。少しでも異変を感じたら受診することが早期発見につながります。私は早期ではなかったので、そこはとても悔やんでいます。それから、乳がんに対して偏見や誤った認識をもっている人が少なからずいるので、正しい知識をもってほしいです。私自身、「乳がんなんてたいしたことない」「再建手術は美容整形なんだから、有給を使って勝手にどうぞ」などという意味合いのことを復職時に言われて深く傷つきました。乳がんに伴う再建手術ももちろん治療の一環だと思います。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

加藤扶美さん加藤さん

主治医の先生や再建担当の先生がとても優しく、一人ひとりの想いや願いを聞いた上で一緒にがんへの向き合い方を考えてくださることで、ずいぶん救われ、絶望の淵から這い上がることができました。主治医の先生は、手術前日の回診のときに私が質問すると、ポケットから小さなノートを取り出して、丁寧に説明してくださいました。そこには、私の情報が手書きでびっしりと書かれていました。それがとても嬉しくて、不安なく翌日の手術に臨むことができました。再建担当の先生は、私が何を重視しているかなど、私の想いや願い、不安などをじっくりと確認してくださり、それぞれの方法のメリット、デメリットを丁寧に教えてくださいました。一方で、「普通はこうだから」「みんなこうしてるから」などと言って、個を見てくださらない医療従事者もいらっしゃったように思います。統計上の数字ではなく、一人ひとりを見てほしい、一人ひとりの心と体に寄り添ってほしい。それが望みです。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

加藤扶美さん加藤さん

私は、乳がん告知を受けて途方にくれている中、ここで多くの方々の闘病記を読むことで元気と勇気をもらいました。がん告知を受けて平気でいられる人は多くないと思います。でも、あなたの心と体に寄り添ってくれるお医者さんが必ず見つかるはずです。希望を持って、そして、自分自身の心と体を大切にしながら毎日を楽しく生きていきましょう。また、がん患者のサポート機関の一つとして、「がん支援相談センター」があります。全国各地の病院内にあり、その病院にかかっていなくても相談を受け付けてくれます。私は、その「がん支援相談センター」のがん専門看護師さんや医療ソーシャルワーカーさんにずいぶん助けられました。私の治療はまだまだ続きますが、闘病中のみなさんと一緒に乗り越えていけると嬉しいです。

編集部まとめ

加藤さんは、闘病を通して、世間の乳がんに対する偏見や誤った認識を持つ人が少なくないことを知ったそうです。そんな中でも自分らしく生きるためには、信頼できる主治医に出会い、しっかりコミュニケーションを取って納得した上で治療方法を選択していくことが大切だと話してくれました。当サイトを見て元気と勇気をもらったと言ってくださった加藤さんの闘病体験が、今、不安や悲しみを感じている方の希望になってくれることを切に願います。

この記事の監修医師