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【乳がん検診】マンモグラフィと超音波(乳腺エコー)検査のどちらを受診すべき?

 更新日:2024/02/02

今では日本人女性の9人に1人が乳がんになる時代と言われています。そのため、乳がんの早期発見のために定期的な検診が大切と言われ、代表的な検診に「マンモグラフィ検査」と「超音波(乳腺エコー)検査」があります。では、いったいどちらを受ければいいのでしょうか? 今回は、吉田 崇先生(高崎乳腺外科クリニック 院長)にお聞きしました。

吉田 崇

監修医師
吉田 崇(高崎乳腺外科クリニック)

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1992年に山梨医科大学(現 山梨大学医学部)卒業後、埼玉県立がんセンター 乳腺外科、群馬大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科、SUBARU健康保険組合 太田記念病院 乳腺外科などで経験を積み、2020年、群馬県高崎市に「高崎乳腺外科クリニック」を開院。日本乳癌学会 乳腺専門医・指導医、日本外科学会 外科専門医・指導医、検診マンモグラフィ読影認定医(A判定)、乳がん検診超音波検査実施・判定医。

乳がんはどんな病気?初期の症状は?

乳がんはどんな病気?初期の症状は?

編集部編集部

「乳がん」とはどんな病気ですか?

吉田 崇先生吉田先生

まず、乳房の中には乳汁をつくり分泌するための乳腺組織があります。乳腺組織は、乳汁を作る小葉作られた乳汁を乳頭まで運ぶ乳管からできています。乳がんは、この乳腺(乳管や小葉)の細胞ががん化し、異常に増殖することによってできる悪性腫瘍です。

編集部編集部

乳がんにも分類があるのですか?

吉田 崇先生吉田先生

はい。乳がんの90%は乳管の細胞からできる「乳管がん」で、小葉から発生する「小葉がん」の割合は5~10%になります。また、がん細胞の広がりによっても分類されます。

編集部編集部

がん細胞の広がりでは、具体的にどのような分類になりますか?

吉田 崇先生吉田先生

がん細胞が乳管の中に留まっていて、乳管外に出ていないものを「非浸潤がん」と呼びます。一方、がんが増殖して乳管を破って外に広がったものは「浸潤がん」と呼びます。「浸潤がん」は、血管やリンパ管にはいって全身に転移する可能性があります。

編集部編集部

初期の乳がんにはどのような症状がありますか?

吉田 崇先生吉田先生

初期の段階だと、症状はほとんどありません。進行していくと、徐々にしこりなどの症状が現れ、人によっては血性分泌物やエクボのような凹凸、皮膚のただれなどがみられることもあります。しかし、気がつかないまま何ヶ月も経ってしまっている方も多いので、そうならないためにも定期的な乳がん検診がとても大事です。

乳がん検診にはどのような方法があるの? それぞれのメリット・デメリットを教えて!

乳がん検診にはどのような方法があるの? それぞれのメリット・デメリットを教えて!

編集部編集部

乳がんの検診には、どのような方法がありますか?

吉田 崇先生吉田先生

まずマンモグラフィ超音波(乳腺エコー)検査を行い、必要に応じて細胞や組織を取って調べる検査を行います。マンモグラフィと超音波検査にはそれぞれ長所、短所があり、両方受けることによって、乳がんの発見率も上がります。

編集部編集部

マンモグラフィはどんな検査ですか?

吉田 崇先生吉田先生

マンモグラフィは、乳房専用のレントゲン検査です。乳房を圧迫される一時的な痛みがありますが、超音波検査ではわからない早期の乳がん(石灰化病変)を見つけることができます。一方で、画像の性質上、乳腺の発達している若い人や閉経後でも乳腺の量が多い人(高濃度乳房といいます)では、乳がんがあっても見つかりにくいことがあります。最近では、従来のマンモグラフィ(2Dといいます)の弱点を補う3Dマンモグラフィを導入する病院も増えてきています。当院でも導入していますが、2Dのマンモグラフィでは見えにくかったしこりをはっきりと確認することができます。

編集部編集部

では、超音波(乳腺エコー)検査とはどんな検査ですか?

吉田 崇先生吉田先生

超音波(乳腺エコー)検査は、超音波エコーで乳房内の病変の有無・しこりの性状や大きさ・わきの下のリンパ節への転移などを調べます。ゼリーを塗り、プローブと呼ばれる道具を乳房に当てて観察します。マンモグラフィのように放射線による被曝の心配がありませんので、妊娠中でも検査が可能です。特に、エラストグラフィという機能が加わっている超音波検査装置を使用することで、乳がん検診の精度(良性・悪性の鑑別)が向上します。

乳がんの早期発見のためにはどうしたら良い? 検診方法を医師が解説!

乳がんの早期発見のためにはどうしたら良い? 検診方法を医師が解説!

編集部編集部

乳がんの早期発見のためには、どちらを受けたら良いのでしょうか?

吉田 崇先生吉田先生

やはり理想は、どちらも受けていただくのが良いです。40歳代でマンモグラフィと超音波検査の両方を受けると、マンモグラフィ単独と比べて乳がんの発見率が0.33%から0.5%に向上したことが臨床試験で明らかになっています。特に高濃度乳房(乳房の中の乳腺が多く、マンモグラフィで乳房が白っぽく写る乳房。がん組織も白く写るため同化してしまうリスクがある)の方は、超音波検査も受けたほうが良いでしょう。ただし、自治体の乳がん検診では超音波検査がまだ導入されていないことが多いので、超音波検査は自費となります。

編集部編集部

検査の頻度も教えてください。

吉田 崇先生吉田先生

基本的に40歳以上は自治体の乳がん検診の対象となっていますが、40歳未満の方向けの検診方法はありません。ただし、血縁者に乳がんや卵巣がんの罹患者が複数いる場合などで遺伝性乳がんが心配な場合には、自費にはなりますが乳がん専門医のいる医療機関で相談することもできます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

吉田 崇先生吉田先生

「マンモグラフィは痛い」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、最近は装置の改善により痛みが少なくなってきています。具体的には、いきなり強く挟むことはなく、痛くないか確認しながら徐々に圧迫していきますのでご安心いただければと思います。また、マンモグラフィによる被爆は、一般の人が1年間に受ける自然放射線量の50分の1程度なので、身体への影響はほとんどありません。女性の9人に1人は乳がんを発症している時代ですので、40歳以上の方は定期的に検診を受けることをおすすめします。

編集部まとめ

乳がん検診について、「マンモグラフィ」と「超音波検査」の違いなどを解説していただきました。以前まで「マンモグラフィは痛い」というイメージがありましたが、最近は装置の進歩や圧迫の仕方の工夫などにより、痛みが減っているとのことでした。乳がんの早期発見・早期治療のためにも、40歳以上の方は定期的に検診を受けるようにしましょう。

医院情報

高崎乳腺外科クリニック

高崎乳腺外科クリニック
所在地 〒370-0015 群馬県高崎市島野町1416
アクセス JR両毛線井野駅 車10分
診療科目 乳腺外科、内分泌外科

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