【闘病】「今でも夢と思うことがある」3年ぶりの検診で“乳がん”の告知。自覚症状ゼロで突然始まった闘病生活
健康には自信があり、たまたま気になって受けた3年ぶりの乳がん検診および大学病院での検査で「乳がん」と診断されたYOさん。乳がん特有の初期症状であるしこりなどが全くなかったことから、「がんになると思っていなかった」と言います。突然始まった闘病生活をどう過ごされたのか、YOさんに詳しく聞いてみました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年11月取材。
体験者プロフィール:
YOさん(仮称)
1980年代生まれの女性。家族と4人で暮らしている。3年ぶりに受けた集団検診で要精密検査を指摘され、大学病院で「乳がん」と診断される。2023年3月に右乳房の部分切除術、5月に放射線治療を実施し、現在は抗エストロゲン薬で経過を観察している。
記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
健康に自信があったのに…3年ぶりの乳がん検診で予想外の結果に
編集部
最初に、YOさんが乳がんと診断されるまでの経緯を教えてください。
YOさん
ある時、たまたま市の広報に書かれていた「集団検診」の文字が気になって乳がん検診を受けました。これまで健康に自信があったということもあり、本当に軽い気持ちで三年ぶりの受診だったのですが、結果がまさかの「要精密検査」でとても衝撃を受けたことを覚えています。
編集部
では、その後に病院で精密検査を受けたのですね。
YOさん
はい、最初は近くの町の病院を受診したところ大学病院を紹介され、大学病院で「ステージIの浸潤性乳がん」と診断されました。
編集部
検診を受ける前までに、なにか自覚症状などはありましたか?
YOさん
私の場合、自覚症状が全くありませんでした。会社員として普通に働いていたら、ある日突然乳がんと宣告されたという感じです。
編集部
では、病院で診断されてから治療までの経緯を教えてください。
YOさん
乳がんと発覚したのが2022年12月頃で、手術を行ったのは3か月後の2023年3月です。現在も抗エストロゲン薬のタモキシフェンを服用しており、経過観察中です。
編集部
手術はどのような内容でしたか?
YOさん
私の乳がんは「ステージIの浸潤性乳がん」でしたので、右乳房の部分切除術になりました。5cm程度の縫合跡はあるものの、外から目立つほどではないので助かっています。
予定されていた抗がん剤は使用せずに経過観察
編集部
YOさんの治療計画や医師からの説明についても教えてください。
YOさん
医師からは「手術、抗がん剤治療、放射線治療、ホルモン治療を行う」という治療計画を説明してもらいました。そして、乳房部分切除手術のあと、多臓器・リンパ節転移などはみられなかったため、ひとまず抗がん剤治療は行わずに様子見となりました。放射線治療は予定通り2023年5月から20回実施して、現在はホルモン療法のタモキシフェンを服用しています。
編集部
手術後に治療を開始してから、生活や仕事で変化したことはありますか?
YOさん
幸いなことに、変化は全くありませんでした。自覚症状も全くなかったので、今でも乳がんは夢だったんじゃないかと思うくらいです。でも、胸にある手術の跡を見ると、やっぱり乳がんだったんだなと実感します。
編集部
手術や放射線治療中、お仕事はどうしましたか?
YOさん
10日ほど有休を使って、手術のための事前の検査から手術、術後の通院を行いました。放射線治療も通院で可能だったので、20日間は毎日午後の半休を使って通院しました。ですので、仕事を休職せずに治療と両立できていました。そして経過観察になって大学病院から町の病院に転院して土曜日に診察してもらえるようになり、会社を休むことがなくなりました。月に一度薬をもらいに行くのが地味に面倒で、これがあと10年以上続くと思うと正直なところ気が重くなります。
編集部
そうなのですね。職場の方からも協力は心強いですね。
YOさん
私の職場は私以外全員が男性ですが、みなさん理解のある方ばかりで治療中も困ることはありませんでした。手術後に仕事復帰したときも、仕事内容に変化はなくこれまで通りに仕事ができています。
担当医師のおかげで気負わずに治療と向き合えた
編集部
治療の前後で現在の生活に変化はありますか?
YOさん
これも幸いなことに、大きな変化はありません。乳がん発覚前と体調も変わりがなく、ホルモン治療で副作用があるかと思っていましたが、それもありませんでした。私の場合、抗がん剤治療をしなかったことも関係しているのかもしれません。ただ、これまでよく献血に行っていたのですが、今ではできなくなってしまったので悔しいです。
編集部
初めて乳がんの告知を聞いたときはショックを受けたと思いますが、心の支えになったことはありますか?
YOさん
私にとっては担当の先生と話すことが心の支えでした。具体的に何かをしてもらったというわけではないのですが、先生の話し方や雰囲気に温かさを感じ、治療へ前向きになることができました。先生との定期的な会話は、治療へ向き合うモチベーションのためにも大切だなと感じます。今ではその先生と会えなくなり、ちょっと寂しいくらいです。最後の診察では、命の恩人である先生と写真を撮ってもらえたのでたまに見返しています。
編集部
YOさんご自身の体験を通して、特に大事だと思ったことは何ですか?
YOさん
なによりも一番は、定期的に乳がん検診へ行くべきということです。乳がん発症率は女性のほうが高いですが、男性も発症することはあります。男女問わず乳がんになる可能性はあるので、日頃から自分の体をチェックして、いつもと違うところがあったら迷わず病院を受診してほしいと思います。
編集部
最後にメッセージをお願いします。
YOさん
正直、私の感覚では乳がんの発覚から今まであっという間に過ぎたと感じました。今でも自分が乳がんだったと信じられませんが、胸の傷を見る度に「本当に乳がんだったんだ」と思います。病気になると思いもよらない変化が起こるので、誰もが自分の体と向き合って過ごしてほしいと思います。
編集部まとめ
3年ぶりの乳がん検診で「乳がん」と診断され、手術と放射線治療、そして今もホルモン治療を続けられているYOさん。がんはいつ、誰が発症してもおかしくはありません。そして、YOさんのようにたまたま検診で早期に発見できたという方はたくさんいらっしゃいます。しこりの自覚が乳がんの典型的な症状の一つとして比較的広く知られるようになりましたが、良いことである一方で「無症状」の乳がんも同じように“典型的”であることも多くの人に知ってもらいたいです。そのために乳がん検診があります。健康だからといって怠ることなく、定期的な健康診断や特定健診、人間ドックを受けるようにしましょう。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。