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~実録・闘病体験記~ ステージIVの乳がんから生還した元キャビンアテンダント

 更新日:2023/03/27
~実録・闘病体験記~ ステージIVの乳がんから生還した元キャビンアテンダント

乳がん検診では異常なしの結果から5ヶ月後、不妊治療中に乳がんの告知を受けた闘病者の井出さんは、元客室乗務員という経歴の持ち主。そんな彼女は蓋を開ければステージIVに進行していたがんとどのように向き合い、どのような治療、現在どのような生活をしているのでしょうか? 闘病を続けながらイキイキと過ごす秘訣などとともに話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年8月取材。

井出 久日子

体験者プロフィール
井出 久日子

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東京都江東区在住、1976年生まれ。夫、ビーグル犬2匹とともに暮らす。診断時の職業は旅行会社の会社員。不妊治療中に乳がんの告知を受け治療を開始。抗がん剤治療をおこなった後、右乳房部分切除術を受ける。現在は再発予防のために3週間ごとに分子標的薬の治療を継続している。現在はゴルフができるくらいまで体力が回復し、週に1度コースを回っているとのこと。30代後半は治療に専念した分、これからの人生はおしゃれをして女性としての人生を精一杯エンジョイしたいという目標をもっている。

楯 直晃

記事監修医師
楯 直晃(宮本内科小児科医院 副院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

乳がん告知から1年でセカンドオピニオンを受けました

乳がん告知から1年でセカンドオピニオンを受けました

編集部編集部

乳がんを発症したということですが、検診は受けていたのですか?

井出 久日子井出さん

30歳を過ぎてから、乳がん検診は定期的に受けていました。発覚の5ヶ月前にも検診を受けており、そのときは異常なしの結果でした。

編集部編集部

その後、どのように乳がんが発覚したのか教えてください。

井出 久日子井出さん

ある朝、寝起きにベッドでふと自分の胸を触り、異変に気づきました。当時不妊治療をしていて、2日後に体外受精で受精卵を移植する予定という段階で、乳がんの告知を受けました。当初はステージIIbという診断でしたね。その後、胸椎や頭蓋骨への転移がわかり、ステージIVと再度告知されました。

編集部編集部

不妊治療は中止されたのですか?

井出 久日子井出さん

元気になって出産できる可能性もあったので、告知を受けた後、抗がん剤治療を開始する前に受精卵の凍結をしました。

編集部編集部

乳がんはどのような治療をおこなったのですか?

井出 久日子井出さん

まずは抗がん剤での治療を行いました。人より長い期間、抗がん剤治療を続けたところ、右胸とリンパにあったがんが消えました。しかし、その後胸椎、頭蓋骨への転移が判明し、胸の全摘か温存かの手術方法について検討する際に、主治医の説明が二転三転し、コミュニケーションも円滑に進まなかったため、告知から1年経過した段階でセカンドオピニオンを受けました。

編集部編集部

セカンドオピニオンはどのような内容だったのですか?

井出 久日子井出さん

今の主治医となる医師は、「骨に転移しているということは、全身に転移しているということ。胸を全て切除するよりは、がんがあった部分を早急に取って、放射線をその部分に当てた方がいい」ということでした。結局、温存手術を選び、放射線治療をすることになりました。

おしゃれが抗がん剤治療中の支えでした

おしゃれが抗がん剤治療中の支えでした

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

井出 久日子井出さん

当時不妊治療中だったので、がんになったショックより、「子どもが産めなくなる、諦めなくてはいけない」という事実の方がショックでした。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

井出 久日子井出さん

手術前の1年間は、抗がん剤治療だったので食生活を改善しました。好きなアルコールも週に1回飲む程度となり、おかげで18kg痩せました。

編集部編集部

治療中の心の支えはなんでしたか?

井出 久日子井出さん

メイクとおしゃれですね。脱毛があったので、その日のスタイルに合うウィッグを研究したり、気分によって映えるメイクをいろいろ試していったりするうちに、自分に自信が持てて、ワクワクした嬉しい気分になることに気付きました。病気を知った当初からは比較にならないほど、現在の方がイキイキとした気持ちで過ごしています。

編集部編集部

医療についてもかなり知見が増えたそうで。

井出 久日子井出さん

はい。私の体験記を読んでいる方には、ネット上にある信憑性のはっきりしないがん治療情報を安易に拡散したり、情報を鵜呑みにしたりしないでもらいたいですね。標準治療を受けることを否定するようなものには、警戒心をもっていただきたいです。正しい医療知識をもつ。これが一番大切だと思います。また検診も重要です。

編集部編集部

なかなか素人が勉強するのはハードルが高いですが、確かに重要ですね。

井出 久日子井出さん

いろんな治療の情報が溢れていると思いますが、専門家が世界中の研究成果を集めて有効性と安全性を確認したものが「標準治療」です。それは現時点で効果が得られやすい治療である、ということを念頭に置いてほしいと思います。

編集部編集部

検診の重要性も訴えられているそうですね。

井出 久日子井出さん

はい。乳がんは、早期に発見できれば治る可能性も高くなります。ぜひ専門のクリニックで年に1回は検診を受けるのと、毎日ベッドで寝ている時などに自己触診も行ったほうがいいと思います。症状がないと検診に行かないという方もいると思いますが、症状のない人が受けるのが検診だということを伝えていきたいですね。

分子標的薬治療のおかげで元気になった現在

分子標的薬治療のおかげで元気になった現在

編集部編集部

現在の体調や生活の様子などについて教えてください。

井出 久日子井出さん

現在ホルモン療法と分子標的治療をしており、体調は安定しています。週に1回のペースで分子標的治療を受けていて、分子標的薬の投与は2021年8月現在で、通算100回になりました。その甲斐あって、6年前歩くのもやっとだったときと比較すると、信じられないくらい元気になり、今では週1ペースでゴルフを楽しんでいます。また美容誌やテレビなどメディアに取り上げていただく機会などもあり、交友関係も広がりました。

編集部編集部

乳がんを意識していない人に一言お願いします。

井出 久日子井出さん

あなたの大切な家族やパートナーががんになった場合、あなたは守れる自信がありますか? その答えがYESでない場合は、がんとがんの治療について少しでも正しい知識を得ることをお勧めします。セミナーやピンクリボンのボランティアに積極的に参加することなどでも深められると思います。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

井出 久日子井出さん

医師は忙しそうで、こちらも遠慮してしまい、なかなか納得いくまで話を聞くことができませんでした。看護師さんは、医師より気軽に相談しやすいのですが、聞いたことに対して、具体的なアドバイスをいただけると嬉しいです。病院の相談窓口や医師、看護師以外に相談できる機能をもっと充実させてほしいと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

井出 久日子井出さん

歩くのも、箸を持つのも、ままならなかった私ですが、現在ではゴルフもできるようになりました。がんは医療の進歩によって助かる病気になったので、私のように長く治療を続け、がんと共存しながら仕事をしている方も多くいます。身近な人にがんを患っている人がいたら、思い切って今困っていることはないか尋ねてみてください。あなたのその心がけが患者にとって闘病の励みになります。

編集部まとめ

井出さんからは、「がんは早期発見も大切だけど、がんだからといって人生が終わったわけではない。そこからどう生きるかが重要。そして私は病気ではあるけれど病人ではない」と別途力強いメッセージをもらいました。がんで闘病中の方たちに、セカンドオピニオン含めご自身が納得する治療を選択し、積極的に生き生きとした日常をおくるヒントにして欲しいと感じました。

この記事の監修医師