花粉症を治す「舌下免疫療法」 効果や治療期間・費用についても医師が解説
毎年花粉症に悩まされている人のなかには、舌下免疫療法に興味を持っている人も多いと思います。しかし「いつから始めればいいのか?」「効果は?」など疑問もあるのでは? 花粉症を治す舌下免疫療法について調布駅前クリニック耳鼻咽喉科の髙原先生に詳しく教えてもらいました。
監修医師:
髙原 恵理子(調布駅前クリニック耳鼻咽喉科)
目次 -INDEX-
花粉症治療で舌の下に薬を投与する舌下免疫療法とは? スギの花粉症やダニアレルギー性鼻炎の患者に効くって本当?
編集部
舌下免疫療法とはなんですか?
髙原先生
アレルギーを引き起こす原因物質を少しずつ体内に吸収させることで、アレルギー反応を改善する治療法です。アレルゲン免疫療法(減感作療法)の一種とされています。
編集部
どのような効果を期待できるのですか?
髙原先生
日本では現在、スギとダニに対して治療が行われています。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙目、目のかゆみなど、花粉症やダニアレルギー性鼻炎による症状の改善が期待できます。また現在治療薬を服用しているのであれば、その薬を減らしたり、あるいは薬をやめたりすることも期待できます。
編集部
どうやってアレルギーの原因物質を体内に取り込むのですか?
髙原先生
治療薬を舌の下に置き、一定時間その状態を保持したあとに飲み込みます。これを1日1回、継続して行っていただきます。
花粉症治療の舌下免疫療法で効果が出るまでに必要な期間は? 次の花粉シーズンに備えるにはいつから舌下免疫治療を開始すべき?
編集部
舌下免疫療法は長い期間、続けないと効果が期待できないと聞きました。
髙原先生
一般的には3年以上継続することが推奨されています。しかしそれまでまったく効果がないわけではなく、治療を開始してから3〜5か月程度でなんらかの効果を感じるという人も少なくありません。
編集部
完全に花粉症を治すことができるのですか?
髙原先生
日本で行われた研究によると、「一定期間、治療を継続することで約2割の人が花粉症を完治し、約6割の人が症状を改善できた。約2割の人が、変化が見られなかった」という結果が得られました。つまり、約8割の人が一定の効果を得られたということがわかります。ただし期待した治療効果を得るには、十分な期間、治療を継続することが必要です。
編集部
治療をやめたらまた元に戻ってしまうのですか?
髙原先生
十分な期間治療を継続しても、時間が経つにつれて効果が薄れ、再発してしまうこともあります。しかし、その場合も医師の指導のもとで、治療を再開することができます。
編集部
次の花粉シーズンに間に合わせるには、いつから治療を開始したら良いのでしょうか?
髙原先生
基本的に、スギ花粉が飛散していない時期に治療を開始します。例年6~11月が治療開始時期とされています。治療効果は蓄積されていくため、もし次のシーズンに間に合うように治療を行いたい場合は、できるだけ早めに開始すると良いでしょう。
編集部
具体的にどうやって治療するのですか?
髙原先生
最初の1か月は副作用のリスクがあり、特に初回は気をつけた方が良いので医師の監視のもとで服用していただきます。一般に、初回から2週間かけて投与する薬の量を少しずつ増やしていき、副作用がなく落ち着いたら維持期に移行し、長期間継続して一定量を服用します。
編集部
通院の頻度はどれくらいですか?
髙原先生
医師によって異なりますが、初回のあとは2週間後にもう一度来院していただき、副作用がないか確認します。問題なければ、その後は月1回程度の来院で大丈夫です。
花粉症対策の舌下免疫療法に必要な治療費用は? 保険適用の有無や注意点を医師が解説 妊娠中や子どもでも受けられる?
編集部
花粉症に対する舌下免疫療法は保険が適用になるのですか?
髙原先生
保険が適用になります。治療費の目安は、1か月あたり2000〜3000円です(3割負担の場合)。
編集部
舌下免疫療法のリスクはありますか?
髙原先生
・口の中の浮腫、かゆみ、不快感
・唇の腫れ、舌の腫れ
・喉の刺激、不快感
また、非常に稀ですが蕁麻疹、喘息様症状、アナフィラキシーショックが起きることもあります。この場合は早めにかかりつけ医にご相談ください。
編集部
妊娠中や子どもでも受けられるのですか? 治療を受けられない人はいますか?
髙原先生
・気管支喘息が重症の人
・重症の心臓・肺の疾患がある人
・治療開始時に妊娠している人
通常、治療の対象となるのは5歳以上です。なぜなら治療では一定時間、舌の下に薬をとどめておくことを求められるからです。その行為を問題なくできるようになるのが5歳くらいということで、一般には5歳以上を対象としています。
編集部
そのほか、治療を受けるのに注意が必要な人はいますか?
髙原先生
高血圧の治療でベータブロッカーを使用している場合には、ほかの薬に変更してもらえれば舌下免疫療法を行うことはできます。ベータブロッカーと舌下免疫療法の併用はできません。また、ほかの疾患でステロイド薬を常用している場合には、舌下免疫療法の効果があまり期待できないとされています。それからがん治療中の場合もあまり舌下免疫療法をお勧めしません。
編集部
「治療開始時に妊娠している人」はNGとのことですが、治療中に妊娠した場合はどうなるのですか?
髙原先生
舌下免疫療法を開始して一定の時間が経過し、すでに状態が安定してアナフィラキシーなどのリスクがない場合には、そのまま治療を継続することができます。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
髙原先生
ここ1~2年、スギ花粉の飛散量が多かったこともあり、最近「舌下免疫療法を始めたい」という方が増えています。しかし舌下免疫療法は年単位で時間がかかる治療であり、「中途半端な気持ちでは継続できない」ということを覚えておいてください。実際、途中で脱落してしまう方も多く、「本当に花粉症を治したい」「薬を飲んでも効果がないので、なんとかしたい」という強い意志がなければなかなか継続することはできません。特に最近では製薬会社の都合により、舌下免疫療法に使用する薬の出荷が制限されていることもあり、気軽な気持ちで始める人が多いと、本当に治療を必要とする人に薬が行き届かなくなる恐れもあります。舌下免疫療法に興味がある場合には、まず、本当にその治療を続ける意志があるのか改めて自分自身でご確認ください。そしてもし本当に治療を行いたい場合には、早めに耳鼻科へ相談されることをお勧めします。
編集部まとめ
花粉症を完治できる可能性がある舌下免疫療法。毎日治療を継続しなければならないという煩わしさはありますが、習慣化してしまえばそれほど苦労ではないかもしれません。「薬を飲むと眠くなる」「薬が効かない」という人で、「どうしても花粉症を完治したい!」という意志がある場合は、ぜひ、検討してみても良いと思います。
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診療科目 | 耳鼻咽喉科・アレルギー科 |