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「眠くならない花粉症薬」を知っていますか? 市販薬の選び方を医師が解説

 公開日:2024/03/14
「眠くならない花粉症薬」を知っていますか? 市販薬の選び方を医師が解説

花粉症の季節がやってくると、鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの症状がつらくて花粉症の薬を飲んでいる人も多いのではないでしょうか。しかし、「花粉症の薬を飲むと眠くなったりだるくなったりする」などと、花粉症以上に花粉症の薬に対して困っている人も少なくありません。そこで、一日の生産性やパフォーマンスを高める上で医師がおすすめする花粉症薬の選び方について、「SUGAR」の佐藤先生に回答してもらいました。

佐藤 将人

監修医師
佐藤 将人(SUGAR LLC)

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「健康的に豊かに生きる」を理念に人的資本経営コンサルティングを手がける企業SUGAR代表医師。宮城県仙台市を拠点に、社員の心身のメンテナンスや企業の組織運営などの経営を支援する事業を展開。医学の知見を生かし肉体改造してシックスパックを達成、精神心理的知見からメタ認知的活動に従事。東北大学医学部医学科卒業、日本医師会認定産業医、中小企業診断士、労働衛生コンサルタント、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、スポーツドクター、仙台市食育推進会議委員。

花粉症の薬で眠くならない最強の処方薬はビラノア!

花粉症の薬で眠くならない最強の処方薬はビラノア!

編集部編集部

花粉症の薬を飲むと「眠くなる人」と「眠くならない人」がいます。ぶっちゃけ、花粉症の薬って眠くなるのですか?

佐藤 将人先生佐藤先生

正直に言いますと、花粉症薬のほとんどは「抗ヒスタミン薬」という薬で眠くなりやすくなっています。しかし、花粉症の薬も改良されてきて、花粉症の症状を抑えるための量では眠くなりにくい薬もあります。

編集部編集部

では、花粉症の薬で眠くならない最強の薬を教えてください!

佐藤 将人先生佐藤先生

花粉症治療薬で眠くならないのは、病院やクリニックでもらえる処方薬なら「ビラノア(一般名:ビラスチン)」、薬局やドラッグストアで購入できる市販薬なら「エピナスチン塩酸塩を含む製品」です。ただし、市販薬はビラノアより眠くなりやすくなっているため、市販薬でボーッとしたり眠くなったりする人は、ほかの薬に切り替えることをおすすめします(1)。

編集部編集部

ほかにも、市販薬で注意しないといけないことはないのでしょうか?

佐藤 将人先生佐藤先生

市販薬の場合、処方薬のビラノアよりも少し眠くなりやすいことに加えて、花粉症の症状を抑える効果も弱いと言われています(1)。そのため、市販薬で花粉症の症状が十分に改善しない時や眠気が強い時は、病院を受診してビラノアなどの薬に切り替えるのがおすすめです。また、市販薬は車の運転などを控えるように注意書きが記載されていますが、ビラノアには運転注意の記載はありません。プライベートでも仕事でも車などの運転をする人は、「ビラノア」で花粉症対策するようにしましょう。

眠れない人がわざと眠くなる花粉症の薬を飲むのは医者的にアリ?

眠れない人がわざと眠くなる花粉症の薬を飲むのは医者的にアリ?

編集部編集部

不眠症気味の場合、わざと眠くなる花粉症の薬を飲むのは医者的にアリなのでしょうか?

佐藤 将人先生佐藤先生

わざと眠くなる花粉症の薬を飲んだほうがいいか・控えたほうがいいかは、その人の花粉症の重症度などによって答えは変わります。その上で、一人の医師として私の意見は、眠れない人がわざと眠くなる花粉症の薬を飲むのはナシですね。

編集部編集部

なぜNGなのでしょうか? 花粉症を抑えて眠りやすくなれば一石二鳥に思います。

佐藤 将人先生佐藤先生

鼻詰まりや目の痒みなどの「花粉症の症状」と「眠れない」という症状は別々に対処することをおすすめしているからです。もちろん、花粉症が原因で眠れないとハッキリとわかっている場合には、花粉症に対処しつつ眠くなりやすい成分を利用して寝つきをよくしてもいいでしょう。しかし、「眠れない」原因が花粉症ではなく、極度の疲れや不安などのストレスの場合には無闇に心のサイレンを消してしまいかねません。眠れない症状は「心の不調」の「氷山の一角」で、肝心の大部分は隠れたままかもしれません。そのため、内科・心療内科・精神科などを受診して花粉症とは切り離して不眠症を治療することをおすすめします。

編集部編集部

「花粉症」と「眠れない」という症状は別々に対処したほうが良さそうですね。では、どのような時に眠くなりやすい花粉症の薬を使うのでしょうか?

佐藤 将人先生佐藤先生

眠くなる花粉症薬の中には、先ほど紹介した眠くなりにくい「ビラノア」よりも効果が強いものがあります。そのため、眠くなりにくい花粉症薬でも効果が不十分な時には、花粉症症状を取り除くために、あえて就寝前に1回などの服用の仕方で眠くなりやすい薬を使うことがあります。ただし、このような薬の変更の検討は、医師や薬剤師と相談しておこなってください。

花粉症の薬と併用注意のお薬は? 妊婦さんや授乳中の女性も安心して飲める薬は?

花粉症の薬と併用注意のお薬は? 妊婦さんや授乳中の女性も安心して飲める薬は?

編集部編集部

花粉症の薬について知らないことばかりでした。その他、花粉症の薬の注意点はありますか?

佐藤 将人先生佐藤先生

花粉症の薬と一緒に飲まないほうがいい市販薬もあることは知っておいた方がいいかもしれません。実は、乗り物などの酔い止め薬の一部は花粉症の薬と同じような「ジフェンヒドラミン」という成分が使われています。そのため、乗り物などの酔い止め薬と花粉症薬を一緒に飲むと、日中に眠気が強くなったり集中力が下がったりするので併用する際は要注意です。

編集部編集部

乗り物などの酔い止め薬と花粉症の薬が同じような成分だとは知りませんでした。ほかにも、花粉症の薬と同じような成分が使われているものもあるのでしょうか?

佐藤 将人先生佐藤先生

不眠症の市販薬として処方されている睡眠改善薬も主な成分は「ジフェンヒドラミン」なので併用する場合は注意しましょう。睡眠薬や睡眠導入剤と違い、睡眠改善薬は花粉症の薬の副作用を逆に利用して寝つきの悪さや眠りの浅さなどに対処してくれる薬です。そのため、花粉症の症状が強くて眠くなりやすい花粉症薬を服用している人は、睡眠改善薬を一緒に飲むと寝起きが悪くなったり眠気が残ったりすることがあるのでお気をつけください。

編集部編集部

睡眠改善薬も同じような成分から作られているとは意外でした。最後に、さまざまな薬に注意しなければならない妊婦さんや授乳中の女性で安心して飲める薬も教えてください。

佐藤 将人先生佐藤先生

残念ながら、妊娠中や授乳中に服用できる花粉症薬として、絶対に安心できるという薬はありません。しかし、妊娠中や授乳中の女性でも比較的安全とされている花粉症の薬は、ロラタジン(先発品:クラリチン)デザレックス(一般名:デスロラタジン)フェキソフェナジン(先発品:アレグラ)です(2, 3)。薬の多くは、治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断する場合に使用することもあります。ただし、冒頭で紹介した眠くならない花粉症薬として紹介した「ビラノア」は母乳への移行が動物実験で報告されているため、使用しないことが多いですね。万が一服用しても、母乳へ移行する量はわずかとされていますが、極力使用しないようにしてみてください。

編集部まとめ

花粉症の治療薬で、効果が強く眠くならない最強の薬は、「ビラノア(一般名:ビラスチン)」とのことでした。また、眠れない人がわざと眠くなる花粉症の薬を飲むのは医者的にナシで、花粉症の症状と眠れない症状は別々に治療するのがおすすめです。花粉症の薬と乗り物の酔い止めや睡眠改善薬の併用もおすすめできないので、これらに注意して花粉症と向き合ってみてください。

【参考文献】
(1)Kawauchi H, Yanai K, Wang DY, Itahashi K, Okubo K. Antihistamines for Allergic Rhinitis Treatment from the Viewpoint of Nonsedative Properties. Int J Mol Sci. 2019 Jan 8;20(1):213.
(2)日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会「鼻アレルギー診療ガイドラインー通年性鼻炎と花粉症ー2023年版(改訂第10版)」p.103
(3)国立研究開発法人国立生育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」

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