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「花粉症治療」の副作用を大幅に軽減! 九州大学が新手法の開発に成功

 公開日:2024/03/11
花粉症治療の副作用を大幅に軽減する方法を開発

九州大学らの研究グループは、「花粉症などのアレルギーの治療に伴う副作用を大幅に軽減する方法を開発した」と発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

九州大学らが発表した研究内容とは?

九州大学らによる研究グループが発表した研究内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介する研究は、九州大学らの研究グループが実施したもので、国際学術誌「Biomaterials」に成果が掲載されています。

研究グループは、花粉症などのアレルギーに対して根治治療としておこなわれている⾆下免疫療法などのアレルゲン免疫療法が、⼝内のただれなどの副作⽤の発症率が高いことや、気管⽀喘息などの重症患者には適⽤できないケースがあることに注目しました。酵⺟の細胞壁から抽出したマンナンによって、アレルギーの原因となるタンパク質を覆った直径約100nm(ナノメートル)の粒⼦を⼤量に⽣産できる方法を開発することに成功しました。

開発によって得られたナノ粒⼦をマウスに経⼝投与したところ、従来おこなわれていたアレルギーの原因となるタンパク質をそのまま⽤いる⽅法と比べて、アナフィラキシーを⽰さず、高い治療効果を示したとのことです。研究グループは、「アレルギーの原因となる物質がマンナンで覆われることで抗体と反応しないため、高い安全性を示した」と述べています。

研究グループは今回の成果について、「治療効率と効果の⾼さにより、治療期間の短縮が期待されます。また、安全性も⾼いため、これまで適応の難しかった重症患者のみならず、乳幼児にも適応できる可能性があります」と、今後の展望についてコメントしています。さらに、「アレルギー体質になると別のアレルギーに次々と罹患し続ける“アレルギーマーチ”を、早期に断ち切る治療薬の開発にも期待されます」ともコメントしています。今回の研究成果をもとに、九州⼤学病院では臨床研究を開始しており、10年以内の実⽤化を⽬指しているそうです。

花粉症とは?

今回の研究テーマとなったアレルギーの中でも、花粉症は多くの人が苦しんでいる症状です。花粉症について詳しく教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

花粉症は日本国内で約3000万人が罹患している、日本で最も多いアレルギー疾患です。現在も患者数は増加し続けています。

花粉症の症状は、花粉が私たちの表面に付着して早ければ数分で表れますが、ここまで短時間に反応が生じる理由は明らかになっていませんでした。アレルゲンとなる花粉などのタンパク質は分子サイズが大きいため、普段は粘膜のバリア機能によって阻まれており、何らかのバリア機能の破綻が起きて、アレルギーの症状が出やすくなると考えられてきました。最近、順天堂大学らの研究グループがこのメカニズムについて明らかにしました。この研究によると、「花粉症の症状が目にすぐ出る原因は、花粉の殻に反応して迅速にアレルギー物質を取り込む特殊なメカニズムにある」とのことです。

今回の研究内容への受け止めは?

九州大学らによる研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回の九州大学らの研究グループの基礎研究である「カプセルを飲んで治す、腸管免疫を用いた新たな免疫療法」は、現在有効である舌下免疫療法がなんらかの理由で使えない患者さんのアンメットニーズを解決する可能性のある研究として、高く評価されると考えます。今後、人を対象とした研究に進み、実用化されることを期待します。

まとめ

九州大学らの研究グループは、「花粉症などのアレルギーの治療に伴う副作用を大幅に軽減する方法を開発した」と発表しました。多くの人が悩む花粉症の治療が進歩する可能性がある研究に、大きな期待が集まっています。

この記事の監修医師