「花粉症」に効く漢方薬の種類はご存じですか? アレルギー体質の治し方も医師が解説!

「漢方薬は体質を改善させる」という説を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。特に花粉症などのアレルギー体質を改善するのに、漢方薬は有効です。一体、どのような漢方薬を選べばいいのか、使用する際の注意点などについて「玄和堂診療所」の寺師先生に解説していただきました。

監修医師:
寺師 碩甫(玄和堂診療所)
アレルギー体質とは?

編集部
まず、アレルギー体質について教えてください。
寺師先生
簡単に言えば、「アレルゲン」に対して過剰に反応する体質のことを指します。アレルゲンとは、アレルギーを引き起こす原因物質のことで、抗原とも呼ばれています。花粉やハウスダスト、一部の食品など様々なものがあります。
編集部
なぜ、アレルギー体質になってしまうのでしょうか?
寺師先生
そもそも、アレルギーは体内に備わっている免疫機能の過剰反応によって起こります。本来、人間には体内に異物が侵入してきたとき、これを撃退する免疫システムが備わっています。その働きを担っているのは、リンパ球の一種である「ヘルパーT細胞」です。ヘルパーT細胞にはTh1やTh2などの様々な種類があり、抗原の種類によってTh1に変わるか、それともTh2に変わるかが決まります。通常はTh1とTh2のバランスが整っていますが、なんらかの原因でこのバランスが崩れると、アレルギー反応を起こしやすくなるのです。
編集部
なぜ、バランスが崩れるのですか?
寺師先生
様々な原因が考えられます。人間の免疫機能を司るのは腸内細菌が主ですが、腸内環境が乱れると免疫機能が衰え、アレルギー体質になりやすくなります。また、現在は以前と比べてアレルギー体質の人が増えていますが、その背景には建物構造の変化によりハウスダストが増えたことや、植樹によってスギ花粉が増えたことなどが挙げられます。そのほか、遺伝やストレスなどもアレルギー体質に関わりがあることが判明しています。
編集部
アレルギー体質は治すことができるのでしょうか?
寺師先生
アレルギー体質は遺伝によって決まっていることも多いので、完全に治すことは難しいかもしれません。しかし、治療によってアレルゲンにさらされてもアレルギー反応を出現しないようにしたり、アレルギーの症状を軽減したりすることはできます。
アレルギー体質の治療法

編集部
アレルギー体質を治すには、どうしたらいいのですか?
寺師先生
アレルギー反応によるくしゃみや鼻水、鼻づまりなどを抑えるには、抗ヒスタミン薬をはじめとする西洋の薬が役立つこともあります。これらの薬の多くは即効性があり、服用後、速やかに症状を抑える効果が期待できます。しかし、基本的には対症療法であり、根本的にアレルギー体質に働きかける薬ではありません。
編集部
アレルギー体質に働きかけるには、どうしたらいいのでしょうか?
寺師先生
その場合には、「柴胡剤(さいこざい)」などの漢方薬を使うことがおすすめです。漢方薬はアレルギー反応を起こしやすい体質そのものにアプローチし、反応を起こさないように体質改善を促していく効果が期待できます。
編集部
漢方薬を飲むことで、症状も抑えることができるのですか?
寺師先生
はい。「漢方薬は効くまでに時間がかかる」というイメージを持っている人も多いかもしれませんが、薬の種類によっては西洋の薬と同じように、速やかに症状を鎮める効果が期待できるものもあります。例えば、花粉症などの治療で多く用いられる「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」は、服用して10〜15分経つと、鼻水の症状が次第におさまってきます。
編集部
アレルギー体質に対する漢方薬治療は、保険が適用になるのですか?
寺師先生
治療を目的とする場合、一部の生薬を除いて基本的に保険が適用になります。ドラッグストアなどで、自費で購入するよりも安く済むこともあるので、詳しくは医師にご相談ください。
花粉症とアレルギー対策に役立つ漢方薬の種類

編集部
花粉症やアレルギー対策に対して、漢方薬を処方してもらう際の流れを教えてください。
寺師先生
まずは漢方薬を処方するにあたり、一人ひとりに「証」を立てることが必要になります。証とは、その人の体質、体力、抵抗力、症状などを総合的に評価したもののことです。証によって処方すべき漢方薬が異なってくるので、まずは問診や視診、触診など様々な診断方法を用いて丁寧に診察します。
編集部
その後、どのようにして漢方薬を処方するのですか?
寺師先生
同じような症状でも、証によって処方すべき漢方薬が変わってきます。例えば、顔色が悪く、手足が冷たくて生理機能が低下している「寒証タイプ」には、小青竜湯がおすすめです。水のようなサラサラした鼻水がでたり、くしゃみを繰り返したりする場合には、そうした症状を抑えることができます。小青竜湯のほかには、「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」が使われることもあります。
編集部
ほかのタイプについてはいかがでしょうか?
寺師先生
同じ寒証でも、鼻づまりが強く出るタイプもあります。くしゃみや鼻水がおさまっても鼻づまりだけがひどく残るという場合には、「葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」がおすすめです。体を温める効果があり、鼻づまりの改善が期待できます。
編集部
葛根湯は熱を下げるために用いることが多いので、体を冷やす薬かと思っていました。
寺師先生
葛根湯は風邪の引き始めなどに用いられることが多く、熱を下げる効果があるため、「体を冷やす薬」と思われることが多いのですが、実際には体を温め、毛穴を開いて熱を下げる効果がある薬です。そのため、冷えが原因となる鼻づまりに効果が期待できるのです。
編集部
これらの薬は花粉症以外でも使うことができるのですか?
寺師先生
はい。例えば、小青竜湯は風邪やアレルギー性鼻炎にも多く処方されている薬で、気管支炎や気管支喘息などにも有効です。また、葛根湯加川芎辛夷は副鼻腔炎や慢性鼻炎にも効果が期待できます。
編集部
それらの薬を使いながら、柴胡剤を併用することで体質改善も進めることができるのですね。
寺師先生
アレルギー体質であり、かつ花粉症もあるという場合には、普段は柴胡剤を服用し、花粉症の時期だけ症状に応じた漢方薬を加えるという使い方がいいと思います。
編集部
花粉症による鼻の症状だけでも色々な漢方薬があるので、適切に選ぶことが必要ですね。
寺師先生
はい。そのため、漢方薬を使用する際には、専門医の診察を受け、正確に証を立てることが必要なのです。また、一度証を立てても漢方薬による治療を続けるうちに、体質が少しずつ変化してくることもあります。同じ薬を漫然と飲み続けるのではなく、必要に応じて証を見直しながら、薬を変えていくことも大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
寺師先生
花粉症に対する漢方薬は即効性があることが多く、「飲んですぐに効いた」という人も少なくありません。一方、アレルギー体質の治療には時間がかかることが多く、最低でも3カ月は服用を続ける必要があります。漢方薬は、アレルギー性鼻炎などの鼻症状だけでなく、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患にも効果が期待できます。また、血液の流れが滞ることでアレルギー症状が強く出る人もいますが、その場合には「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」という漢方薬を処方することで症状の改善が期待できると思います。漢方薬の治療は、長期的な視点での戦略が必要なので、まずは医師にご相談いただければと思います。
編集部まとめ
症状を改善するだけでなく、体質そのものを整える働きもある漢方薬。一部の生薬を除いて保険が適用になるとのことだったので、西洋の薬を長期服用するよりも経済的という場合もあります。まずは漢方を専門としている医療機関に受診してみてはいかがでしょうか。
医院情報
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診療科目 | 内科、婦人科 |