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「膝前十字靭帯損傷」の原因、なりやすい動作・スポーツを医師が解説 競技復帰時期や手術の必要性は?

 更新日:2023/05/26
「膝前十字靭帯損傷」を医師が解説 スポーツ復帰・再開は手術が必要? わかりやすく紹介

プロスポーツ選手の怪我として、耳にすることもある「膝前十字靱帯損傷」。プロ選手だけでなく、一般の人たちもスポーツ時の誤った動作によって発症するリスクがあります。発症したらどのようにスポーツ復帰を目指せば良いのか、たけうち整形外科の竹内先生に教えてもらいました。

竹内 弘毅

監修医師
竹内 弘毅(たけうち整形外科)

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2004年、群馬大学医学部卒業。済生会宇都宮病院や慶應義塾大学整形外科、茨城県立こども福祉医療センター(現 愛正会記念 茨城福祉医療センター)などを経たのち、地域医療に貢献したいと2020年3月、たけうち整形外科を開院、院長となる。最新の知識を取り入れていくことや、症状を一つひとつ、親切・丁寧に診ていく医療を心がけている。

膝の関節が断裂・切れる・伸びる? 「膝前十字靭帯損傷」とは? 全治何か月? 痛みや症状についても教えて

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編集部編集部

膝前十字靭帯損傷とは、どんな怪我ですか?

竹内 弘毅先生竹内先生

膝には前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯という4つの靭帯があり、太ももの骨である大腿骨と、すねの骨である脛骨をつないでいます。これらのうち、前十字靭帯が伸びたり、切れたりしてしまった状態のことを前十字靭帯損傷といいます。

編集部編集部

どのような時に起きる怪我なのでしょうか?

竹内 弘毅先生竹内先生

主にスポーツ中、膝に異常な強い力がかかることで発症します。特にバスケットボールやバレーボールなどのジャンプ後の着地や、サッカーなど急に方向転換する切り返し動作時、ラグビーや柔道など強い力の加わるコンタクトスポーツ、ターンで強い力の加わるスキーでよく見られます。

編集部編集部

どんな症状があるのですか?

竹内 弘毅先生竹内先生

怪我をした瞬間は、膝がガクッと外れたような衝撃とともに痛みで歩行困難となります。また、徐々に関節内に出血を起こすため、曲げ伸ばしができなくなります。通常は3~4週間程度で腫れや炎症が引いてくるので普通の日常生活には戻れますが、歩行時に膝がずれるような感じが残ることが多いです。そのままスポーツをすると膝の不安定性が残っているため、ガクッとなって関節軟骨や半月板を傷つけてしまうことがあります。しかし、軽微な力で損傷した場合など、比較的症状が軽い場合、様子を見ているうちに痛みや腫れがおさまり、そのまま病院に行かずに放置してしまうという方も見受けられます。

編集部編集部

どのくらいで治るのでしょうか?

竹内 弘毅先生竹内先生

手術を必要とした場合は、スポーツ復帰までだいたい9か月くらいを見込む必要があります。

膝の前十字靭帯損傷の治療法の種類は? 軽度でも手術が必要? 手術をしないとどうなるの?

膝の前十字靭帯損傷の治療法の種類は? 軽度でも手術が必要? 手術をしないとどうなるの?

編集部編集部

前十字靭帯損傷にはどのような治療法があるのですか?

竹内 弘毅先生竹内先生

前十字靭帯損傷の治療には、大きく分けて保存療法と手術療法の2種類があります。損傷の程度が軽度で、膝がガクッとはずれるような不安定感・膝くずれがない場合には、運動時にサポーターを使用したり、リハビリで筋力の強化を図ったりします。

編集部編集部

どんなときに手術が適応になるのですか?

竹内 弘毅先生竹内先生

保存療法でも効果が得られず、膝の関節がゆるく感じられたり、膝くずれがあったりする場合には手術適応になります。特に若い人や、これからもスポーツを継続したい人、普段から活動性が高い人も手術を行うことが多いですね。

編集部編集部

手術はどのように行うのですか?

竹内 弘毅先生竹内先生

損傷した靭帯の代わりに、自分の腱を用いて靱帯を再建する「前十字靭帯再建術」が一般的です。関節鏡を使用して手術を行うため傷痕が小さく済み、低侵襲なので入院期間が短いという特徴があります。

編集部編集部

手術をしないとどうなるのですか?

竹内 弘毅先生竹内先生

前十字靭帯が断裂した場合、自然治癒は期待することができません。また膝の不安定性が残るため、関節軟骨や内側半月板を損傷し、変形性膝関節症を発症しやすくなります。通常、変形性膝関節症は加齢とともに発症していく疾患ですが、前十字靭帯損傷を放置していると若い人でも変形性膝関節症を発症することがあり、歩行時に痛みが出たり、階段昇降が難しくなったり、日常生活に支障が及ぶようになります。

膝の前十字靭帯損傷を治療した後運動・スポーツはできる? 老後も問題なく歩ける? リハビリが必要?

膝の前十字靭帯損傷を治療した後運動・スポーツはできる? 老後も問題なく歩ける? リハビリが必要?

編集部編集部

膝の前十字靭帯を損傷しても、手術しないでスポーツに復帰することはできるのですか?

竹内 弘毅先生竹内先生

手術をしない場合は4週くらいで炎症が落ち着き、患部の腫れもおさまってきます。その後、サポーターで固定しながら徐々にスポーツを再開することになります。ただし、関節の不安定性が残るので半月板損傷に注意しなければならず、意図してパフォーマンスを落とすなどの工夫が必要になると思います。

編集部編集部

手術した場合は復帰までにどのくらいかかりますか? また、リハビリが必要ですか?

竹内 弘毅先生竹内先生

施設によって違いもありますが、復帰の時期は手術後約9か月が目安になります。靭帯再建をした場合、術後3か月までは移植腱の強度が低下していき、そこから靭帯の成熟が進んで強度が上がります。手術後早期から可動域訓練をはじめ、松葉杖が取れるのは術後2~3週間以内が目安。術後4週目ころからマシンを使ったトレーニングなどで積極的な筋力強化を行います。

編集部編集部

手術をしたら、元通りに動けるようになるのですか?

竹内 弘毅先生竹内先生

多くのスポーツ選手が競技に復帰し、、以前同様のパフォーマンスを発揮しており、手術の成功率は非常に高くなっています。しかし、怪我をする前と同じような動きをしていたら、前十字靭帯を再び損傷してしまうことがあります。たとえばジャンプをするときに膝が外反するクセがあれば修正するなど、適切な動作を獲得するためのリハビリが必要になります。

編集部編集部

最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあれば。

竹内 弘毅先生竹内先生

前十字靭帯断裂はスポーツ中の膝のケガとしてしばしばみられます。膝が腫れるような怪我をした場合は、一度整形外科を受診してください。手術が必要なこともありますが、適切な治療を受けることで元通りスポーツに復帰できることが十分期待できます。

編集部まとめ

膝前十字靭帯損傷は決して珍しい怪我ではなく、手術手技の進化などにより多くのスポーツ選手が競技に復帰しています。一方、怪我をする前と同じレベルで復帰できるとは限らず、パフォーマンスを上げるためには怪我をしたあとのリハビリや筋力訓練が重要。無理に早期復帰しようとせず、かかりつけ医の指示に従うことが大切です。

医院情報

たけうち整形外科

たけうち整形外科
所在地 〒167-0034 杉並区桃井4-2-21 フェリシア桃井1F
アクセス JR「西荻窪駅」より徒歩14分
西荻窪駅より関東バス「桃井四丁目」下車すぐ
診療科目 一般整形外科、スポーツ整形外科、小児整形外科、リハビリテーション科、リウマチ科

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