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「半月板損傷」の症状・原因・予防法はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「半月板損傷」の症状・原因・予防法はご存知ですか?医師が監修!

膝に痛み・支障がありながら、日常生活を送っている方・スポーツをされている方は意外と多いのではないでしょうか。

今回はそのような膝の痛みを伴う病気の1つ、半月板損傷について詳しくご紹介いたします。

半月板損傷は、一度発症すると自然に治ることは難しく、放置しておくと重症化して変形性膝関節症へと進行してしまう大変な病気です。

この記事で症状・原因・治療・リハビリ・放置のリスクなどをご説明しますので、ぜひ参考にしてください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

半月板損傷とは?

膝を見てもらう女性

半月板損傷はどのような病気ですか?

半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にある三日月のようなC型の軟骨に近い組織です。内側・外側にそれぞれ1つずつあり、膝にかかる荷重を分散して衝撃を吸収するクッションのような役割と、膝関節の位置を安定させる役割があります。
この半月板がさまざまな原因で損傷した状態が半月板損傷です。半月板損傷は、損傷の状態で4つに分けられます。

  • 縦断裂:半月板が縦に断裂
  • 横断裂:半月板が横に断裂
  • 水平断裂:半月板の表面がめくれるように水平に損傷
  • 変性断裂:半月板がギザギザとささくれるように損傷

症状を教えてください。

半月板損傷の症状は、膝の曲げ伸ばしの際の痛み・キャッチング(引っかかるような感じ)です。症状がひどくなってくると、膝の曲げ伸ばしが急にできなくなるロッキングという状態になり、歩けなくなるほどの強い痛みを感じます。
これは、損傷した半月板の破片が膝関節に引っかかり、動きを制限してしまうために生じます。これは、半月板損傷が重症の場合に出現する症状です。
また半月板損傷が慢性化すると、関節の中で炎症を起こして水(関節液)が溜まって腫れたり、中で出血して血液が溜まったりとさまざまな症状が現れます。

原因を教えてください。

半月板損傷の原因は大きく分けて2つあります。1つは、スポーツなどで怪我をしたことによって起こる外傷性です。もう1つは、加齢によって弱まっている半月板に微妙な外力が加わって損傷する(変性断裂)です。
外傷性として分けられるのは縦断裂・横断裂・水平断裂になります。の場合では、体重などの負荷がかかった状態での捻り・衝撃によって半月板だけが損傷するものと、前十字靭帯損傷などの他の疾患に合併して起こるものとがあります。
半月板は加齢に伴い変性するので、40歳以上ではちょっとした外傷でも半月板損傷が起こりやすいです。

半月板損傷の治療

点滴

治療方法を教えてください。

半半月板には、荷重を分散するという大切な役割があるので、できる限り温存する(残す)ことが重要です。治療法には温存を目的とした保存療法と手術があります。
保存療法は、リハビリテーション・足底板などの装具・関節内注射(ヒアルロン酸)・抗炎症剤の内服など組み合わせて行います。半月板を切除してしまうと、その後の荷重の分散範囲を狭くしてしまうことになるので、症状が軽い場合はできるだけ保存療法を行うことが望ましいです。

手術することもあるのでしょうか?

保存療法で改善しない場合断裂部位の幅が広く重症の場合は、手術を行います。
手術には、半月板部分切除術・半月板縫合術の2つがあります。

  • 半月板部分切除術:損傷した部分の半月板を切り取る
  • 半月板縫合術:損傷した部分の半月板を縫い合わせる

どちらの手術も主に関節鏡下で行われ、関節鏡と手術器械を入れるために患部に穴を2、3ヶ所開けて行います。通常の手術のように大きな切開を行う必要がないので、身体への負担が軽く済みます。
半月板は外縁の3分の1程度にしか血管が存在しません。血管がある部分では手術後の治癒が期待できるため縫合術が選択されます。
血管がない残り3分の2は、一度損傷してしまうと修復が難しいため部分切除術が選択されることが多いです。損傷の状態によっても術式が異なり、横断裂・水平断裂場合は部分切除術、縦断裂の場合は縫合術となります。

完治するまでの期間を教えてください。

完治までの期間は、術式・リハビリテーションによって大きく異なります。例えばスポーツ選手の受傷の場合、一般的に競技の復帰までの期間は、内側半月板部分切除術後では6〜8週間外側半月板部分切除術後では3〜4ヶ月です。
半月板縫合術では4〜6ヶ月で、膝装具での固定期間・免荷が必要な期間などが含まれており、縫合部位によっても期間は異なります。

自然に治ることもあるのでしょうか?

半月板は、一度損傷してしまうと基本的には自然に治りにくいことが知られています。
人体の組織には至るところに血管が走行していますが、珍しいことに半月板には外側の3分の1しか血管がありません。臓器・組織の機能維持・ダメージの回復には、酸素・栄養素は必要不可欠です。
血管があれば、その流れに乗って損傷を治癒するために必要な酸素・栄養素を運べます。しかし、内側の3分の2は血管がなく、必要な栄養素が届かないので自然に治ることは困難になります。

半月板損傷のリハビリと予防

リハビリをする男性

どのようなリハビリを行うのでしょうか?

半月板損傷に対するリハビリは段階的に行われます。
膝を軽度屈曲位で固定するニーブレスなどの装具を使用した固定期間は、膝への荷重が行えません。その場合は、タオルセッティング・下肢伸展挙上(SLR)・内転筋トレーニング・殿筋トレーニングなど、患部以外のトレーニングが中心です。
そして徐々に内容を増やし、ヒップアップ・スクワット・エルゴメーターなどで筋力訓練を行い筋力向上を図ります。さらにリハビリが進むと、痛みの加減に応じて負荷量を上げていきながら、筋力の回復に応じてジョギング・ランニング・ニーアップなど段階的に進めていきます。

予防方法はありますか?

半月板は衝撃・捻じれなどの動作に弱いので、膝に過度な負荷がかかったり、捻じれたりして半月板損傷を発症する場合がほとんどです。特にジャンプの着地・切り返し(急に進行方向を変える動作)・急なストップ動作が多いスポーツなどで発症することが多いです。
自分自身の体幹・筋力のバランスと身体全体の機能をしっかりと把握し、適切な姿勢でスポーツを行っているかをしっかりチェックすることが、半月板損傷の予防につながります。
また、日ごろから膝まわりの筋肉を強化して柔軟性を高めておくことが大切です。太ももの前面の筋肉(大腿四頭筋)の曲げ伸ばしを行ったり、椅子スクワット(椅子から立ち上がる・座るを繰り返す)なども膝を痛めずに行える効果的なストレッチ・筋力訓練です。

放置するリスクを教えてください。

膝を捻ったり、曲げ伸ばしをしなければ痛みが出ない場合も多いため鎮痛薬・湿布などで様子をみてしまうことも多いかもしれません。普段の生活の活動量を減らせればいいのですが、中には痛みを我慢しながらスポーツ・仕事をしなければならない方もいるでしょう。
半月板は損傷して断裂したり変形したりすると、半月板に覆われていた軟骨がむき出しにされて、徐々にすり減って膝が変形していきます。そして、時間をかけて変形性膝関節症へと進行してしまうこともあります。半月板損傷は放置しておくと重症化してしまうことを覚えておきましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

膝の痛み鎮痛薬・湿布などの簡単な治療だけでつい様子をみてしまうかもしれません。しかしきちんと痛みの原因を調べ、適切な治療を行わなければ、重症化して変形性膝関節症などを引き起こします。そうなると、歩行が困難になるだけでなく、人工関節になってしまうこともあるのです。
半月板損傷は早期に原因を突き止め、治療を始めることがなにより重要です。膝の違和感・痛みは放置せずに、早めに専門医を受診しましょう。

編集部まとめ

ウォーキングをする男女

半月板損傷について詳しくご紹介しました。膝の痛みをお持ちの方は意外と多いかもしれません。

半月板損傷は損傷の状態に応じて治療法も変わりますし、治療法によって生活復帰・スポーツ復帰までの期間も変わります。

膝に違和感をお持ちであれば早めに専門医を受診して治療し、痛みのなかった時の日常を取り戻し、スポーツも楽しみましょう。

この記事の監修医師