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「半月板損傷」は手術なしでも治せることをご存じですか? 「幹細胞治療」のメリットと注意点を医師が解説!

 公開日:2025/03/11

半月板損傷」と聞くと、スポーツ選手やスポーツを熱心におこなう人が発症すると思われがちですが、じつは一般の人にも多くみられる疾患です。半月板損傷の治療法はいくつかあり、そのなかでも現在、「幹細胞治療」は注目を集めています。一体、どんなメリットやリスクがあるのか、「リペアセルクリニック大阪院」の岩井先生に解説していただきました。

岩井 俊賢

監修医師
岩井 俊賢(リペアセルクリニック大阪院)

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京都府立医科大学 医学部医学科卒業。その後、京都府立医科大学附属病院、京都きづ川病院、山科病院などで整形外科医として経験を積む。2024年、大阪府大阪市福島区に位置する「リペアセルクリニック大阪院」の院長に就任。日本整形外科学会専門医。日本内科学会、日本脳神経外科学会、日本脊髄外科学会、日本再生医療学会、日本糖尿病協会、中部日本整形外科災害外科学会の各会員。

半月板損傷に対する幹細胞治療とは?

半月板損傷に対する幹細胞治療とは?

編集部編集部

半月板損傷に対する治療法には、どのようなものがありますか?

岩井 俊賢先生岩井先生

大きく分けて、「保存療法」と「手術」があります。軽症の場合は運動療法やヒアルロン酸注射、足底板の使用などがおこなわれ、それでも効果が期待できない場合には半月板縫合術や切除術などの手術をします。

編集部編集部

半月板を縫合したり切除したりする手術とは?

岩井 俊賢先生岩井先生

半月板損傷は何らかの原因で半月板を損傷したことにより、半月板に亀裂が入ったり欠損したりすることで起こります。その結果、膝に痛みが生じたり、曲げ伸ばしが難しくなったりします。保存療法で治癒が見込めない場合には、損傷して裂けてしまった半月板を縫い合わせる縫合術のほか、損傷した半月板を切り取る切除術がおこなわれます。

編集部編集部

手術が必要になることもあるのですね。

岩井 俊賢先生岩井先生

そうですね。縫合術や切除術のほかにも、骨に切り込みを入れて向きを変えることで、体重がかかる部分を調整する「骨切り術」という方法もあります。

編集部編集部

半月板切除術は半月板を切り取るとのことですが、術後に問題はないのですか?

岩井 俊賢先生岩井先生

半月板は太腿の骨と脛の骨の間にある三日月状の組織で、関節の安定性を高めたり、膝関節にかかる衝撃を吸収したりしています。その部分を切除してしまうので、数年後には衝撃を吸収できずに関節が変形するリスクが高くなります。実際、研究により「半月板を取る手術をすると変形性膝関節症になる確率が数倍高くなる」ということが判明しています。

編集部編集部

手術をしたくない場合にはどうするのですか?

岩井 俊賢先生岩井先生

近年では、保存療法、手術に次ぐ第3の選択肢として、幹細胞治療をおこなう医療機関も登場しています。幹細胞を使う治療であれば手術や入院も不要ですし、半月板を切除しなくて済みます。半月板を温存することができるので、その後の関節の変形を抑えることができるというメリットがあります。

半月板損傷の原因 どのようなタイミングで起きる?

半月板損傷の原因 どのようなタイミングで起きる?

編集部編集部

半月板損傷は、どのようなタイミングで起きることが多いのですか?

岩井 俊賢先生岩井先生

多くの場合、スポーツをしているとき、膝に強い衝撃が加わることが原因で発症します。特に、走る、飛ぶ、急に切り返す、ターンするなどの動作が多いスポーツでは膝に負担がかかりやすくなり、発症することが多くなります。また、山登りやハイキングなど日常的な趣味活動でも受傷することがあります。こうしたタイプを外傷性の半月板損傷と言います。そのほかにも、加齢を原因として発症することがあります。

編集部編集部

加齢で半月板が損傷することもあるのですか?

岩井 俊賢先生岩井先生

はい、あります。もともと加齢によって柔軟性を失い、傷つきやすくなっているところへ、ちょっとした外傷が重なることで発症する場合もあります。そのほか、肥満や膝に負担のかかる重労働、事故などが原因で発症することもあります。

編集部編集部

半月板損傷を放置するとどうなるのですか?

岩井 俊賢先生岩井先生

場合によってはそれほど痛みがないこともありますが、半月板の損傷は自然に治癒することはありません。放置すると損傷した部分がさらに拡大していき、痛みが強く生じてくることもあります。ひどい場合には急に膝の曲げ伸ばしができなくなるロッキングという状態になり、歩行が困難になることもありますし、放置しすぎると軟骨が摩耗し、変形性膝関節症を発症することもあります。そのため、半月板を損傷したら放置せず、速やかに治療を受けることが必要です。

半月板損傷における幹細胞治療のメリットとリスク

半月板損傷における幹細胞治療のメリットとリスク

編集部編集部

半月板損傷に対する幹細胞治療には、どのようなメリットがありますか?

岩井 俊賢先生岩井先生

幹細胞治療とは、患者さん自身の血液や脂肪から取り出した細胞を増やして膝に注射することで、傷ついた半月板を修復する治療法です。これにより軟骨の修復を促したり、痛みや炎症を抑えたりする効果が期待できます。幹細胞治療をおこなうことで、半月板を切除する手術をせずとも、損傷した半月板を修復し、症状の緩和を促すことができます。

編集部編集部

手術をしなくても注射をするだけでいいのですね。

岩井 俊賢先生岩井先生

はい。半月板を損傷しても痛みがほとんどないなど、日常生活に支障がない人も大勢います。日常生活に支障がないのに、わざわざ手術をすることに抵抗を感じる人は多いでしょう。しかし、問題なく日常生活を過ごせても、半月板損傷は将来的に変形性膝関節症を招く原因になることがあります。幹細胞治療なら注射だけで済むため、治療のハードルが下がりますし、変形性膝関節症の発症リスクを軽減することもできます。

編集部編集部

幹細胞治療の効果は、すぐに現れるのですか?

岩井 俊賢先生岩井先生

初回から治療効果を感じる人もいらっしゃいますが、病状によっては複数回の治療をおこなうこともあります。

編集部編集部

幹細胞治療を受けることで、根治が期待できるのですか?

岩井 俊賢先生岩井先生

幹細胞治療は、根治を期待することができる画期的な治療法ですが、治療効果の持続期間はその後の生活に大きく左右されます。例えば、車も重い荷物を積んだり、長距離を走ったりすれば、次第にタイヤがすり減ってしまうでしょう。半月板や軟骨もこれと同じで、太ったり、激しいスポーツをしたりすれば次第に損傷します。つまり、治療後にどのような生活を送るかによって、治療効果の持続期間が変わるのです。治療効果を維持するためにも、医師の指示に従い、健康的な日常生活を送ってほしいと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

岩井 俊賢先生岩井先生

「ランニングや山登りをした後に膝が痛んだけれど、そのまま放置していたら治っていた」という経験をしたことがある人は多いと思います。しかし、実際には半月板が痛んでおり、知らないうちに変形性膝関節症が進んでいたケースは少なくありません。その場合、早めに幹細胞治療を受けることで将来、変形性膝関節症を発症するリスクを軽減することができますし、日常の不安からも解放されます。もし、膝の痛みでお困りのことがあれば、幹細胞治療の経験が豊富な医療機関に相談することをおすすめします。

編集部まとめ

人生100年時代を健やかに生き抜くためには、膝を健康に保つことはとても重要です。膝の痛みや違和感は、膝からのSOSかもしれません。「歳のせい」「スポーツをしたせい」などといってそのサインを無視することなく、ちょっとした異変に気づいたら早めに医師の診察を受けましょう。

医院情報

リペアセルクリニック大阪院

リペアセルクリニック大阪院
所在地 〒553-0003 大阪府大阪市福島区福島1-1-51 堂島クロスウォーク4F
アクセス 阪神線「福島駅」 徒歩5分
JR「新福島駅」 徒歩7分
診療科目 整形外科

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