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「PRP療法は濃度が高くないと意味がない」説のウソ・ホント【医師が解説】

 更新日:2023/11/14
「PRP療法は濃度が高くないと意味がない」説のウソ・ホント【医師が解説】

患者自身の血液を利用し、炎症を抑えたり組織の再生を促したりする「PRP療法」。変形性関節症や半月板損傷、テニス肘、野球肘など様々な疾患に効果が期待できるとして注目を集めています。一方で、PRP療法は濃度が高くなければ意味がないという話も耳にしますが、はたしてその真偽はいかに。今回は「ひざの痛みクリニック銀座院」の三浪先生に、PRP療法に関する疑問を解決していただきました。

三浪 友輔

監修医師
三浪 友輔(ひざの痛みクリニック銀座院)

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旭川医科大学医学部卒業。北海道大学大学院医学院修了。国立がん研究センター中央病院、がん研有明病院などで整形外科医として経験を積む。2023年、東京都中央区に位置する「ひざの痛みクリニック銀座院」の院長に就任。医学博士。日本整形外科学会専門医・認定骨・軟部腫瘍医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。

PRP療法の仕組み

PRP療法の仕組み

編集部編集部

PRP療法とはなんですか?

三浪 友輔先生三浪先生

PRP(Platelet-Rich Plasma:プレートレットリッチプラズマ)療法は、再生医療の一種です。患者さんの血液を加工し、治療に役立つ成分を抽出して疾患のある部位に注射することで、体が持つ修復力を高めて治癒に導く治療法のことを指します。

編集部編集部

もう少し詳しく教えてください。

三浪 友輔先生三浪先生

血液には血小板、白血球、赤血球など様々な成分がありますが、そのうち血小板には成長因子がたくさん含まれています。そして、その成長因子には細胞を増殖したり、血管を形成したり、組織の修復プロセスを開始したりする働きがあります。PRP療法では血小板を凝縮してこの成長因子の働きをさらに高め、それらを損傷部位に注射することで自然治癒力により怪我や病気を治療します。

編集部編集部

どのように血小板からPRPを作るのですか?

三浪 友輔先生三浪先生

一般的には患者さんから血液を採取し、それを遠心分離機にかけると「血小板が多い血漿」と「血小板が少ない血漿」と「血球」に分離されます。このうち「血小板を含む血漿」がPRPです。この成分だけを抽出して、患者さんの患部に注射します。

「PRP療法は濃度の差によって違いが出る」これって本当?

「PRP療法は濃度の差によって違いが出る」これって本当?

編集部編集部

PRPの濃度は常に一定なのですか?

三浪 友輔先生三浪先生

PRPは血小板濃度を通常の血液の約3~7倍に濃縮しています。しかし、最近ではこの濃度をさらに高め、10倍以上にして患部に注入することもあります。

編集部編集部

濃度が高い方が、やはり効果は大きいのですか?

三浪 友輔先生三浪先生

たしかに、濃度が高い方が成長因子も多く含まれているということなので、高い治療効果を期待できます。また、治療効果が長く続くという効果も期待できます。

編集部編集部

ということは、同じPRP療法を受けるにしても濃度が大事なのですね。

三浪 友輔先生三浪先生

そうです。PRPの濃度が低すぎれば期待した効果を得ることはできません。

編集部編集部

濃度以外に、PRP療法を受けるときに気をつけることはありますか?

三浪 友輔先生三浪先生

濃度だけでなく成分の面でもPRPには様々な種類がある点です。血小板に含まれている成長因子には、PDGF(血小板由来成長因子)、TGF-β(β型変異成長因子)、VEGF(血管内皮増殖因子)、FGF(線維芽細胞増殖因子)、IGF(インスリン様成長因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、BMP(骨形成蛋白質)などがあり、それぞれ異なる役割を持っています。

編集部編集部

異なる役割とは?

三浪 友輔先生三浪先生

例えば、FGFには組織を修復したり、コラーゲンを産生したりする働きがありますし、PDGFには細胞を増殖させたり、血管を新生・修復したりする働きがあります。PRPを抽出して精製する方法は複数あり、それによって血液に含まれる血小板や白血球の数などは異なります。したがって、適切な方法でPRPを精製して、症状に適したPRPを使用する必要があるのです。

編集部編集部

採血してPRPを抽出し、注射するだけの話ではないのですね。

三浪 友輔先生三浪先生

はい。どうやって抽出精製するか、濃度をどれくらいにするかなど患者さんの適応を考慮し、適切な治療をおこなわないと期待した効果が得られません。そのため、PRP療法は経験豊富な医師による濃度の見立てが非常に重要なのです。

PRP療法を受ける上での注意点

PRP療法を受ける上での注意点

編集部編集部

PRP療法を受ける上での注意点はありますか?

三浪 友輔先生三浪先生

まず、PRP療法は保険適用ではなく自由診療になるということを覚えておいてほしいと思います。怪我などの場合には、一度で治療効果が得られる人も少なくありませんが、変形性関節症など慢性的な疾患に対しては1カ月程度期間を空けて複数回、投与することが必要な場合もあります。費用については事前に確認しておきましょう。

編集部編集部

ほかに注意点はありますか?

三浪 友輔先生三浪先生

再生医療全般に言えることですが、治療効果には個人差があるため、治療を受ける前に不安を感じる患者さんも少なくありません。そのため、例えば当院では「本当にPRP療法で治療効果が得られるのか」を見極めるため、MRI検査を事前に必ずおこないます。治療に関して不安なことがあれば、必ずその前に確認してください。

編集部編集部

PRP療法を受けられない人はいますか?

三浪 友輔先生三浪先生

一般に次の人は治療が受けられないとされています。(※)

  • がんを患っている人
  • 高度糖尿病の人
  • 妊娠している人
  • ケロイド体質の人
  • 局所に感染がある人
  • 全身状態が不安な人
  • 肝機能障害のある人
  • 抗凝固薬を服用している人

それから、「関節リウマチ」「変形性膝関節症の症状が重度である」「変形が進んでいる」「股関節が曲がらない」など、症状が顕著である場合にも治療は困難とされています。治療の適用になるかは、必ず医師にご確認ください。

※e-再生医療「PRP (自己血高濃度血小板血漿)療法 治療説明書」
https://saiseiiryo.mhlw.go.jp/disclosed_plan/download/01C1707046/5/0

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

三浪 友輔先生三浪先生

一般に、PRP療法の濃度は3~7倍が最低ラインとされています。濃度が高ければ高いほど大きな効果が期待され、特に重症度が高い人は高濃度のPRPを使用することが推奨されます。また、高齢になるほど血液中に含まれる成長因子の数が減少するので、この場合も濃度が高いPRPを使用するのが望ましいとされています。特に高齢者でPRP療法が用いられることが多いのが、加齢などが原因で膝の軟骨がすり減り関節の変形が進む変形性膝関節症です。膝の痛みが生じ、日常生活にも大きな制限が出てきます。この変形性膝関節症においても、初期から中期であればPRP療法は有効です。症状を軽減するため長期に渡ってステロイドを使用する人もいますが、確かに炎症は取れても長く使い続けることで腱や靭帯が弱くなる場合があります。保険診療に限界を感じている人も多いと思いますが、その場合はぜひPRP療法など再生医療を選択肢に入れてほしいと思います。

編集部まとめ

近年、PRP療法をおこなう医療機関は増えているため、どのような治療を受けたらいいか迷う人も多いと思います。その際には、1つの目安としてPRPの濃度を考えてみてはいかがでしょうか。特に重症度の高い症状を患っている場合に高濃度のPRPがおすすめとのことだったので、ぜひ検討してみてくださいね。

医院情報

ひざの痛みクリニック銀座院

ひざの痛みクリニック銀座院
所在地 〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目5-18 銀座藤小西ビル4F
アクセス 東京メトロ「銀座駅」 徒歩1分
診療科目 整形外科

この記事の監修医師