「心不全」になりやすい人の特徴とならないための予防法を医師が解説
昨今、「心不全パンデミック」という言葉もあるくらい、日本では心不全の患者数は増えています。一体、心不全とはどのような病気なのでしょうか。そもそも、どういう人が心不全になりやすいのでしょうか。今回は、「松井クリニック」の松井先生を取材しました。
監修医師:
松井 さおり(松井クリニック)
心不全とは?
編集部
そもそも、心不全とはなんでしょうか?
松井先生
簡単に言えば、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器へ必要な血液を送り出せなくなった状態のことです。間違いやすいのですが、心不全は病名ではなく、様々な疾患が引き起こす症候群のことを指します。
編集部
どのような疾患が心不全を引き起こすのでしょうか?
松井先生
例えば、心筋梗塞や弁膜症、心筋症、高血圧が続くことで心臓に大きな負担がかかります。こうした疾患を放置しておくと、やがて心不全に至ります。
編集部
心不全になると、どうなるのですか?
松井先生
体に必要な酸素や栄養素が全身に届きにくくなるので、呼吸困難になったり、疲労感を覚えやすくなったりします。また、全身の臓器や血管に血液が溜まりやすくなるので、急に体重が増加したり、むくみが起きたりすることもあります。
編集部
心不全をそのまま放置するとどうなるのですか?
松井先生
まず、心不全には急激に起きる「急性心不全」と、慢性化した「慢性心不全」があります。とくに急性心不全の場合は、放置すると死につながることもあります。他方で慢性心不全の場合、一見状態が落ち着いているように見えても、急激に症状が悪化することがあります。
心不全になりやすい人の特徴は?
編集部
「心不全になりやすい人」の特徴はあるのでしょうか?
松井先生
まず、心不全の原因として多いのは「心筋梗塞」、次に「高血圧」とされています。心筋梗塞は冠動脈が詰まってしまい、心筋が酸素不足で壊死してしまう疾患です。急性心筋梗塞が起きると急性心不全が引き起こされ、一度発症した人は繰り返し心不全が起こりやすくなります。また、心筋梗塞だけでなく、狭心症や心臓弁膜症を起こしたことがある人も、心不全を発症しやすくなります。
編集部
高血圧と心不全には、どのような関係があるのですか?
松井先生
高血圧が起きていると、心臓は強い圧力で血液を全身へ送り出さなければならず、どんどん心臓は疲弊してしまいます。そのため、心臓のポンプ機能が衰えて、心不全になりやすくなってしまうのです。
編集部
ほかにも「心不全になりやすい人」の特徴はありますか?
松井先生
とくに気をつけたいのは「糖尿病」です。糖尿病になると血液中の糖分が多くなり、その結果、動脈硬化を進行させて、狭心症や心筋梗塞を引き起こします。重症化すると心臓のポンプ機能が低下し、心不全につながることがあります。また、糖尿病が心筋にダメージを与え、心不全を発症させることもあります。
編集部
様々な病気が心不全につながるのですね。
松井先生
はい。そのほかに「腎臓病」も心臓に負担をかけるため、心不全を発症させやすいと言われています。とくに最近では慢性腎臓病(CKD)の患者さんが増えていますから、それに伴って心不全の患者さんも増加していると考えられます。
こんな生活習慣は要注意!
編集部
心不全になりやすい生活習慣はありますか?
松井先生
肥満の人、タバコを吸っている人、過度の飲酒をする人、塩分の取りすぎなども心不全になりやすいとされています。そのなかでも、とくに気をつけたいのは肥満の人です。太っていると心臓に対する負荷が大きくなり、ポンプ機能にダメージを与えやすくなってしまいます。
編集部
喫煙は、なぜ心不全と関わりがあるのですか?
松井先生
タバコには血液を固まりやすくする作用があるため、喫煙すると血栓ができやすくなってしまいます。血栓が冠動脈の内側でできると心筋梗塞が起きやすくなり、その結果、心不全に至ってしまいます。また、タバコを吸うと交感神経が優位になり、心拍数や血圧が上がります。これによって心臓に負担が与えられることも、心不全の原因になります。
編集部
飲酒と心不全には、どのような関係があるのですか?
松井先生
飲酒をすると心拍数が増えて、それにより心臓の負担が大きくなります。少量の飲酒であれば問題ありませんが、過度の飲酒を継続している場合は心不全を発症しやすくなります。
編集部
様々なことが心不全の要因になるのですね。
松井先生
はい。そのほかにも、ストレスを抱えやすい人も心不全のリスクが高くなります。なぜなら、ストレスがかかると心拍数が増え、心臓に負担がかかるからです。また、加齢も心不全のリスクを高める要因の1つです。
編集部
そう考えると、誰にでも心不全のリスクがあるということになりますね。
松井先生
そうですね。心不全の患者数は毎年1万人ずつ増加していると言われ、近年では「心不全パンデミック」とも呼ばれています。食生活に気をつけたり、運動習慣を身につけたりすることで、ある程度は心不全を予防することができますから、これを機に日常生活を振り返ってみることをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
松井先生
動悸や息切れがあっても「心不全かどうかわからない」と、受診をされない人は実際に多くいらっしゃいます。しかし、少しでも心不全を疑う兆候があれば、必ず受診するようにしましょう。受診を受けるかどうかわかりやすい目安は、「1週間で2kg体重の増加」を受診の目安にしてください。まずはかかりつけの内科などで診察を受け、もし専門的な検査が必要であれば、循環器科などを紹介してもらうといいでしょう。
編集部まとめ
社会の高齢化に伴い、心不全を発症する人の数が年々増加しています。心不全は慢性化すると、少しずつ悪化しながら徐々に死に近づいていきます。しかし、早いうちに適切な処置をすれば、悪化を食い止めたり、進行を遅らせたりすることは可能です。ぜひ早めの受診を心がけましょう。
医院情報
所在地 | 〒435-0016 静岡県浜松市東区和田町200-2 |
アクセス | JR東海道本線「天竜川駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 内科、循環器内科、小児科 |