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「急性心不全」とは?症状・原因・検査・治療法についても解説!

 更新日:2023/04/03
「急性心不全」とは?症状・原因・検査・治療法についても解説!

急性心不全は心臓のポンプ機能の低下により、動悸や息苦しさ、疲労感、むくみなど体に様々な症状をもたらします。
今回は急性心不全とはどのような状態か、その代表的な症状やそれに至る原因、受診する診療科、治療法などを解説していきます。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

急性心不全とは

急性心不全とは、どのような病気ですか?

心臓には、全身の筋肉や臓器に血液を送る「ポンプ」としての機能があります。具体的には、肺で酸素を受け取った血液を心臓から全身に送り、さらに全身を巡った血液を心臓に戻して再び肺に送る機能です。

このポンプ機能が何らかの原因でうまく働かず、体に様々な症状をもたらす状態を「心不全」といいます。さらに、この心不全が突然起こる、あるいは症状が急激に悪化するのが「急性心不全」と呼ばれる状態です。急性心不全は心筋梗塞などの病気が引き金となり、ポンプ機能が急速に低下して息苦しさや動悸、食欲不振、むくみなどの症状をもたらします。

急性心不全の症状

急性心不全では、どのような症状があらわれますか?

心臓は中隔(ちゅうかく)と呼ばれる壁で左右に分かれており、左側に心不全が起こる「左心不全」と、右側に心不全が起こる「右心不全」で症状が異なります。主なものでは動悸、息切れ、食欲不振、むくみ、体重増加などが代表的な症状です。

このうち「息切れ」と「足のむくみ」は初期の段階で多くみられるため、このような症状が気になりだしたら専門科の受診をおすすめします。

左心不全の症状

左心不全の症状

左心不全の症状には、どのような特徴がありますか?

左心不全の場合、初期では運動時に息切れや動悸、疲労感などがあらわれますが、安静時では無症状であるのがほとんどです。重症化すると、夜間に呼吸困難起坐呼吸(頭を高くしないと息苦しくて眠れない)などを生じ、さらに安静時でも動悸や息苦しさを伴います。

左心不全になると肺から送られてきた血液が心臓内に溜まる「うっ血」が生じ、そのうっ血はやがて肺にも及んでしまいます。その結果、肺でのガス交換がうまく行なわれなくなり、このような症状があらわれてしまいます。

右心不全の症状

右心不全の症状

右心不全の症状には、どのような特徴がありますか?

右心不全では、食欲不振、便秘、悪心、嘔吐、腹部の膨満感、手足のむくみ、体重増加などの症状が特徴的です。右心には全身を巡ってきた血液を肺に送る働きがありますが、右心不全で機能が低下すると全身の血液が戻りにくくなり、このような症状があらわれます。

さらに、心臓から送り出す血液量が不足すると疲労感や脱力感、手足の冷え、尿量の減少、記憶力・集中力の低下などの症状が起こりやすくなります。

急性心不全の原因

急性心不全の原因には、どのようなものがありますか?

心不全は病気ではなく心臓のポンプ機能が低下した状態のことを意味し、その状態に至ってしまう病気が心不全を起こす要因となります。その代表的な病気に「虚血性心疾患」「高血圧」「心臓弁膜症」がありますが、この3つのなかでとくに多いのは虚血性心疾患です。

そのほかにも心筋症や心筋炎、先天性心疾患、不整脈、さらに睡眠時無呼吸症候群や糖尿病などの全身疾患も、急性心不全を引き起こす要因となります。

虚血性心疾患

虚血性心疾患はどのような病気ですか?

動脈硬化や血栓などが原因で心臓の血管が狭くなり、心臓の筋肉に血液が送られなくなる病気です。激しい運動やストレスなどで心臓に負荷がかかると、心臓の筋肉への血流が一時的に不足し、胸や背中に強い痛みや圧迫感を生じます。

代表的なものに「狭心症」や「心筋梗塞」がありますが、心不全のリスクがとくに高いのは心筋梗塞です。虚血性心疾患により心臓への血液供給が不足すると、ポンプ機能が低下して心不全を発症するリスクが高くなります。

心臓弁膜症

心臓弁膜症はどのような病気ですか?

心臓には血液の逆流を防ぐ「弁(弁膜)」が備えられています。心臓弁膜症は加齢や感染症、外傷、先天的な要因によりこの弁に狭窄(狭くなる)や閉鎖不全(しっかり閉じられない)が生じ、心臓のポンプ機能に支障をきたす病気です。

代表的なものに「大動脈弁狭窄症」「僧房弁狭窄症」「三尖弁狭窄症」「大動脈弁閉鎖不全」「僧房弁閉鎖不全」「三尖弁閉鎖不全症」などがあります。いずれの病気でも弁が正常に機能せずに心臓に大きな負担がかかることで、左右の心不全を起こしやすくなります。

高血圧

高血圧になると、急性心不全のリスクが高くなるのはなぜですか?

血圧は、心臓から送り出された血液が血管を押す圧力です。高血圧になると心臓は常に強い圧力で血液を押し出さねばならないため、心臓の筋肉は次第に肥大して硬くなっていきます

そこからさらに血圧の高い状態が続くと心臓の筋肉が疲弊し、ポンプ機能にも支障をきたして心不全を発症しやすくなります。

急性心不全の受診科目

急性心不全の受診科目

症状から急性心不全が疑われる場合、どの診療科を受診すればよいですか?

まずは、最寄りの「循環器科」または「循環器内科」を受診します。ただし、急性心不全では急激な血圧の低下によりショック状態に至るケースもあります。そのような場合は、速やかに救急車を呼んでください

急性心不全の検査

急性心不全では、どのような検査を行いますか?

急性心不全では、心臓の収縮や拡張など心臓の機能そのものを調べる検査と、心不全に伴う病状や今後の進み具合を評価する検査が行なわれます。具体的なものに、以下の検査があります。
  • 胸部レントゲン検査
  • 心電図
  • 心臓CT
  • 心臓MRI
  • 心エコー検査
  • 心臓カテーテル検査
  • 血液検査
  • 尿検査
これらの検査結果から、心不全がどのように起こり、今後どのような状態に至るかを診査し、適切な治療法を選択していきます。

急性心不全の治療

急性心不全では、どのような治療を行いますか?

急性心不全の多くは、虚血性心疾患や高血圧などの慢性疾患が原因であるため、まずはこれらの病気の改善を図ります。具体的には、生活習慣の改善や食事療法、薬物療法、植え込み型補助装置の装着などが挙げられます。

一方で、急性心不全のなかにはたとえ血圧が保たれている状態でも急速にショックや心停止に至る、あるいはその状態で搬送されるケースも少なくありません。そのようなケースに対しては救命処置を優先し、呼吸困難や臓器うっ血(心臓内に血液が溜まっている状態)の改善を図る処置を行います。

急性心不全の性差、年齢差など

急性心不全に性差、年齢差などはありますか?

急性心不全の平均発症年齢は70歳〜73歳で、60代〜80代で多くみられます。大きな男女差はありませんが、男性にやや多い傾向があります。

編集部まとめ

心不全は心臓のポンプ機能の低下により体に様々な症状をもたらす状態のことで、これらの症状が急激に起こるものを「急性心不全」といいます。急性心不全を引き起こす代表的な病気に虚血性心疾患、高血圧、心臓弁膜症があり、これらの持病をお持ちの方は普段から注意が必要です。

急性心不全は動悸や息苦しさ、疲労感、手足のむくみ、体重の増加など様々な症状をともないます。症状から急性心不全が疑われる場合は、最寄りの循環器科・循環器内科を受診しましょう。

なお、急性心不全のなかには急激な血圧の低下によるショック状態や心停止に至るものもあります。緊急を要する症状があらわれた場合は、速やかに救急車を呼ぶようにしてください。

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