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心筋梗塞と併発する上半身の「関連痛(放散痛)」とは? 症状・治療・対策を解説

公開日:2022/07/19
心筋梗塞と併発する上半身の「関連痛(放散痛)」とは? 症状・治療・対策を解説

本来は心臓の痛みなのに、ほかの箇所の痛みと勘違いしてしまう「関連痛」。別名、放散痛とも言う“不思議な現象”は、どうして起きるのでしょうか。同時に、何気ない箇所の痛みの原因が「心臓にある」可能性も知っておきたいところです。今回は、詳しい仕組みを「宮田医院」の宮田先生に伺いました。

宮田 和幸

監修医師
宮田 和幸(宮田医院)

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名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学病院第一内科ほか、各医療機関で循環器内科や総合内科の診療経験を積む。2013年、愛知県名古屋市に位置する「宮田医院」をリニューアル継承。内科全般を通じた地域医療・予防医療に努めている。日本内科学会認定内科医、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本糖尿病協会認定糖尿病認定医。日本心臓リハビリテーション学会、日本糖尿病学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本小児科学会、日本アレルギー学会の各会員。

心筋梗塞と関連痛とは?

心筋梗塞と関連痛とは?

編集部編集部

今回の「心筋梗塞」とは、心臓の血管に詰まりが起きることですよね?

宮田和幸先生宮田先生

そうです。心臓には3本の冠状動脈という血管があります。心筋梗塞は心臓に酸素や栄養素を送っている血管の詰まりです。そして、詰まりがひどくなると血液の通っていない箇所に「壊死(えし)」を起こし、死亡に至ることもあります。なお、自覚として心臓の痛みはもちろん、心臓から離れた上半身に痛みを覚えることもあります。

編集部編集部

心臓以外にも痛みを生じるのですね。

宮田和幸先生宮田先生

はい。どちらかと言えば、心筋梗塞に特有の関連痛が知られています。簡単に言うと「脳の勘違い」で心臓から発せられたサインなのに、脳がほかの箇所から出されたサインと受けとってしまうのです。全身の神経は脊髄に集められているのですが、このときに心臓から出たサインが別の神経に「乗り換えてしまう」イメージでしょうか。

編集部編集部

そして、脳に届いた段階で、「別の箇所の痛み」として感じるわけですか?

宮田和幸先生宮田先生

そういう理解でいいと思います。関連痛の出やすい場所は口や歯も含めた上半身で、しかも左側が多いですが、みぞおちにくることもあります。いくらかは「心臓の名残」があるのでしょう。なお、痛みを感じる箇所は毎回、固定されています。

編集部編集部

例えば、「歯が痛い」と普通は歯科医院に行きます。

宮田和幸先生宮田先生

そして、「なんともありませんね、少し歯周病が出ているくらいですか」ということになりかねませんよね。歯科医院に限らず、肩や腰の痛みで整形外科に行くことも考えられるでしょう。しかし、背後には心筋梗塞が隠れているかもしれないというわけです。

受診先や治療法は?

受診先や治療法は?

編集部編集部

とはいえ、体の痛みで「心臓内科へ直行」という気も起きません。

宮田和幸先生宮田先生

そうですよね。ですから「どういうタイミングで痛みが出るのか」に注目しましょう。そして、心臓に負担がかかっている状態、例えば「階段を上るときに限って肩が痛む」のであれば、狭心症の関連痛かもしれません。高血圧などの心筋梗塞リスクを元々もっていらっしゃる方は、より注意してみてください。また、冷や汗も1つのサインです。心筋梗塞を自発的に疑ってかからないと、この問題ははじまりません。原因がわからなければご自身で判断せず、ぜひ内科医へご相談ください。

編集部編集部

一方で、医師はどのように関連痛を鑑別しているのでしょうか?

宮田和幸先生宮田先生

まずは、痛みの出ている部位の器質的な異常や病気から診ていきます。例えば、歯ならむし歯、肩なら関節の異常などを調べるわけです。これと並行して、高血圧や糖尿病、喫煙習慣といった冠動脈疾患のリスクもチェックします。そのうえで、患部に異常がなくて、狭心症や心筋梗塞の背景が濃厚なら、関連痛を疑います。加えて、必要により造影剤とCTを使って心臓の血管の詰まりを確認することもあります。あるいは、運動時の鼓動の様子を心電図で計測します。

編集部編集部

続けて、治療方法についても教えてください。

宮田和幸先生宮田先生

カテーテルを心臓の血管まで通して、詰まりを取り除きます。このとき、再発防止のためにステントという人工的なパイプを埋め込むこともあります。手術後は、このパイプに血栓ができないよう「血液がサラサラになる薬」を服用していただきます。3本ある心臓の血管次第では、バイパス術が必要となるケースもあります。担当の先生と十分に話し合って、治療法を決定していただければと思います。

編集部編集部

「市販の湿布を痛い場所に貼る」のは、根本的な間違いですよね?

宮田和幸先生宮田先生

その症状が「心筋梗塞の関連痛」であれば、当然ですが効果はありません。ですので、湿布がなかなか効かなくて、歯科や整形外科でも「原因不明」でしたら内科医、あるいは循環器内科医へご相談ください。関連痛も含めて、しっかりと診察をさせていただきます。

心筋梗塞の合併症

心筋梗塞の合併症

編集部編集部

心筋梗塞による合併症は、ほかにもありますか?

宮田和幸先生宮田先生

心筋梗塞の合併症で代表的なものは「心不全」です。心不全を簡単に説明すると、「心臓がだんだん悪くなることで息切れやむくみが起こり、生命を縮める病気」です。心筋梗塞による死亡例は、カテーテル治療の普及により減ってきました。その一方、カテーテル治療後に心不全へ移行する症例が増えています。心筋梗塞のときに「どれだけ壊死を起こしたか」で、その後の心不全の軽重が変わってきます。生き残った心臓だけで頑張ろうとすればするほど“疲れて”しまうのです。心臓が疲れてくると全身がむくんできたり、息切れが出やすくなったりします。そのため、様々な薬物療法が必要となってきます。

編集部編集部

心筋梗塞や関連痛が治ったから「終わり」ではないということですね。

宮田和幸先生宮田先生

終わりではありません。治療後も、引き続き経過観察や別の治療が必要になってきます。ということは、心筋梗塞を初期の段階、つまり壊死が広がっていない段階で解決できれば心不全も起きにくいということです。また、心筋梗塞が起きたということは、体のほかの箇所でも血管の詰まりを起こしかけているかもしれません。「血液がサラサラになる薬」を服用しておきましょう。その意味でも、継続した通院が必要です。

編集部編集部

結局、「心筋梗塞は全身の不都合をもたらす」というオチになりませんか?

宮田和幸先生宮田先生

そう言えるかもしれませんね。最近では「全身の血管を包括的に診ていきましょう」という考えが出てきています。心臓の血管が詰まりを起こしているとしたら、心臓以外の脳、頸動脈、足の血管など全身の血管が悪くなっていないか、私たちは血管のイベント全般に注意を向けて診療をしています。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

宮田和幸先生宮田先生

一次予防は「病気にならないこと」なのですが、「1つの病気を契機として、次の病気にならないこと」、つまり“二次予防”も非常に大切です。個人的な意見ですが、「心筋梗塞が起きるようなら、全身の血管も悪くなっているだろう」と受けとめています。心筋梗塞の次に脳梗塞を起こすなど、次のイベントを回避していく必要があります。その意味で喫煙されてる方は禁煙をする、血圧をよくするなど二次予防の取り組みが大切です。

編集部まとめ

身体の何気ない痛みが、心筋梗塞によって起こり得るということを、この機会にまずは知っておきましょう。心筋梗塞の関連痛は上半身に多く起きますが、血管のイベントは上半身に限りません。そして、血管が悪くなると合併症を引き起こす原因となるので、生活習慣の改善をはじめとする二次予防にも意識を向けていく必要がありそうです。

医院情報

宮田医院

宮田医院
所在地 〒457-0847 愛知県名古屋市南区道徳新町5-21
アクセス 名鉄常滑線「道徳駅」 徒歩5分
診療科目 内科、小児科、循環器内科、糖尿病内科、アレルギー科