骨盤底筋が緩むと「尿漏れ」以外にも心配な症状が! 医師が対策や症状を解説
ふとしたきっかけで尿漏れが気になるようになった、という人は少なくないようです。これは「骨盤底筋群」という筋肉と深く関係しているのだといいます。そこで「骨盤底筋が緩むと心配な症状」について、産婦人科医の佐藤歩美先生(あゆみレディースクリニック高田馬場)に話を聞きました。
監修医師:
佐藤 歩美(あゆみレディースクリニック高田馬場)
目次 -INDEX-
骨盤底筋群とはどんな種類の筋肉で、どんな役割があるの?
編集部
「骨盤底筋群」とはどんな種類の筋肉なのですか?
佐藤先生
文字通り、骨盤の底のほうにある筋肉です。いくつかの筋肉の集まりなので「骨盤底筋群」と呼ばれますが、言葉としては「骨盤底筋」とほぼ同義で使われています。
編集部
どのような働きをしている筋肉なのですか?
佐藤先生
膀胱や子宮、直腸などの内臓をハンモックのように支えることで、これらの臓器をあるべき位置にキープしています。また、骨盤底筋群のもうひとつの大事な役割として、排泄のコントロールがあります。
編集部
具体的にどのようにコントロールしているのですか?
佐藤先生
「骨盤底筋群」が収縮していると尿や便は出ないようになっていて、排泄時にはこれらを緩めることで排尿・排便をしています。普段、尿や便が漏れないのは、無意識的にこの「骨盤底筋群」をしっかりと収縮させているからなのです。
編集部
無意識に収縮しているというのは少し不思議な感じがします。
佐藤先生
そのように感じる方も多いかもしれません。しかし私たちは、姿勢を保持する筋肉や、呼吸をするための筋肉など、無意識のうちに使っている筋肉がたくさんあるのです。最近は「インナーマッスル」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。また、骨盤底筋群は無意識的だけでなく、随意的に収縮をすることもできます。尿意や便意が一定以上になった時など、意識的に「排泄を我慢する」ために、下腹部を引き締めるように力を入れた経験は誰にでもあるのではないでしょうか?
骨盤底筋群が緩む原因は? 骨盤底筋群が緩むと尿漏れ・頻尿以外にどんな症状が起こるか知りたい
編集部
なるほど。その「骨盤底筋群」が何らかの原因で緩むことがあるのですか?
佐藤先生
はい。主な原因としては「妊娠・出産」「加齢」「肥満」があります。「妊娠・出産」時は、身体をリラックスさせるためのホルモン「リラキシン」が分泌されているため、骨盤底筋群が緩みやすくなっています。
編集部
「加齢」や「肥満」の場合は?
佐藤先生
加齢や肥満の場合は、筋力が低下してしまうことが多いので、同様に骨盤底筋群の働きが弱くなってしまいます。そればかりではなく加齢や肥満によってホルモン分泌に変化が起きることも多いので、さらに骨盤底筋群の緩みが加速する場合もあります。「閉経」などの場合はとくにホルモンの変化が顕著ですね。また、最近はこれらに該当しない方でも、尿もれを訴えるケースが増えています。生活習慣の変化で、筋肉を使わない方が増えてきているのだと思います。
編集部
そうなると、どんな症状が起こりますか?
佐藤先生
まずは、尿意・便意のコントロールが難しくなりますので、「尿漏れ」「頻尿」などが現れます。症状には個人差があり、「普段は問題ないけれど、くしゃみや咳、重たいものを持った時などに少し出てしまう」という軽度のものから、「特別な誘因がなくても、少しずつ漏れてしまう」というものまで様々です。また、尿漏れの量についても差が大きく、例えばドラッグストアなどで販売されている「尿漏れパッド」をみてみると、3cc程度のごく少量用のものから、100cc前後のものまで数多くの商品があります。「少しだけ尿を溜めておけるけれど、たくさんは溜められないので頻繁にトイレにいかないと間に合わない」という場合は「頻尿」になります。目安としては、排尿が1日8回以上だと「頻尿」です。
編集部
そのほかにはどのような症状がありますか?
佐藤先生
先術の通り、骨盤底筋群には「内臓を正しい位置にキープしておく」という役割があります。この働きができなくなると、内臓が下方に下がってしまう「内臓下垂」や、内臓が前の方に突出してしまう、いわゆる「ぽっこりお腹」になってしまいます。また、内臓が下がってしまうことで、腸の動きが鈍くなり、「便秘」を引き起こすこともあります。
骨盤底筋群の緩みを改善することは可能? 医師が骨盤底筋群のトレーニングや体操を解説
編集部
いろいろな症状があるのですね。どうしたら改善できますか?
佐藤先生
これらの症状は全て、骨盤底筋群の緩みを戻すことで、かなりの改善が期待できます。名前の通り、骨盤底筋群も「筋肉」なので、トレーニングで鍛えることが大切です。「しゃがみ込み」と「立位」を繰り返す「スクワット」をして下半身を鍛えるように、「収縮」と「弛緩」を繰り返すことで筋肉は鍛えられます。何よりも、毎日少しずつでもいいので継続することが大切です。
編集部
骨盤内にある筋肉は、どのようにトレーニングしたら良いのでしょう?
佐藤先生
確かに、体の内側にある筋肉なので、コツを掴むまでは少し難しく感じるかもしれません。しかし、特別な器具なども必要なく、寝たままや座ったままでできるトレーニングもありますので、手軽に取り入れられるかと思います。最も有名なのは「ケーゲル体操」というもので、これはインターネットで検索すれば、わかりやすいイラストや動画がたくさん出てきます。ぜひ取り入れてみてください。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
佐藤先生
骨盤底筋群の緩みは、誰にでも起こりうるものです。筋肉なので、適切に鍛えていけば症状は改善できますが、インナーマッスルということもあり「筋肉を使っている感じがわからない」という方もいるかもしれません。そんな時は一度、医療機関に相談してみてください。妊娠経験のない若い女性にとって「産婦人科」は敷居が高いかもしれませんが、尿漏れや頻尿などに対する相談・指導も行っています。また、「頻尿」については、骨盤底筋群の緩みだけではなく、「過活動膀胱」など別の疾患が隠れている場合もありますので、そういった病気を見逃さないためにも、1人で悩まずに、一度受診してみてください。
編集部まとめ
尿漏れと、その原因となる骨盤底筋群について、産婦人科医の佐藤先生にお話を伺いました。「骨盤内にある筋肉を鍛える」というのはなかなかイメージしにくいかもしれませんが、トレーニングすることができるのですね。それでも不安がある場合には、産婦人科で相談にのってもらいましょう。
医院情報
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診療科目 | 産科・婦人科 |