目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 【漫画付き】筋力不足で頻尿になるって本当?

【漫画付き】筋力不足で頻尿になるって本当?

 更新日:2023/03/27
【漫画付き】筋力不足で頻尿になるって本当?

トイレが近くなる頻尿。筋力とはまったく関係なさそうですが、実は――。その関係性と、予防の方法、隠れている病気の可能性について、泌尿器科の専門医として、患者に寄り添う診断と治療をされている土橋正人先生に詳しくうかがいました。

土橋 正人

監修医師
土橋 正人(どばし泌尿器科クリニック)

プロフィールをもっと見る

北里大学医学部卒業。国際医療福祉大学熱海病院泌尿器科、国際医療福祉大学病医院講師などを経て、2019年9月に泌尿器科とペインクリニック内科を専門とした「どばし泌尿器科クリニック」を開業。日本泌尿器科学会認定指導医・泌尿器科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。

筋力不足の頻尿、女性は若いうちから要注意

筋力不足の頻尿、女性は若いうちから要注意

編集部編集部

筋力不足だと頻尿になるって聞いたんですが、本当でしょうか?

土橋先生土橋先生

本当です。私たちの体は全身にいろんな筋肉がありますが、骨盤の底には、「骨盤底筋群」と呼ばれる筋肉があって、子宮や膀胱、直腸など骨盤内の臓器を支えています。それが加齢や肥満などにより筋力不足になると、膀胱など骨盤内臓器の位置が下がったり、膀胱自体の筋肉も弱ってきたりします。そうすると、膀胱に尿をためておく、最後まで出し切るといった排尿のコントロールができなくなり、さまざまな尿のトラブルが起こってくるというわけです。

編集部編集部

判断基準などはありますか?

土橋先生土橋先生

頻尿とは、「尿が近い、尿の回数が多い」ことをいいますが、泌尿器科における定義では、「1日の排尿回数が8回以上、夜間が1回以上」となっています。ただ、頻尿や残尿感というのは個人の感覚が関係しているので、実際は回数というより、本人が気になるかどうかが大事ですね。

編集部編集部

尿の回数は、飲む水の量も関係しますよね?

土橋先生土橋先生

はい、実際に「トイレが近い」という患者さんのお話を聞くと、水の飲みすぎが原因のことは多いですね。たとえば、「1日10回ぐらいトイレに行く」という方が、水を3リットルくらい飲んでいるという場合は、多尿ということになります。また、「夜何度もトイレに行きたくなります」という方の中に、「脳梗塞が怖いから、寝る前に1リットル近く水を飲んでいます」というケースもありました。ただ、医師の立場からすると、トイレが近い患者さんの中には、糖尿病や隠れ脳梗塞、ホルモンの問題など、ほかの疾患が隠れている可能性があるので、注意しています。例えば、糖尿病の初期症状の一つに多飲多尿があります。糖尿病によりおしっこがいっぱい作られることになり、その結果、のどが渇き、水を飲む量が増える。そのため尿の量がさらに増え、おしっこに何度も行かなくてはならないということがあるからです。頻尿と一言にいっても、他の病気が隠れていることがありますので、注意が必要です。

編集部編集部

原因が筋力不足によるときは、何歳ぐらいから気をつけたほうがいいですか?

土橋先生土橋先生

男性と女性では、骨盤底筋の構造に違いがあり、男性のほうがしっかりしています。女性には子宮がある分、支える臓器が多いですし、女性は出産をすると、骨盤底筋にダメージを受けてしまうため、出産後に尿漏れしやすくなる方もいらっしゃいます。骨盤底筋が弱ると、高齢になってからなりやすくなるため、女性の場合はできるだけ早いうちから予防するに越したことはありません。男性は、高齢になってから症状を訴える方が増えます。とくに前立腺肥大の影響で膀胱の機能に障害が出て頻尿になる方が増えますから、中年以降から気をつけたほうがよいですね。

筋力低下の予防には「尿漏れトレーニング」を

筋力低下の予防には「尿漏れトレーニング」を

編集部編集部

骨盤底筋が弱まると、他にも何かリスクがありますか?

土橋先生土橋先生

女性の場合は、尿道や膣、肛門の周りをしめる筋肉は連動しているので、それが弱まってくると、大笑いやくしゃみをしたときに、尿がもれる「腹圧性尿失禁」になるリスクが高まります。また、「骨盤臓器脱」といって、骨盤の中の臓器である子宮や膀胱、直腸などが下がってきて、膣や肛門から出てくることもあります。男性でも、尿の後にちょろっと漏れてしまう、しゃがんで立ち上がる時にじわっと漏れてしまうといったことがあります。また、男女を通じて、尿意を催してトイレに行く間にもらしてしまうこと(切迫性尿失禁)があります。いずれも、「骨盤底筋群運動」というトレーニングによって予防することができます。

編集部編集部

「骨盤底筋群運動」とはどのようなものでしょう?

土橋先生土橋先生

骨盤底筋群運動は「尿漏れトレーニング」とも言われていますから、聞かれたことがあるかもしれませんね。骨盤底筋の筋肉を鍛えることで、筋肉低下にともなう尿トラブルを予防・改善する運動です。

編集部編集部

「尿漏れトレーニング」のやり方を教えてください。

土橋先生土橋先生

イメージ的にはお尻の穴をきゅっとしめることで、骨盤内の臓器をギューッと持ち上げるようなイメージです。尿漏れ予防のパンフレットなどには、横になって腰をちょっと浮かせて、お尻の下からおなかのほうに向けてギューッと持ち上げるやり方がよく紹介されています。ただ実際は、座った状態でも立った状態でもできます。

編集部編集部

毎日やったほうがいいんでしょうか?

土橋先生土橋先生

そうですね。でもわざわざトレーニングのために時間を割くのは継続が難しいですから、テレビをみながらCMの間だけやるとか、料理しながら煮込んでいる間だけやるとか、日常生活のなかでちょこちょこやるのが効果的で継続もしやすいと思います。

頻尿の原因で多い膀胱炎は、自己判断せず泌尿器科へ

頻尿の原因で多い膀胱炎は、自己判断せず泌尿器科へ

編集部編集部

筋力不足以外では他にどんな原因の可能性がありますか?

土橋先生土橋先生

実は、頻尿になる原因として一番多いのは、膀胱炎です。また、男性の場合は前立腺肥大前立腺炎が原因のケースもあります。なので、気になるときは一度泌尿器科を受診いただいて、膀胱炎なのか、前立腺の病気なのか、骨盤底筋の筋力不足なのか、もしくは内科的な疾患の可能性など原因をはっきりさせることをおすすめします。場合によっては、飲水パターンや排尿習慣など、日常生活の習慣が原因となることもありますしね。その場合は、病気じゃないとわかって生活指導をして、安心して帰っていただくだけでも、よいと思います。

編集部編集部

膀胱炎は、市販薬で対処する方も多いようですね。

土橋先生土橋先生

膀胱炎の場合、女性の方や忙しい方などは特に、市販の漢方薬などを飲んで治そうという方が結構いらっしゃいます。ただ膀胱炎の症状がある方の中には稀にですが、膀胱がんが含まれていることがあるため注意が必要です。そのため膀胱炎がなかなか治らない場合は、自己判断せず、一度泌尿器科で診察を受けていただきたいと思います。
さらに、昔もらった抗生剤があるからとりあえず飲んできた。という人も見受けますが、そもそも膀胱炎でない場合もありますし、膀胱炎だったとしても診断や原因菌がはっきりしなくなる、さらには耐性菌を作る原因となるため、自宅にある抗生剤は使用せず、泌尿器科に受診することをおすすめします。同じ理由で当院では、お守りとしての抗生剤は処方いたしておりません。

編集部まとめ

筋力不足と頻尿の意外な関係には、「骨盤底筋」という普段は意識していない筋肉が関わっていることがわかりました。とくに女性は子宮がある分、骨盤内の臓器が男性より多く、出産によってもダメージを受けるため、若いうちから注意が必要とのこと。予防のためには、日常生活の中で取り入れられる「尿漏れトレーニング」を意識して取り組んでいこうと思いました。また、原因で一番多い膀胱炎にも注意が必要で、頻尿かな? と思ったら、とりあえずは泌尿器科に相談に行くのが一番確実で安全な解決策と理解しました。

医院情報

どばし泌尿器科クリニック

どばし泌尿器科クリニック
所在地 〒413-0015 静岡県熱海市中央町17−15 K’sメディカル3階
アクセス 熱海駅から徒歩17分/来宮駅から徒歩13分
JR熱海駅よりバスにて清水町バス停下車
診療科目 泌尿器科・腎臓外科・ペインクリニック内科・麻酔科

この記事の監修医師