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妊娠中の「膀胱炎」や「尿漏れ」の原因はご存じですか? 予防法・治療法も医師が解説!

 公開日:2024/06/11

妊娠は女性の体に様々な変化をもたらしますが、泌尿器にも影響を及ぼすことが非常に多いことをご存じですか? 妊娠中の尿トラブルのリスクを減らすために、どのような対策が必要なのでしょうか。今回は妊娠中の尿トラブルについて、「レディースクリニックなみなみ」の叶谷先生に解説していただきました。

叶谷 愛弓

監修医師
叶谷 愛弓(レディースクリニックなみなみ)

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東京女子医科大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科修了。東京大学医学部産科婦人科学教室入局、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東京大学医学部附属病院など、複数の病院で勤務医として経験を積む。2024年、東京都目黒区に「レディースクリニックなみなみ」を開院。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。日本周産期・新生児医学会、日本女性医学学会、日本人類遺伝学会、日本産科婦人科遺伝診療学会の各会員。

妊娠中の泌尿器トラブルの原因

妊娠中の泌尿器トラブルの原因

編集部編集部

妊娠中の泌尿器トラブルは多いのですか?

叶谷 愛弓先生叶谷先生

はい、とても多いですね。妊娠中は体内の水分量が増えるので尿の量も増えますし、膀胱や子宮を支える骨盤底筋に負荷がかかって尿漏れが起こりやすくなります。妊娠・出産は尿漏れの最大のリスクであり、ほぼ全ての妊婦さんが「尿漏れ」を経験すると言われています。尿意を全く感じずに尿漏れすることも多く、破水との違いが分からなくなりがちです。

編集部編集部

膀胱炎になる人も多いと聞きました。

叶谷 愛弓先生叶谷先生

妊娠中はホルモンの影響によって尿管などの平滑筋が弛緩し、尿がうっ滞します。うっ滞して尿の流れが悪くなった結果、細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎を引き起こすのです。さらに、妊娠中は免疫力も下がっているため、普段以上に感染症になりやすいことも影響していると考えます。

編集部編集部

膀胱炎になると、どのような症状が出るのですか?

叶谷 愛弓先生叶谷先生

頻尿や残尿感、排尿時の痛みなどが主な症状です。さらに、尿に血が混じったり、尿が濁ったりすることもあります。進行すると腎臓まで感染が至り、腎盂腎炎などを引き起こして入院が必要になることもあるので要注意です。

妊娠中の泌尿器トラブルの予防・対処法

妊娠中の泌尿器トラブルの予防・対処法

編集部編集部

なぜ、そのようなトラブルが起こりやすくなるのですか?

叶谷 愛弓先生叶谷先生

子宮が大きくなることによる骨盤底筋の圧迫で、ダメージを与えることが大きな要因です。骨盤底筋の緩みなどが尿漏れを引き起こします。加えて、経腟分娩によって会陰裂傷や膀胱粘膜の障害が引き起こされるため、産後は尿漏れが必ずと言っていいほど起こるのです。また、子宮が大きくなることにより膀胱や尿管が圧迫されて尿がうっ滞し、細菌が繁殖しやすくなるために膀胱炎を発症します。さらに、冷えも膀胱炎と関連があるため、妊娠中は特に体を冷やさないよう意識していただきたいです。

編集部編集部

妊娠中の尿漏れを予防する方法はありますか?

叶谷 愛弓先生叶谷先生

尿漏れの予防には、妊娠中から骨盤を支える靭帯や筋肉を鍛える「骨盤底筋訓練」をおこないましょう。また、膀胱炎の予防としては、規則正しい生活をして免疫力を高めることが重要です。生活習慣を整えて、免疫力を高めることがポイントです。トイレを我慢しないことや意識して水分を摂ることなども、泌尿器トラブルの予防につながります。

編集部編集部

妊娠中の泌尿器トラブルは、出産すると解消されるのでしょうか?

叶谷 愛弓先生叶谷先生

子宮による膀胱の圧迫や水分量の増加などは産後、元に戻るため、尿漏れや膀胱炎となるリスクは減っていくかもしれません。しかし、ダメージを負った骨盤底筋は出産したからといって、すぐに回復するわけではないので、産後も継続的に骨盤底筋体操をおこなうことが重要と考えます。産後は子宮内に胎児はいなくなったものの、産まれた子どもを抱くシーンが増えるため、骨盤にかかる負荷はそれほど変わらないとも言われています。

妊娠中の尿漏れや膀胱炎の治療法は?

妊娠中の尿漏れや膀胱炎の治療法は?

編集部編集部

妊娠中の膀胱炎には、どのような治療をするのですか?

叶谷 愛弓先生叶谷先生

基本的には妊娠していないときと同様、抗生剤治療をおこないます。妊娠中だと使えない薬もあるため別の薬剤に代えることはありますが、基本的な標準治療は変わりません。

編集部編集部

ほかにもありますか?

叶谷 愛弓先生叶谷先生

尿漏れに対しては産前と同様、骨盤底筋訓練が有効です。妊娠中から骨盤底筋訓練をおこなうことは、産後の尿失禁予防にも役立つとされています。スタートが早ければ早いほど効果も出やすいので、妊娠中や産後早期からぜひ取り組んでいただきたいですね。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

叶谷 愛弓先生叶谷先生

妊娠や出産は幸せな一大ライフイベントですが、尿漏れや膀胱炎などになってしまう妊婦さんは非常に多くいらっしゃいます。早期であれば生活習慣の改善や骨盤底筋訓練などのセルフケアで対策できます。育児で忙しい日々の中でも、ぜひ子どもだけでなく自分の体にも目を向けてあげてください。産後、特に症状を感じなくても、出産を経験した女性は必ずと言っていいほど骨盤底筋が緩んでいます。実際に40歳を過ぎてから「尿漏れが気になる」と来院される女性も多いので、産後早期から骨盤底筋の体操を取り入れた方がいいということをぜひ知っていただきたいですね。

編集部まとめ

妊娠中の泌尿器系統への影響を理解することは、妊娠中の女性だけでなく、産後の女性にとっても非常に重要です。尿漏れや膀胱炎を予防するためには、生活習慣を意識するとともに、排尿コントロールの要である骨盤底筋を鍛えることが効果的とのことでした。育児で忙しい生活の中でも自分のことを後回しにせず、少しの時間でもいいので骨盤底筋の体操をしてみてはいかがでしょうか。そして、症状が気になった時は、我慢せずに泌尿器科を受診しましょう。

医院情報

レディースクリニックなみなみ

レディースクリニックなみなみ
所在地 〒153-0063 東京都目黒区目黒1-6-17 Daiwa目黒スクエア 1階
アクセス JR「目黒駅」 徒歩4分
診療科目 産科、婦人科、女性泌尿器科、内科

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