女性の5人に1人は「尿漏れ」に… 尿が勝手に出る原因と対処法を医師が解説!

高齢者の悩みと思われがちな「尿漏れ」ですが、じつは若い世代でも起こることがあります。そして、尿漏れは若いうちに治療を始めると効果が出やすいのだそうです。尿漏れの治療効果が年齢とともに変わるのはなぜなのか、治療を受けるベストタイミングについて、「アロリエクリニック」の市川先生に解説していただきました。

監修医師:
市川 りえ(アロリエクリニック)
尿漏れとは?

編集部
まず、尿漏れについて教えてください。
市川先生
意図せず尿が漏れてしまうのが尿漏れで、医学用語では「尿失禁」と呼ばれています。尿漏れは女性に多いとされており、「女性の5人に1人は尿失禁の症状を経験する」とも言われるほどです。尿漏れは種類があり、くしゃみなどによってお腹に力が掛かることで漏れてしまう「腹圧性尿失禁」が尿漏れに悩む人の約半数を占めています。また、それ以外には、突然尿意を感じ、トイレを我慢できずに漏れてしまう「切迫性尿失禁」が2割、どちらの尿漏れもある「混合性尿失禁」が3割となっています。
編集部
尿漏れは高齢者だけの問題だと思っていました。
市川先生
いいえ、尿漏れは年齢に関係なく起こる可能性があります。特に、妊娠中や出産後の女性や運動習慣のない女性、更年期の人、激しいスポーツをしている人にも尿漏れが起こることがあります。産後、子どもと一緒に縄跳びやトランポリンをしていたら漏れるという悩みを持つ人もいます。尿漏れは加齢とともに悪化しやすいため、早めの対策が重要です。
編集部
なぜ、尿漏れが起こるのでしょうか?
市川先生
尿漏れの原因には様々な要因がありますが、骨盤底筋との関係が大きいと言われています。骨盤底筋が収縮していると尿や便は出ないようになっていて、緩めることで排尿・排便をしています。骨盤底筋が上手く働かなくなると尿漏れが起こりやすくなります。妊娠中や出産後に尿漏れが起きやすい原因の1つは、「リラキシン」というホルモンの影響です。また、更年期の女性に尿漏れが多いのは「エストロゲン」という女性ホルモンの分泌が低下し、筋肉量や骨量も減少してしまうからです。その結果、代謝が落ちて脂肪が増え、骨盤底筋への負担がかかって緩みやすくなります。
編集部
骨盤底筋が関係しているのですね。
市川先生
それだけではありません。ストレスや感染、加齢や肥満によって排尿コントロールが上手くいかなくなることもあります。
尿漏れの受診先・対処法

編集部
尿漏れは自然に治るのでしょうか?
市川先生
一時的な感染による膀胱炎などの原因がはっきりしている尿漏れは、その原因が解消されれば改善していくことがあります。しかし反対に、放置すると悪化する可能性もあるため、注意が必要です。最初は軽い症状でも加齢とともに進行し、日常生活に支障をきたすことがあるため、気になった時点で専門医に相談し、早いうちに適切なケアを始めることが大切です。
編集部
尿漏れが気になる場合、どの診療科を受診すればいいですか?
市川先生
一般的な泌尿器科でも診てもらえますが、女性の場合は婦人科や女性専門の泌尿器科を探してみるのもおすすめです。
編集部
尿漏れの治療には、どのような方法がありますか?
市川先生
骨盤底筋トレーニングや生活習慣の改善のほか、薬物療法やレーザー治療、場合によっては手術という選択肢もあります。超音波を利用した「HIFU(ハイフ)」などのマシンを導入している医療機関も増えているようです。切迫性尿失禁に対しては薬物療法とマシン治療の併用がより効果的など、症状の程度や原因によって適した治療法が異なるため、医師と相談するのがポイントです。
編集部
骨盤底筋のトレーニングについても教えてください。
市川先生
体の内側にある筋肉なので、トレーニングといってもピンとこない人も多いかもしれません。骨盤底筋を意図的に収縮させる方法としては「排尿中に意識的に尿を止める」というのがあります。これで感覚をつかみ、普段からトレーニングをするのが大事です。わざわざトレーニングの時間を取る必要はありません。「電車で吊革につかまって立っているときに、締める訓練をしてみてください」などとお伝えしています。また、今は服を着たまま座るだけの骨盤底筋マシーン(椅子)もあるので、気軽にまずはそこから始めてみるのもいいでしょう。
尿漏れを若いうちに治療するメリット

編集部
尿漏れの治療は、若いうちから始めた方がいいのですか?
市川先生
そうですね。早い段階で治療を始めると、骨盤底筋のトレーニングや生活習慣の改善が効果を発揮しやすく、症状の進行を防ぐことができます。繰り返しになりますが、尿漏れは放置すると悪化することもあるため、気になったら早めに対処するのが理想的です。
編集部
年齢が上がると、尿漏れの治療は難しくなるのですか?
市川先生
年齢を重ねると全身的な筋力の低下やホルモンバランスの変化などにより、治療の効果が出るまでに時間がかかることがあります。しかし、適切な治療をおこなえば改善する可能性は十分にあるので、年齢に関係なく尿漏れが気になったら医療機関に相談することが大切です。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
市川先生
尿漏れを「恥ずかしいこと」と考えてしまい、誰にも相談できずに悩んでいる人が多いようです。実際に当院でも「今まで誰にも話せなかった」と話す患者さんが多くいらっしゃいます。しかし、早いうちに対処したほうが効果も出やすいので、1人で抱え込まずに相談することが大切です。気軽に受診いただけたらと思います。
編集部まとめ
尿漏れの原因や対処法について解説していただきました。尿漏れは早期に対策をすることで、より高い効果が期待できます。気になる症状があれば1人で悩まず、ぜひ医療機関に相談してみてください。
医院情報
所在地 | 〒141-0022 東京都品川区東五反田5丁目27−5 5セントラルビル 6階 |
アクセス | JR「五反田駅」 徒歩1分 |
診療科目 | 婦人科、美容皮膚科 |