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アトピー治療でのステロイド長期間使用が不安。リスクや正しい使用方法、ステロイドの減量について教えて

 更新日:2023/03/27
アトピー治療でのステロイド長期間使用が不安。リスクや正しい使用方法、ステロイドの減量について教えて

「ステロイドを長期間使っているけど、副作用が……」。そんな心配をしている人もいるのではないでしょうか。アトピー性皮膚炎では、標準治療としてステロイド外用薬が使用されることがありますが、長期間使用したり、強いランクのものを使用したりしている場合に、副作用のリスクも気になるところ。そこで今回は、ステロイド治療による副作用のリスクやステロイドの正しい使用方法、ステロイドの減量に関して、おうえケアとわクリニックの麻植一孝先生に話を聞きました。

麻植一孝医師

監修医師
麻植 一孝(おうえケアとわクリニック 院長)

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福岡大学医学部卒業。卒業後は東京慈恵会医科大学附属病院救急部に所属。風邪や捻挫などの一般的な治療から重症感染症、重症外傷の集中治療まで幅広い救急医療に約10年に渡り携わる。おうえケアとわクリニック開院後も一般的な内科疾患から外科疾患、整形外科疾患、小児医療、高齢者医療と多岐にわたる分野で治療にあたる。

ステロイドは正しく使用することが大切

ステロイドは正しく使用することが大切

編集部編集部

アトピー性皮膚炎の治療でステロイドを長期間使用しているのですが、副作用が心配です。

麻植一孝医師麻植先生

確かに、ステロイドは誤った使用をすると副作用が生じることもあります。しかし、適切な期間、必要な部位に適量使用すれば多くの場合問題はないでしょう。しかし、症状が良くならないうちに使用を中断したり、自己判断で使用を再開したりすると、症状の悪化を招くこともあります。また、このように間違った使い方を繰り返していると効果がなくなってしまい、より強いランクのステロイドが必要になることもあります。

編集部編集部

間違った使い方をすると、どんな副作用が出ることがあるのですか?

麻植一孝医師麻植先生

皮膚が赤くなったり血管が透けて見えたりするようになるほか、細菌やウイルスなどに感染しやすくなったり、ニキビや紫斑ができたりすることがあります。

編集部編集部

副作用を予防するためにはどんなことが大切なのでしょうか?

麻植一孝医師麻植先生

先述したように自己判断で使用をやめたり再開したりしないことが大切です。また、ステロイドは重症度に合わせて医師が症状に見合うものを処方するため、必ず医師に処方されたステロイドを指示に従って使用してください。

ステロイドの正しい使い方

ステロイドの正しい使い方

編集部編集部

ステロイドの正しい使い方を教えてください。

麻植一孝医師麻植先生

基本的には、朝晩2回薄く塗ってください。ステロイドを手に取る量は、人指し指の先端から第1関節部までチューブから押し出した量(約0.5g)が適量とされています。皮膚に塗る際は、擦り込まず優しく伸ばすように塗布します。このとき、患部以外にはステロイドが付着しないよう注意し、塗り終わったらしっかりと手を洗ってください。

編集部編集部

症状が良くなったらステロイドをやめても良いですか?

麻植一孝医師麻植先生

ステロイドを止めるタイミングも、医師に確認してください。長期間ステロイド外用薬を使用している場合に突然中止すると、症状が急激に悪化することがあります。そのため、症状がかなり改善したとしても、医師に確認しながら徐々に減量する必要があります。

編集部編集部

ステロイドは、どのくらいの期間でどのように減量していくのですか?

麻植一孝医師麻植先生

ステロイドを減量していく方法にはいくつかあります。最初は効果の高いステロイド外用薬を使用して短期間に症状を改善し、様子を見ながら徐々に弱いランクの薬に移行していく方法や、「光線療法」と呼ばれる治療法と併用してステロイドを減量していく方法などが挙げられます。しかし、減量の方法や期間は患者さんの症状によっても大きく異なるため、一概にはいえません。

光線療法と併用での減量も

光線療法と併用での減量も

編集部編集部

光線療法という治療法についても教えてください。

麻植一孝医師麻植先生

光線療法は、紫外線の「免疫抑制反応」を利用した治療法です。紫外線には、アトピー性皮膚炎などのアレルギー反応を抑えるはたらきがあります。光線療法ではこの作用を利用し、アトピー性皮膚炎の過剰な免疫反応を抑える効果が期待できるのです。特殊な光線(紫外線)を皮膚に照射することで、赤みや痒み、ターンオーバーの異常などの症状を鎮静化させることができます。中でも「セラビームUV」という機器を使用した治療法は、短い波長の紫外線を患部に照射する光線療法で、2020年に保険適用となった新しい治療法です。アトピー性皮膚炎以外では円形脱毛症などにも対応しています。

編集部編集部

顔に紫外線を当てるのは少し心配です。安全なものなのでしょうか?

麻植一孝医師麻植先生

光線療法で使用される紫外線は、人体に有害なものは取り除かれており、安全性が認められています。照射する紫外線量のイメージとしては、5月から8月くらいの直射日光を5分間浴びる程度でしょうか。もちろん、これによって白内障を発症したり、しみの原因になったりすることはありませんので、ご安心ください。

編集部編集部

ステロイド治療と併用することもあるのでしょうか?

麻植一孝医師麻植先生

はい。ステロイド治療と併用することで治療効果を高めることができるほか、軟膏などで抑えきれない痒みにも有効とされています。また、症状が落ち着いている状態を長期間保つことができるため、ステロイドの使用量や副作用を減らす効果も期待できます。アトピー性皮膚炎では首や肘など顔以外に症状がみられることもありますが、このように衣服が皮膚と接触する部分は軟膏の塗布が難しく、塗布しても取れてしまうこともあります。光線療法では、このような不便も解消できるのです。顔への塗布を懸念される場合や、お子さんに対してステロイドを長期間使用したくないという方には、有効な治療法といえるでしょう。

編集部編集部

光線療法は、どのくらいの頻度で行うのですか? また、副作用はありますか?

麻植一孝医師麻植先生

週に1〜2回、徐々に出力を上げながら照射していきます。症状への効果が確認できれば、1~2週間に1回程度で維持し、症状に応じて照射回数を調整していきます。光線療法ではほとんど副作用はありません。しかし、まれに皮膚の赤みや色素沈着、ほてり感などを生じることはあります。

編集部編集部

光線療法の注意点などはありますか?

麻植一孝医師麻植先生

光線療法では、特に痒みへの高い効果が期待できますが、「症状が良くなった」と自己判断で治療を中止しないようにしてください。ステロイドと同様、光線療法も段階的に照射量を減らしていくことが重要です。正しく治療を受けることで、効果が長続きするでしょう。

編集部編集部

ありがとうございました。最後に読者の皆様へメッセージをお願いします。

麻植一孝医師麻植先生

ステロイドは、アトピーによる痒みや赤みに対しての治療効果が高い薬であるといえます。しかし、高い効果が期待できる反面、使用方法によっては悪影響を及ぼすこともあるのです。使用する際は医師の指示に従って正しく使用するほか、光線療法などの治療法と併用して徐々に減らしていくようにしましょう。

編集部まとめ

ステロイドは、誤った使い方をするとさまざまな悪影響を生じる恐れがあります。長期間使用していて副作用が心配という場合にも、自己判断で使用を中止せず、必ず医師の処方に基づいて使用しましょう。また、長期間のステロイド使用やそれによる副作用が心配という方は、光線療法などステロイドとの併用治療の可否についても主治医に相談してみると良いかもしれません。

医院情報

おうえケアとわクリニック

おうえケアとわクリニック
所在地 〒162-0054 東京都新宿区河田町3-10
アクセス 都営新宿線「曙橋駅」より徒歩6分
都営新宿大江戸線「若松河田駅」より徒歩6分
診療科目 内科、救急科、皮膚科

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