【闘病】中学で好きなものも食べられなくなった。クローン病と治療の日々
「クローン病」という病気を知っていますか? 腸に炎症や潰瘍(かいよう)を引き起こす病気で、難病に指定されています。若い人に発症することが多く、闘病者のフォルさん(仮称)も中学生のときにクローン病であることがわかりました。果たして、どのようにして病気が判明し、どのような治療を受け、現在どのように生活しているのか。話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年8月取材。
体験者プロフィール:
フォルさん(仮称)
2011年にクローン病を発症し絶食や治療を経て寛解したものの、その後一度再発を経験。現在は免疫抑制剤や抗炎症薬を服用し、抗体製剤での治療を行いながら成分栄養剤を用いた食事制限を行っている。現在は管理栄養士として勤務している。
記事監修医師:
梅村 将成
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
クローン病と診断されるまで
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
フォルさん
小学校低学年の頃から、食事をした後によく腹痛を伴うことがありました。初めは気にしていませんでしたが、中学1年生の初めに激痛を伴う腹痛があり、さまざまな病院を受診しました。3〜4件目の病院で、大腸カメラで検査を行って、やっと病名がわかりました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
フォルさん
まず、入院して絶食になりました。栄養は、中心静脈栄養といって、長期間点滴を継続するために深部の静脈にカテーテルを留置して、そこから連日点滴を行いました。それに加えて抗炎症薬を服用し治療を行うという方針でした。また、クローン病は退院後の食事制限が非常に重要ということで、抗炎症薬の服用に加え、脂質制限された食事と成分栄養剤を用いた食事療法を行うという旨の説明を受けました。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
フォルさん
当時中学1年生だった私は、今まで通りに好きなものが食べられなくなるという事実に大きなショックを受けました。薬を飲めば完治するという病気ではないため、この先ずっと制限された食事をしなければならないという不安とショックが大きかったです。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
フォルさん
成分栄養剤を初めは1日1200ml服用していたため、それを飲む時間を作ることがとても大変でした。中学では、お昼ご飯の後に飲んでいましたが飲みきれない場合は許可を取り、授業中に飲んでいました。高校からはある程度自由が効くようになり多少は飲みやすくなりましたが、1日のうちに1200ml飲み切るのはやはり大変でした。現在は体調の安定により300mlまで減り、ほとんど生活への支障は無くなりました。成分栄養剤を服用するかは個人の選択によりますが、服用した方が体に負担なく栄養を摂取することができるため、出来るならば服用した方が良いのではないかと思っています。
病気を理解してくれる周囲への感謝
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
フォルさん
家族や友人、恋人など周りの人の支えがとても大きかったです。病気に関して周りの人達からの理解がないと、生活を送るのがとても苦痛だと思います。幸い私の周りには病気のことを理解してくれる人たちが多く、食事に関しても配慮して頂けることが多かったため、とても気持ちが楽でした。現在も職場の方々にも色々と配慮して頂き大変助かっています。
編集部
良き理解者がいてくれたんですね。
フォルさん
自分の病気のことを理解してくれる周りの人達には感謝しかありません。病気のことを理解してもらえるということは当たり前のことではないですし、中には心ない言葉をかけてくる人達もいました。そんな中で自分自身の病気のことをしっかりと考えてくれる周りの人達は、大きな支えとなっているため日々感謝しています。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
フォルさん
現在は抗炎症薬の服用と2ヶ月に一度の点滴治療(レミケード)を行っています。治療の効果もあり体調は落ち着いていて、脂質制限と成分栄養剤にて食事制限はしていますが定期的に好きなものも食べられています。また、働き始めてから脂質摂取量は増えましたが、今のところ大きく体調を崩すこともなく生活を送ることができています。
病気のハンデも工夫で変わる
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
フォルさん
食事制限は辛いこともあるけれど、工夫すれば食べられるものは沢山あるということです。管理栄養士になるために、様々な病気に関する食事療法を学びました。その知識を活かして、病気を持っていても充実した食生活を送ることが出来るということを伝えたいです。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
フォルさん
当たり前のように毎日食べている食事ですが、好きなものを気にせず食べられるということは本当に幸せだということを知って頂きたいと思います。私はいつでも好きなものを好きなだけ食べられる体ではないので、病気になってからその点をとても意識するようになりました。
編集部
闘病の中でお奨めしたいことなどはありますか?
フォルさん
ほどよくストレス発散をすることがとても大事だと思います。精神的な負荷がかかると、体に負担がかかって再発の原因となりかねないからです。SNSでは同じ病気の方と繋がってさまざまなお話をさせて頂いています。身近では中々同じ病気の人はいないと思うので、同じ病気の方と悩みなどを共有し合うというのもとても良いと思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
フォルさん
クローン病が見つかってからかなりの年月が経っていますが、望むことはただ一つで、病気を完治させて何の気兼ねもなく食事を楽しみたいということです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
フォルさん
いつどこでどんな病気になるかは誰にもわかりません。特に、病気をあまり経験したことがない方や、周りにそのような方がいない場合は病気のことなど普段は考えないと思います。しかし、誰にでも病気になる可能性はあるため、少しでも体の異変に気づいたらすぐに病院を受診するということを心がけてほしいです。手遅れになる前に自分の体を見つめ直してあげてほしいなと思います。
編集部まとめ
病気を理解してくれる人の存在は、当たり前ではない。闘病体験者でないと実感しづらいことかもしれません。そんな経験をしながらも前向きにできることに取り組み、学び、仕事にも日常にも活かすバイタリティの高さは、健常者以上のものだと思います。同病の仲間を探す手段としてのSNS利用はもちろん便利ですが、弊害も潜んでいるので慎重に活用しましょう。