【闘病】クローン病治療を続けながら、看護師になりました
高校生の時にクローン病と診断され、治療を続けながら看護師になったという竹藪さん(仮称)。現在は、医療従事者でありながら、自身も一人の患者である竹藪さんが、日々どんなことを感じながら病気と向き合っているのか、詳しく聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。
体験者プロフィール:
竹藪さん(仮称)
1998年生まれ北海道出身、2021年東京移住。高校3年生の10月にクローン病と診断される。高校卒業後は医療総合系大学に進学し、現在は看護師として活躍中。定期的に通院し内服薬とレミケード、エレンタールにて寛解維持。Instagramで、「とあるクローン病患者の日常(niconico_egao0505)」のアカウントにてクローン病患者としての生活を発信している。これからはIBD(炎症性腸疾患)患者さんたちとの共有の場を作りたいと考えており、活動内容や発信方法を模索中。
記事監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
食事をしっかり摂っていても痩せていった
編集部
最初はいつ、どのような症状があったのですか?
竹藪さん
高校1年生だった2014年12月に、肛門部に痛みがあり、病院を受診しました。翌年に痔ろうの手術をしましたが、その後も痛みは続いていました。この時は腹痛などの症状はなかったのですが、食事をしっかり食べていても痩せていき、異常な倦怠感もありました。
編集部
そこからどのように診断が確定したのですか?
竹藪さん
高校3年生になった2016年6月に下血があり、主治医に大腸内視鏡検査を勧められました。検査の結果、クローン病に特徴的な縦に長い潰瘍(縦走潰瘍)、石を敷き詰めたような潰瘍(敷石状病変)が確認されたということで、IBD(炎症性腸疾患)センターのある病院を紹介され、3か月後に精査目的で入院したのですが、その時にはもう腹痛、下痢、下血、38℃台の発熱など様々な症状が出ていました。上部・下部(大腸)内視鏡検査、造影CT検査の結果、クローン病と診断されました。
編集部
どんな病気で、どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
竹藪さん
小腸や大腸などの消化器に炎症が起き、潰瘍ができたり出血したりする病気で、原因不明の難病だそうです。治療としては、まず消化管を休めるために絶食して、点滴だけでしばらく過ごした後、食事を再開しながらペンタサ、経口・経腸栄養剤エレンタールを開始し症状を観察していくと言われました。私と家族は、インターネットで調べていた漢方での治療を希望していたのですが、主治医から当時のクローン病治療の説明を受け、看護師との面談もして検討した結果、そのまま主治医のもとで治療を始めることに決めました。
編集部
その後、体調はどうなりましたか?
竹藪さん
無事退院はできたのですが、1か月もしないうちに腹痛や下痢が出現し、ヒュミラ(ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤)という別の薬を開始することになりました。これは自宅で自己注射で投与するものです。ところがなかなか炎症がおさまらず、徐々に増量せざるを得なくなりました。2019年5月には、主治医から薬の変更を提案され、レミケードという薬に変えました。レミケードには、マウス由来の抗体を使用しているため免疫抑制剤も併用していく必要や、免疫抑制していくため感染症のリスクが高くなるなどのリスクがあります。また、ヒュミラは自宅で自己注射できましたが、レミケードは8週間ごとに通院が必要になりました。
死ぬことはない、でも治ることもない
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
竹藪さん
当時はまだ高校生だったこともあり、聞いたことのない病気に対して「死ぬのかな。怖い」という想いでした。医師の説明を聞き、自分でも調べていくうちに死ぬことはないと理解できましたが、治療法が確立していない難病であるということもわかり、「一生この病気と生活していくのか」と、かなりのショックを受けた覚えがあります。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
竹藪さん
一番は母ですね。たくさん協力してくれました。あとは、病気について理解し、協力してくれている友人達です。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
竹藪さん
脂質の摂取量に制限があるので、スーパーやコンビニで食品の成分表示を見るようになりました。でも時には息抜きも必要なので、体調が良い時には少量ずつ食べたいものを食べています。病気のことは隠さず、周りの人たちにきちんと知ってもらうようにしています。
病名だけでなく、何に困っているのかを理解してもらいたい
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
竹藪さん
高校3年生でクローン病と診断された後、看護学校へ進学し、現在は看護師として働いています。今年の春には北海道から上京し慣れない一人暮らしを始めました。仕事のストレスなどもあり、食生活がやや崩れてしまうこともありますが、暴飲暴食を控え、スポーツなどで身体を動かし体調を整えています。仕事上勉強することがたくさんあり大変ですが、まずこの1年は何事もなく乗り切れるようにと思いながら生活しています。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
竹藪さん
IBDの症状は外からはわかりにくく、一見すると健常者と思われがちです。病気を一から理解して欲しいとは言いませんが、健康に見えても実は病気と闘っているのだということを理解してもらいたいです。また、IBD患者以外にも社会には病気を抱えながら生活している方がたくさんいます。症状も人それぞれです。外見だけでその人がどういった人なのか判断しないでもらいたいと思います。
編集部
同じ疾患の方にメッセージはありますか?
竹藪さん
家族や医療従事者に頼ることも病気と共存していくのに大切なことだと思います。あと、私は、同じ境遇の方に少しでも元気や勇気を持ってもらえるように、生活の一部を発信していますし、同じIBD患者さんがどのような生活をしているのか気になっています。みなさんも、もっと自分の病気について発信してみてはどうでしょうか。こういうものは食べられて、これはだめだとか、IBDを知らない人に伝えられることはたくさんあります。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
竹藪さん
私自身も今では看護師として医療に従事する一員でありますが、患者がどんな生活をしていて、何に困っているのかなどにも目を向けてアドバイスをして欲しいと感じましたし、そうしていこうと思いました。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
竹藪さん
IBDは芸能人や著名な政治家などにも罹患者がおり、以前に比べ多少は世間にも知られてきているようですが、具体的にどんな症状で、どのようなことに気をつけて生活しなければならないのかを分かっている人はまだまだ少ないと思います。見た目は普通でも、体調によって出来ることと出来ないことがあり、それを理解してもらえないのはけっこうなストレスです。もっと罹患者のその時々の症状や体調を見て理解して欲しいと思います。また、あなた自身の体調にももっと敏感になって、不調を感じたら放置せず、すぐに受診してもらいたいと思います。
編集部まとめ
病気であることや病名を知ってもらいたいのではなく、どんな生活をしていて、何に困っているのかを理解してもらう必要がある、とのメッセージをいただきました。「もっと知ってもらいたい」「理解されないことがストレス」「周りに頼ることも大切」と、患者として、医療従事者として、どんな社会にしていきたいか明確なビジョンを話してくれました。竹藪さん、ありがとうございました。