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「大腸がん手術後に注意すべき5つの食品」はご存知ですか?【医師解説】

 公開日:2025/11/22

大腸がんの手術を受けた後は、機能が完全に回復するまでに時間がかかります。術後に適さない食材を摂取してしまうと、体への負担が大きくなり回復を遅らせてしまう可能性もあるでしょう。 この記事では、大腸がんの手術後に摂取を控えたい食材やおすすめの食材を紹介します。手術後の食事に不安な方は、注意すべきポイントを理解できるでしょう。

※この記事はMedical DOCにて『「大腸がんで食べてはいけないもの」はご存知ですか?術後に控えるべき食品も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

大腸がんで食べてはいけないものとは?

大腸がんの手術直後は便の形成機能が低下するため、排便がうまくいかない状況がつづきます。下痢や便秘などの症状が起こりやすく、2〜3カ月は特に食事に気を付ける必要があります。また、腸閉塞も起きやすいといわれており、術後の順調な回復のために好ましくない食材を摂取しないことが大切です。
消化しにくい食材や食物繊維を多く含む食材は腸閉塞の引き金になる可能性があるため、あまり摂取しないほうが無難です。また、辛い食材やカフェインなど刺激の強いものは避けましょう。

大腸がん手術後に注意すべき食品

大腸がんの術後は、大腸の機能が十分に回復しておらず、消化に悪い食材を摂取すると回復によくありません。術後に避けるべき食材を5つ紹介します。

玄米

食物繊維を多量に摂取すると、腸閉塞になる可能性があります。食物繊維を豊富に含み、消化吸収がよくない玄米を術後に摂取するのは控えたほうがよいでしょう。

中華麺

中華麺にはさまざまな種類の製品がありますが、油が含まれているケースもあり一般的に消化に悪いため、手術直後は控えましょう。

脂身の多い肉

腸の機能が低下すると、栄養の吸収効率も下がりエネルギー・タンパク質などが不足しやすくなります。そのためタンパク質は積極的にとるべきですが、脂質の多い食品・料理は腸への刺激が強いとされています。
「タンパク質といえば肉類」というイメージがあるかもしれませんが、大腸がん手術後で腸の消化・吸収機能が十分に回復していない時期に脂身の多い肉を摂ることはおすすめできません。

根菜類

食物繊維は、健康な方にとって腸内環境を整えるために大切なものです。しかし、食物繊維とは人間の消化酵素で消化できない成分であり、大腸がん術後の患者さんにとっては消化器への負担が大きいでしょう。消化不良のほか腸閉塞のリスクもあるので、手術から1カ月程度は根菜類のような繊維の強い食材は避けることをおすすめします。
いつごろから、どのようなものを食べてよいかは医師・医療機関の栄養士などに確認しながら徐々に食事の幅を広げていきましょう。

炭酸飲料

炭酸飲料には腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進する働きがありますそのため、便秘に悩んでいる方などには良い効果が期待できます。しかし、大腸がんの手術をした後は腸への刺激を減らすことが大切です。
医師の許可が出るまでは、炭酸飲料は避けることをおすすめします。炭酸飲料だけではなく冷たい飲み物も腸への刺激が強いため、飲みすぎないように気を付けましょう。

大腸がんについてよくある質問

ここまで大腸がんで食べてはいけないものについて紹介しました。ここでは「大腸がんの食事」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんで脂質の多いものを摂取するとどうなりますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

栄養素にはさまざまな種類がありますが、その中でも脂質は腸の蠕動運動を亢進させやすいとされています。これは、脂質の消化を助ける「胆汁酸」という酵素と脂質自体が腸を過度に刺激するためです。このような理由から、脂っこいものを一度にたくさん摂ると下記のような症状が現れることがあります。

  • 腹痛
  • 下痢
  • 頻便
しかし、脂質はエネルギー量が多く、食事がたくさん食べられないときの貴重なエネルギー源です。そのため過度に制限する必要はありませんが「腸を休めたいときには脂質の多いものは控えるべき」と覚えておきましょう。

お酒は飲んでも良いですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

大腸がんと診断されてからも、お酒を飲むことができます。ただし、お酒をたくさん飲む方は飲酒をしない方と比べると大腸がんのリスクが高いとされています。
具体的には、平均で1日に日本酒1合分のアルコールを摂る方は飲酒をしない方の1.4倍、1日に日本酒2合分以上のアルコールを摂る方の大腸がん発症リスクは2.1倍です。この結果には、お酒に含まれるエタノールが体内で分解される過程でアセトアルデヒド・活性酸素が発生することが関係していると考えられます。そのため、1日のアルコール摂取量に注意して少量にとどめる必要があるでしょう。
加えて、アルコールは腸への刺激が強いため、医師から指示された期間の飲酒を避けることが必要です。また抗がん剤治療などをする場合は、飲酒できる時期や量について担当の医師に確認することをおすすめします。

編集部まとめ

大腸がんになっても強い食事の制限はなく、手術をしてから一定期間が過ぎればほぼ治療を受ける前と同様の食生活を送ることができます。 ただし、大腸の手術を受けると一時的に腸の消化・吸収能力が低下することが予想されます。 そのため、医師から指示された期間は消化の良い食材・刺激の少ない食品を選んでバランスの良い食事を心がけましょう。

大腸がんと関連する病気

「大腸がん」と関連する病気は4つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの病気は、大腸がんの原因になることがあるとされています。家族性大腸腺腫症は、直腸・結腸にポリープが多発し高い確率で結腸がんを発症する病気です。また、リンチ症候群は高い確率で若くして大腸がん・子宮体癌などを発症する病気で、いずれも遺伝性疾患です。潰瘍性大腸炎・クローン病は消化管で広範囲の炎症・粘膜の潰瘍などが起こる炎症性疾患で、こちらも罹患すると大腸がんの発生リスクが上がるとされています。

大腸がんと関連する症状

「大腸がん」と関連する症状は4つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

大腸がんによくみられる症状として血便が挙げられます。血便には、肉眼的に分かるものと、見た目ではわからず「便潜血検査」などで発見されるものがあります。このような消化管からの出血が続くことが、貧血につながる場合があるので注意が必要です。また、大腸は便の性状を整える働きがあります。そのため、大腸がんに伴って腸の機能が低下することで便秘・下痢がみられることがあります。

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