「内視鏡検査」を受けるべきタイミングはご存じですか? 推奨年齢や放置のリスクも医師が解説!
「辛い」「苦しい」といったイメージがあり、距離をとられがちな「内視鏡検査」。しかし、受けずに放置していると怖い病気が進行していることもあります。一体、いつ内視鏡検査を受けるべきなのか、タイミングや検査を受けないリスクについて「熊本みなとクリニック内科・内視鏡内科」の岩﨑先生に解説していただきました。
監修医師:
岩﨑 智仁(熊本みなとクリニック 内科・内視鏡内科)
内視鏡検査を受けるタイミング
編集部
内視鏡検査を受けるタイミングは、いつなのでしょうか?
岩﨑先生
そもそも、内視鏡検査には種類があり、「胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)」と「大腸カメラ検査(下部消化管内視鏡検査)」が代表的です。そして、それぞれの検査で受けるタイミングが異なります。
編集部
まず、胃カメラ検査を受けるタイミングについて教えてください。
岩﨑先生
- 上腹部(みぞおち辺り)に痛みがある
- 胸に痛みがある
- 背中に痛みがある
- 胸やけ、胃もたれがある
- 酸っぱいものや苦いものが上がってくる
- 息が臭い
- げっぷが多い
- 声がかすれる
- 喉に違和感がある
- 食事のときにつっかえ感がある
- 吐き気がある
- 食欲がない
- 食事を摂ると気持ち悪くなる
- ダイエットをしていないのに体重が減る
- 黒い便が出る
編集部
なぜ、そのような症状があるときに、胃カメラ検査を受けた方がいいのですか?
岩﨑先生
「食道がん」「胃がん」「胃・十二指腸潰瘍」などの重大な疾患が隠れている可能性があるからです。そのため、早めに診察を受けて、適切に対処することが必要となります。
編集部
痛みや自覚症状がなくても、胃カメラ検査を受けた方がいいのですか?
岩﨑先生
はい。初期のがんのように、痛みや自覚症状がなくても病気が進行していくものもあります。定期的に胃カメラ検査を受けて、疾患を早期に発見することが大切です。
編集部
自覚症状がなくても受けた方がいいのですね。
岩﨑先生
特に「ピロリ菌」に感染したことがある人は、菌によって胃がダメージを受けています。たとえ除菌をした後でも、胃がんの発症リスクは一般の人よりも高い状態にあります。
大腸カメラ検査を受けるタイミング
編集部
一方、大腸カメラ検査を受けるタイミングはどんなときですか?
岩﨑先生
- へその周りに痛みがある
- 下腹部に痛みがある
- ストレス(不安や緊張など)でお腹が痛くなる
- 食事をするとトイレに行きたくなる
- 下痢が持続する
- 便秘がある
- 残便感がある
- お腹が張る
- おならがよく出る
- おならが臭い
- 吐き気がある
- 食欲がない
- 食事を摂ると気持ち悪くなる
- ダイエットをしていないのに体重が減る
- 排便時に出血がある
- 肛門から粘液様の排泄物がある
編集部
これらの症状があると、どのような疾患が考えられるのですか?
岩﨑先生
「炎症性腸疾患」や「大腸がん」などの疾患が隠れているかもしれません。そのため、まずは大腸カメラ検査をおこなってこれらの可能性を排除します。また万が一、大腸カメラ検査によってこれらの疾患が見つかった場合は、検査の結果などを考慮しながら早急に治療法を検討します。
編集部
炎症性腸疾患とはなんですか?
岩﨑先生
腸に炎症を起こす疾患の総称で、特に注意したいものに「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」があります。なかでも近年、日本で増えているのは潰瘍性大腸炎です。遺伝的な要因や環境因子、ストレスなどによって発症し、発症してから長い時間経過すると大腸がんの誘因となる場合があります。
編集部
そうした疾患を早期発見するために大腸カメラ検査が必要なのですね。
岩﨑先生
そのとおりです。もちろん、大腸がんの早期発見にも大腸カメラ検査は有効です。特に大腸がんは初期の頃は無症状であることが多いのですが、この段階で発見できれば5年生存率は90%以上と言われています。そのためにも、大腸カメラ検査を受けることが必要なのです。
編集部
大腸カメラ検査はがん予防のために重要ですね。
岩﨑先生
潰瘍性大腸炎のほか、大腸のポリープから大腸のがんに進行することもわかっています。ほとんどの大腸ポリープは大腸カメラの検査中に切除することができるので、早期がんになる一歩手前でがんを予防することが可能です。
何年に1回受ければいい? 何歳になったら受けた方がいい?
編集部
胃カメラ検査や大腸カメラ検査は、何歳になったら受けた方がいいのですか?
岩﨑先生
一般的には、がんの発症が増え始める40歳になったら、胃カメラ検査や大腸カメラ検査を受けることが推奨されています。がんは50歳から急激に増えるので、遅くとも50歳になったら受けるようにしましょう。
編集部
どれくらいの頻度で受ければいいのですか?
岩﨑先生
胃カメラ検査の場合、「過去にピロリ菌の除菌治療をした」、あるいは「親族に胃がんや食道がんの患者がいる」ケースは、金銭的な負担などがなければ1年に1回、最低でも2年に1回は受けるようにしましょう。そうでない人は、2~3年に1回受けることをおすすめします。
編集部
一方、大腸カメラ検査は何年に1回受ければいいのですか?
岩﨑先生
初回の大腸カメラ検査でポリープなど、何らかの異常が見つからなければ3~5年後に2回目を受けるのがいいと思います。もし、初回の大腸カメラ検査で何らかの異常が見つかった場合は、2~3年に1回受けるようにしましょう。
編集部
異常がなくても、定期的に受けた方がいいのですね。
岩﨑先生
はい。大腸にはヒダがあるので、一度の検査で余すところなく見るのは難しいのです。初回の検査で異常が見つからなかったとしても、もしかしたら隅々まで見えていなかっただけかもしれません。そのため、異常がなくても3~5年後にもう一度受けるようにしましょう。
編集部
もし、そのような異常が見つからなかった場合には?
岩﨑先生
例えば、大腸カメラ検査で「異常なし」という結果が出た場合でも、40歳以上の人には年一度の便潜血検査による検診を継続することが推奨されています。そのため、その結果をもとにかかりつけ医と相談し、大腸カメラ検査のタイミングを決めてもいいでしょう。一方、胃カメラ検査についても異常なしと診断された場合には、これまでの既往や家族歴などをもとにかかりつけ医と相談するといいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
岩﨑先生
多くの人は胃やお腹などに何らかの症状があるときに、胃カメラ検査や大腸カメラ検査を受けますが、実際、何の異常も見つからないということが多数です。「重大な病気かもしれない」と思って、強い不安を抱えながら検査を受けにくる人も多いのですが、あまり緊張せず、安心して検査を受けてほしいと思います。また、「以前受けたことがあるけれど、苦しかったからもう二度とやらない」と考える人も多いと思いますが、最近では検査方法も洗練されており、あまり苦痛を感じずに済む方法もあります。どんなことでも医師にご相談いただき、ぜひ検査を受けてほしいと思います。
編集部まとめ
「胃カメラや大腸カメラの検査は苦しい」というイメージを持っている人も多いと思います。また、「一度検査を受けて、異常がなかったからもう安心」というものではありません。ぜひ、胃カメラ検査と大腸カメラ検査についての理解を深め、定期的に検査を受けて本当の安心を得てほしいと思います。
医院情報
所在地 | 〒860-0068 熊本県熊本市西区上代4-13-29 |
アクセス | JR「熊本駅」 バスで20分 |
診療科目 | 内科、消化器内科 |