【最新版】内視鏡検査、前日から当日の流れ
医療技術は日進月歩であることを考えると、かつての常識が最新事情と異なることも考えられそうです。書籍やインターネットサイトは原則として、掲載時の事情が反映されます。そこで、2021年末(取材時)の内視鏡検査の流れを、「浦和消化器内視鏡クリニック」の勝山先生に解説していただきました。
監修医師:
勝山 泰志(浦和消化器内視鏡クリニック 院長)
弘前大学医学部卒業。新東京病院消化器内科副部長、共済病院消化器内科部長を経た2021年、埼玉県さいたま市に「浦和消化器内視鏡クリニック」開院。内視鏡とエコー検査の専門クリニックとして、治療後のフォローまで担う地域医療に努めている。日本内科学会認定医、日本消化器病学会認定専門医。日本内科学会会員。
【前日】食事制限は胃と大腸ともに「夜9時まで」
編集部
内視鏡検査って、前日の食事制限などがありますよね?
勝山先生
はい。胃カメラと大腸カメラのご説明をしますね。当院では、胃カメラも大腸カメラの場合も、「前日の夜9時まで」に“消化の良いお食事”を済ませていただいています。今では「検査食」という専用のメニューも普及していますね。ただし、食事制限のタイミングは、各医療機関によって差があるようです。詳しくは、検査を受ける医療機関の指示に従ってください。
編集部
医師の指示によって服用している薬がある場合は?
勝山先生
検査前でも、基本的に飲んでいただいて構いません。例えば「血圧を下げるお薬」を処方されている場合、飲まずに検査すると、検査中に血圧が上がりかねません。ただし例外もあって、「血糖を下げるお薬」の場合は、絶食での検査となるので、薬を飲むと低血糖になってしまう恐れがあり危険な場合があります。その辺は、事前に内視鏡検査を担当する先生へ相談してください。
編集部
「血をサラサラにする薬」をのんでいると、内視鏡検査ができないと聞きますが?
勝山先生
現在の主流は、「飲んでいても検査する」に傾いてきています。なぜ「血をサラサラにするお薬」がダメなのかというと、例えばポリープを発見して切除した場合、その後にポリープを切除した傷口から出血する危険性が高くなるからです。その一方で、「血をサラサラにする薬」を飲んでいる方は、心臓や脳の血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞になる危険性を下げるために飲んでいると思うのですが、内視鏡の検査を受ける際に、「血をサラサラにする薬」を止めてしまうと、心筋梗塞や脳梗塞になってしまう可能性が高くなります。内視鏡検査をするまでは、ポリープがあるかないかもわからないのに、内視鏡検査をするために「血をサラサラにする薬」を止めて検査をして、“ポリープはありませんでした。けれど脳梗塞になってしまいました”では、大変です。「血をサラサラにする薬」を飲んだ状態で、検査をしてみて万が一ポリープがあった場合は、入院の上での内視鏡治療となることが多いと思います。
編集部
飲み物の制限ってあるのでしょうか?
勝山先生
とくにありません。種や固形物が含まれていなければ、果汁系のジュースなどでも飲んでいただいて構いません。ただし、お酒は控えましょう。「万全な状態で検査するに越したことはない」ですから。セーブが効かなくなって、深酒やオツマミに手を出すこともありえるでしょう。
編集部
それです。お酒に限らず、空腹が我慢できないと食べちゃいますよね。
勝山先生
できれば、お水などで空腹感をしのいでいただきたいですね。翌朝の食事も含め、もし、なにかを食べてしまったら、正直に申告しましょう。タイミングや内容によっては、検査に差し支えのないこともあります。ただし、「中止の可能性」も頭の片隅に置いておきましょう。
【当日の検査前】大腸内視鏡検査は下剤の服用が必要
編集部
続けて当日です。まずは、胃カメラの流れからお願いします。
勝山先生
わかりました。当日の食事は抜きになります。水分は摂取していただいて構いません。お薬については前述のとおりで、医師と話し合っておきましょう。来院される時間は、検査時間の少し前で結構です。
編集部
次は、大腸カメラの流れです。
勝山先生
食事と飲み物については、胃カメラと同様です。ただし、大腸カメラには「下剤の服用」が必要です。どのタイミングで飲むのか、錠剤なのか液体なのかなどは、医療機関によってまちまちです。当院の場合は「当日に飲む液体タイプ」で進めています。ご自宅で飲むのか、来院されてから飲むのかは自宅との距離にもよります。当院のお近くにお住まいなら、リラックスできるご自宅で「検査の5時間以上前」に飲みはじめ、お腹が落ち着いた「検査の1時間前」くらいに移動していただいています。
編集部
他方、移動中の下痢が心配であれば、来院してから飲んでもいい?
勝山先生
もちろんです。もっとも、院内にスペースがあるかどうかでも変わってくると思います。検査する医院と相談してみてください。自宅で飲む場合もクリニックで飲む場合も「大腸カメラの場合、下剤を飲んで準備する時間を含めて、検査は1日がかりになる」ということです。胃カメラなら午前中で終わりますが、大腸カメラの場合はスケジュールを丸1日押さえておいてください。
【検査中・検査後】鎮静剤を使うかどうかは必要に応じて
編集部
検査がはじまったら、胃も大腸も変わりないですよね?
勝山先生
いいえ。胃カメラは口や鼻からスコープを入れ、大腸カメラはお尻からスコープを入れて観察する検査です。胃カメラも大腸カメラも場合によって痛みや苦しさを感じるかもしれません。この時、ご希望により鎮静剤を使って、「寝ている間に」検査を受けることも可能です。鎮静剤を使用する場合、お車やバイクはもちろん、自転車の運転も控えていただきます。頭がボーっとすることがあるので、高額な買い物のような「重要な決断」はその日にしないようにして下さい。
編集部
鎮静剤を、あえて使わない人っているのでしょうか?
勝山先生
いらっしゃいますよ。慣れてしまった方や、「ご自身で画像を見ながら、検査を受けたい」と考える患者さんなどです。
編集部
万が一、ポリープやがんなどが見つかった場合は?
勝山先生
切除できる大きさであれば、検査と同時に治療をします。大きさや形によっては、入院での治療が必要になることもあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
勝山先生
40歳を過ぎて“内視鏡検査を受けたことがない方”がいらっしゃったら、一度は検査してみましょう。とくに大腸のがんは自覚が乏しいです。逆に言うと、自覚が出てからでは手遅れということも考えられます。がんは初期なら「治せる」時代になりました。ポリープのうちに発見できれば、なおさらです。ぜひ、健康で長生きするための内視鏡検査をご検討ください。
編集部まとめ
服用している薬がある場合は、内視鏡検査前に医師と相談する必要がありそうです。主訴やポリープのリスクにもよるでしょうが、飲まずに検査する場合と、あえて飲んで検査する場合に分かれるとのこと。また、検査直前は、下剤を飲むタイミングや場所について確認しておきましょう。希望があれば、かなうかどうかは別として、申告してみても良さそうです。最後は検査中の鎮静剤使用についてですが、患者側が主体になって決めることですから、あらかじめ自分の考え方をまとめておいたほうがスムーズです。
医院情報
所在地 | 〒330-0055 埼玉県さいたま市浦和区東高砂町9−1 Sumida One本館2階 |
アクセス | JR浦和駅「東口」より徒歩1分 |
診療科目 | 内視鏡内科・消化器内科・胃腸内科・肛門内科 |