

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
成年性浮腫性硬化症の概要
成年性浮腫性硬化症は、感染症などをきっかけに皮膚が厚くなり、硬くなる病気です。幅広い年齢層で起こる可能性がある病気で、感染症などの症状が先行した後に首、肩、上半身、顔の皮膚症状が広がっていきます。明確な原因は不明ですが、皮膚の下にコラーゲンと糖質が過剰にたまることで、皮膚が木のように硬くなり、指で押しても凹まなくなるのが特徴です。感染症のほか、血液疾患や糖尿病に関連して発症することもあります。
成年性浮腫性硬化症の症状は手のひらや足の裏には見られず、軽い場合は自覚症状がほとんど出ないこともありますが、重症になると皮膚の硬化で体の動きが制限されることがあります。まれに内臓にも影響することがあるため、できるだけ早い診断と適切な治療が重要です。
成年性浮腫性硬化症の原因
成年性浮腫性硬化症の原因はさまざまですが、どの場合も皮膚の下のコラーゲンが過剰に増え、ゼリー状の物質がたまることで皮膚が硬くなります。この変化を引き起こす主な要因には、感染症、血液疾患、糖尿病などがあります。
半数以上の患者では、連鎖球菌などによる感染症の症状が出た後に発症します。そのほか、B型肝炎ウイルス感染や自己免疫疾患との関連性も報告されています。
成年性浮腫性硬化症の前兆や初期症状について
成年性浮腫性硬化症の症状は、原因によってあらわれ方が異なります。感染症の後に発症する場合は、熱が出た後に皮膚の硬化が始まります。一方、血液疾患や糖尿病に関連する場合は、ゆっくりと症状が進行し、少しずつ皮膚に現れるようになります。
症状は主に首や背中の上部から始まり、初期の頃は皮膚が引き締まった感じや硬さを感じます。皮膚をつまめなくなったり、つまむとオレンジの皮のようなでこぼこした見た目になったりします。軽いかゆみや痛みを感じることもあります。
症状が進むと、肩や顎の動きが制限され、物を噛むことが難しくなる場合があります。顔に症状が出ると、幅広い表情や口や目の開閉、発話、飲み込みが難しくなることもあります。
ただし、手のひらおよび足の裏には症状ががあらわれないのが特徴です。
成年性浮腫性硬化症の検査・診断
成年性浮腫性硬化症の診断は、主に症状の特徴と皮膚の検査結果に基づいて行われます。
最も重要な検査は皮膚生検です。皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べると、皮膚の中層の繊維が厚くなっていたり、繊維の間にゼリー状の物質がたまっていたりする特徴的な変化が確認できます。
血液検査も行われ、炎症の程度や特定の細胞の増加、血液中の異常なタンパク質の有無、肝機能や血糖値の状態などを調べます。
さらに超音波検査で皮膚の厚さを測ることもあり、重症度を確かめるのに役立ちます。診断の際には、全身性強皮症などの類似した病気との区別も重要です。
成年性浮腫性硬化症の治療
成年性浮腫性硬化症に根本的な治療はなく、自然治癒するまで待つことが多いですが、数ヶ月から数年の期間がかかることがあります。また、糖尿病に合併するものは、それ以上に持続する可能性があります。そのため、治癒するまで症状を和らげるためのさまざまな治療法が実施されています。
抗生物質の投与
感染症が原因の場合は、抗生物質による治療を行います。時間とともに自然に良くなることも多いですが、治療を早く始めるほど皮膚症状の進行を抑えられる可能性があります。
ただし、すでに皮膚が硬くなってしまった部分に対しては抗生物質だけでは改善しにくく、他の治療法と組み合わせることもあります。
基礎疾患の治療
血液疾患や糖尿病などが関連している場合、基礎疾患の治療を並行して行います。糖尿病では、血糖値をコントロールする治療が実施されますが、皮膚の硬化が必ずしも改善するわけではありません。
光線療法
皮膚症状に対する治療では、多くの患者に対して、光線療法が最初に試されることが多いです。皮膚の炎症を抑え、硬化を和らげる効果が期待できます。
薬物療法
皮膚症状に対し、ステロイド薬や免疫機能を調整する薬、皮膚の硬化を和らげる薬などが使われます。効果がない場合や重症の場合は、静脈に免疫を強化する薬を投与する場合があります。
リハビリテーション
皮膚症状によって関節や皮膚の動きが制限されている場合は、リハビリテーションが実施されます。関節の可動域や動きを維持し、日常生活の質の維持・向上を目指します。
成年性浮腫性硬化症になりやすい人・予防の方法
成年性浮腫性硬化症になりやすい人は、原因によって異なります。
感染症が原因の場合は、連鎖球菌感染症に感染した子どもに発症しやすい傾向があります。糖尿病に関連している場合は、長期間血糖コントロールが悪い患者や、血管の合併症がある人で発症リスクが高くなります。
予防のためには、基礎疾患の治療と定期的な検査が重要になります。完全に予防することは難しい場合もありますが、早期発見と適切な治療により症状の進行を抑えることができます。
参考文献