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新型コロナに感染した高齢患者の退院後の死亡率、インフルより高リスクに【海外論文解説】

 公開日:2023/09/13
高齢患者の退院後の死亡率 新型コロナはインフルよりもリスク高い結果に

アメリカのベス・イスラエル・ディーコネス医療センターらの研究グループは、「新型コロナウイルスに感染した高齢者が退院後に死亡した割合について、インフルエンザよりも高い割合になった」と発表しました。この内容について、郷医師に伺いました。


郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

研究グループが発表した内容とは?

アメリカベス・イスラエル・ディーコネス医療センターらの研究グループが発表した内容について教えてください。

郷正憲医師郷先生

今回紹介する研究は、アメリカのベス・イスラエル・ディーコネス医療センターらの研究グループが実施したもので、学術誌「BMJ(British Medical Journal)」に掲載されています。研究グループは、2020年3月1日~2022年8月31日に新型コロナウイルスで入院した後に生存退院した65歳以上の88万3394人を、2018年3月1日~2019年8月31日にインフルエンザで入院後に生存退院した5万6409人と比較しました。

退院後の全死因死亡リスクを比較したところ、30日時点では新型コロナウイルスのグループで10.9%、インフルエンザのグループで3.9%となり、新型コロナウイルスの方が死亡リスクは高くなるという結果になりました。さらに、90日時点では新型コロナウイルスのグループが15.5%、インフルエンザのグループが7.1%、180日時点では新型コロナウイルスのグループが19.1%、インフルエンザのグループが10.5%となり、いずれも新型コロナウイルスのグループの方が死亡リスクが高くなりました。

再入院リスクについても検討したところ、30日時点と90日時点では新型コロナウイルスのグループの方がリスクは高くなりましたが、180日時点になるとリスクは同等という結果になりました。なお、試験期間中に新型コロナウイルスのグループでの30日死亡リスクは、17.9%から7.2%に低下していました。

今回の発表内容への受け止めは?

アメリカのベス・イスラエル・ディーコネス医療センターらの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。

郷正憲医師郷先生

これまで、入院前や入院中の状況で、新型コロナウイルスの方が明らかにインフルエンザよりも合併症発症率や死亡率が高いことが分かっていました。そして、退院後の経過についてもインフルエンザよりも新型コロナウイルスの方が状況が悪いということが今回の結果で分かりました。ただし、アメリカのデータには呼吸状態がまだ完全に回復していない状態で退院しているケースを多く含んでいる可能性もある一方、日本では最後まで病院で看取るケースが多いため、この結果についてはアメリカと日本の医療制度の違いについても考慮する必要があります。しかしながら、新型コロナウイルスに感染した後は死亡リスクが高まるという事実には変わりないので、注意が必要です。

新型コロナウイルスの高齢患者が退院後に気をつけることは?

新型コロナウイルスの高齢患者が退院してから自宅などで生活する際、気をつけるべきことがあれば教えてください。

郷正憲医師郷先生

日本では呼吸状態が改善してから退院するケースが多いため、アメリカほど警戒する必要はないと思います。しかし、一度回復しても再度呼吸状態が悪くなるケースも多々報告されています。したがって、退院後、しっかりと体調が回復するまでの間は安静にして呼吸器をはじめとして身体に負担をかけないことが重要でしょう。特に、もともと肺や心臓に持病を持っている人は無理をすることで肺に負担がかかり、呼吸障害が進行してしまう可能性があります。新型コロナウイルスに感染した後は、酸素の値がよく見えても肺の中はまだボロボロということも多くあり、少しの無理で一気に肺の負担が大きくなってしまうかもしれません。少しずつ運動量を増やしていくようにしましょう。

まとめ

アメリカのベス・イスラエル・ディーコネス医療センターらの研究グループは、「新型コロナウイルスに感染した高齢者が退院後に死亡した割合について、インフルエンザよりも高い割合になった」と発表しました。高齢者は新型コロナウイルスに感染すると重症化するリスクが高いなど注意が呼びかけられているので、今回のような情報にも留意する必要がありそうです。

原著論文はこちら
https://pmc.carenet.com/?pmid=37558240&keiro=journal

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