「熱がある時にお風呂」は大丈夫なのか?微熱・回復後の注意点も医師が解説!

熱がある時にお風呂に入っても良い?メディカルドック監修医が対処法や注意点・受診すべき症状について解説します。

監修医師:
関口 雅則(医師)
目次 -INDEX-
熱がある時にお風呂に入っても良いのか?
発熱時のお風呂問題は多くの方が悩むテーマです。体調を崩した時、「お風呂に入っても大丈夫?」「シャワーだけはOK?」といった疑問は子どもから大人まで幅広く寄せられます。ここでは、発熱時のお風呂・入浴の注意点や最適な対応を解説します。
37度台の微熱があるときのお風呂・入浴
一般的に、37度台の微熱のみで体力が保たれている場合、お風呂やシャワーは基本的に問題ありません。ただし、熱が出ている時は体が水分を失いやすく、体力の消耗も想定しやすくなります。無理して湯船に長時間浸かったり、熱めのお湯で体を温め過ぎたりすると逆に負担が増える恐れがあります。短時間のシャワーやぬるめの入浴を意識し、入浴前後には水分補給を行いましょう。
また、微熱の状態では汗を多くかくことがあります。身体を清潔に保つ目的であれば、シャワー程度で済ませるのも有効です。汗による不快感がひどければ、短めの入浴や拭き取りという方法も選択肢となります。
体温37.5度以上の発熱があるときのお風呂・入浴
37.5度以上の発熱がある時は、お風呂や入浴は控える方が安全です。高熱の場合、体力消耗が激しく、心拍数や血圧の変化で身体への負担が強まります。無理な入浴は「脱水症状」や「失神」のリスクもあるため、安静を優先しましょう。
どうしても身体の汗や不快感が気になる場合は、「体を拭く」「短時間だけのシャワー」を選び、水分補給と休息を徹底してください。脱水を防ぐため、入浴後は清涼飲料水などですぐに水分を摂るよう心がけましょう。
熱が平熱に下がったが鼻水や咳が出るときのお風呂・入浴
症状の緩和後、つまり「熱が下がった後」でも、鼻水や咳が続いている場合には注意が必要です。特に咳が激しい、呼吸が苦しい、体力が戻っていないといったケースでは無理な入浴は避けましょう。
ただし、熱が平熱近くまで下がり、体力が回復してきているのであれば、通常の長風呂でなければ短時間の入浴やシャワーは差支えありません。湯冷めや体力の消耗を避けるため、ぬるめのお湯・短時間で済ませることがポイントです。
子供が熱があるときのお風呂・入浴
子供が発熱した際は特に慎重な対応が必要です。子どもは体力消耗が早く、脱水や失神リスクも大人より高めです。発熱時に無理して入浴させず、まずは安静・水分補給を最優先としてください。また、子供の場合、発熱に伴うけいれんなどのリスクも念頭に置くべきです。
体が汗で汚れている場合や、どうしてもシャワーや清拭が必要な時は短時間で済ませるようにし、体調悪化に注意を払ってください。入浴後は子どもの体温の変化に敏感に対応し、湯冷めや不快感を防ぐ工夫をしましょう。
熱があるときはお風呂に入るよりシャワーを浴びる方が良い?
発熱時には無理をしてお風呂(湯船)に浸かるよりも、短時間で済むシャワー浴が推奨されます。発熱時、体は体温調整や免疫応答に多くのエネルギーを使っており、長時間の入浴は体力の消耗や脱水症状を招きやすいからです。シャワーであれば全身を素早く洗い流して清潔を保てるだけでなく、湯気による呼吸器の潤い効果も期待できますが、必ずぬるま湯(38℃前後)で、短時間(5~10分程度)を心がけてください。
一方、体を清潔に保つ手段にはシャワー以外に「清拭」(濡れタオルで体を拭く)という方法もあります。高熱や体力消耗が強い場合は、無理にシャワーを浴びず、全身または汗をかきやすい首・脇・背中などを優しく拭き取るだけでも十分です。これにより発汗による不快感が和らぎ、感染症予防にも繋がります。
すぐに病院へ行くべき「熱」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
熱があって「意識がもうろう」「呼吸が苦しい」「けいれん」などの症状がみられる場合は、内科・小児科へ
熱がある状態で注意すべき症状として、ぐったりしている、意識がはっきりしない、息が苦しそうである、呼吸が速かったり浅かったりする、さらに顔色が悪いといった場合は特に警戒が必要です。
また、けいれんを起こした場合や、水分が摂れず尿がほとんど出ていないなど脱水の兆候が見られる場合、さらには皮膚に発疹や紫斑が現れるといった症状も重大な疾患のサインとなります。
これらの症状が認められる場合、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症だけでなく、肺炎や急性気管支炎、尿路感染症、髄膜炎、敗血症といった重症化しやすい病気が隠れている可能性があります。
受診する際は大人であれば内科、小児の場合は小児科が基本となります。場合によっては、救急外来の受診も選択肢となります。
医療機関を受診する際には、「いつから症状があるのか」「どのような熱の出方をしているか」「発熱が続いている期間」「他に認められる症状や既往歴」などを事前にメモして持参すると、スムーズに診察を受けることができます。
また、発疹やけいれんなど急を要する症状が出現した場合には、ただちに医療機関に連絡し、迅速に受診することが大切です。
「熱」の症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「熱」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
風邪
風邪はウイルス感染によって主に上気道(鼻や喉)が炎症を起こす病気です。発熱は微熱から中等度の熱が多く、咳やくしゃみ、鼻水、喉の痛みなどの症状が現れます。ほとんどの場合、数日から1週間程度で自然に軽快しますが、安静と十分な水分補給、栄養の摂取が重要です。
市販薬による症状緩和も有効ですが、強い倦怠感、高熱が続く、呼吸が苦しくなるなどの場合は重症化の可能性もあるため医療機関の受診を考えましょう。風邪の場合は主に内科や小児科の受診が目安となります。
インフルエンザ
インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされ、突然の高熱や強い全身症状(頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感)が特徴的な病気です。喉の痛みや咳、鼻水など一般的な風邪症状も現れますが、短期間で急激に症状が進行しやすい点が特徴です。
特効薬として抗インフルエンザ薬があり、早期の服用で重症化の防止が期待できます。自宅で安静にしつつ高熱が続いたり、体力低下や呼吸困難、けいれん、意識障害などの重い症状が現れたりする場合は早めに受診しましょう。内科や小児科が主な受診先になります。
新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は発熱だけでなく、咳、強い倦怠感、嗅覚・味覚障害、呼吸苦、咽頭痛など多彩な症状が現れます。比較的初期症状は風邪に似ているものの、高齢者や基礎疾患のある方では肺炎や重症化を起こすことがあり、慎重な観察が必要です。
治療は対症療法が中心ですが、重症例では酸素投与や抗ウイルス薬の使用など専門的な治療が必要となります。高熱が続く場合や呼吸困難、強い倦怠感、意識の障害が現れた場合、速やかに医療機関を受診することが大切です。新型コロナウイルス感染症が疑われる場合は、発熱外来や感染症専門外来への受診をおすすめします。
肺炎
肺炎は主に細菌やウイルスの感染によって肺に炎症が生じる疾患です。発熱のほかに、激しい咳、膿のような痰、呼吸困難、胸の痛み、全身の倦怠感などの症状が現れます。高齢者や基礎疾患のある人では重症化しやすく、早期診断・治療が重要です。
治療は原因菌に応じた抗菌薬の投与と、十分な休息・水分・栄養摂取が基本となります。高熱や呼吸困難、意識障害など特に重い症状がみられる場合は早急な受診が必要です。肺炎が疑われる場合は主に内科を受診してください。
熱があるときにお風呂に入る場合の注意点は?
発熱時にお風呂に入りたいと感じることはあるかもしれませんが、体調が優れない中での入浴にはいくつか守るべきポイントがあります。安心して体を清潔に保つためには、無理をせず、自分の体調や症状をよく観察した上で、以下の点に注意しましょう。
入浴時間は短めにして、体を温め過ぎない
熱がある時は、長時間の入浴や熱いお湯で体を温め過ぎることは体への負担となります。お湯の温度は38℃前後のぬるめに設定し、湯船につかる場合は数分以内にとどめるのが賢明です。できるだけ手早く体を洗い終えることで、体力の消耗を最小限に抑えましょう。
入浴後は体を冷やさないようにする
入浴後は、体が一時的に温まって汗もかきやすくなっています。髪や体が濡れたままだと湯冷めしやすく、症状の悪化につながることもあるため、すぐにタオルで優しく水気を拭き取りましょう。また、着替えを事前に用意し、入浴後はできるだけ早く衣類を身につけて体を冷やさないよう注意してください。
こまめな水分補給を
発熱時や入浴中は、知らないうちにいつも以上に汗をかきやすくなっています。体から失われる水分量が増えるため、入浴前後にはコップ1杯程度の水分をこまめに摂る意識が大切です。高熱の場合は脱水症状も起こりやすいので、スポーツドリンクや経口補水液などを選ぶと良いでしょう。
無理して入浴しないこと
発熱時は想像以上に体力が消耗されている状態です。だるさが強い時や立ちくらみ、ふらつき、息苦しさ、脱水の兆候がある時は、入浴は避けて安静に過ごしてください。無理してまでお風呂に入る必要はなく、濡れタオルで体を拭くなどの代替手段でも十分清潔に保つことができます。特に子どもや高齢者の場合は慎重に判断し、体調が安定してからの入浴を検討しましょう。
「熱がある時のお風呂」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「熱がある時のお風呂」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
大人は熱があるとき、何度以下ならお風呂に入っても大丈夫でしょうか?
関口 雅則(医師)
一般的に、37度台前半で体力が保たれている場合は、短時間の入浴やシャワーであれば問題ないことが多いです。ただし、体温が37.5度を超えていたり、強い倦怠感やふらつき、脱水の兆候があったりする場合は無理に入浴するのは避けてください。自身の体調や症状をよく確認した上で判断し、少しでも不調を感じた際には無理せず安静に過ごしましょう。
風邪で熱があるとき、お風呂で髪を洗うと症状が悪化するでしょうか?
関口 雅則(医師)
風邪や微熱があるときでも、体力が保たれていれば手早く髪を洗うこと自体は大きな問題ではありません。ただし、長時間、頭や体を濡れたまま放置すると体温が奪われ、湯冷めによる症状悪化のリスクが高まります。入浴後はすぐにしっかりと髪や体を乾かし、体を冷やさないように注意してください。不安や体力の低下があるときは無理をせず、洗髪を控えるという選択も大切です。
熱がある時にしない方が良い行動はありますか?
関口 雅則(医師)
発熱時は体に大きな負担がかかっています。激しい運動や、長時間の熱い湯舟での入浴、十分な水分補給をせずに過ごすことは症状の悪化や体力消耗の原因となるため避けましょう。また、無理して普段通りの生活を続けたり、十分な休息を取らなかったりすることも回復を遅らせる要因になります。脱水症状や呼吸困難、けいれんなど危険な症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
まとめ 熱がある時のお風呂は慎重な判断を
熱がある時のお風呂については、体調やその時の症状をよく観察した上で、無理をしないことが何よりも大切です。微熱で体力に余裕がある場合には、短時間の入浴やシャワーで清潔を保つことも可能ですが、高熱や強い倦怠感がある場合には安静を優先し、入浴は控えめにしてください。
発熱中は想像以上に体力が低下していることが多く、入浴による体力消耗や脱水症状、湯冷めによる二次的な体調悪化に十分注意する必要があります。また、入浴後はしっかり体を乾かして保温し、こまめに水分補給を行いましょう。
もし、ぐったりしていたり、呼吸が苦しい、意識がもうろうとする、けいれんや発疹が現れるなど、重篤な症状がみられる場合は、入浴の可否にかかわらず、速やかに医療機関を受診してください。記事を通じて、発熱時の適切な入浴・清潔管理のポイントと、危険な症状の見極め方を参考にしていただき、ご自身やご家族の体調管理に役立ててもらえれば幸いです。
「熱」症状で考えられる病気
「熱」から医師が考えられる病気は23個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
呼吸器系の病気
- 風邪(感冒)
- インフルエンザ
- 新型コロナウイルス感染症
- 咽頭炎、扁桃炎
- 肺炎
- 気管支炎
消化器系の病気
- カンピロバクター腸炎
- ウイルス性腸炎
- 急性肝炎
婦人科系の病気
- 乳腺炎
- 子宮感染症
発熱は多くの病気や体調変化のサインとなります。症状や伴う異常、年齢や既往症によっては、早期に医療機関の受診が必要となる場合もあります。体調の変化を見逃さず、気になる症状があれば無理をせず早めに専門家に相談しましょう。
「熱」に似ている症状・関連する症状
「熱」と関連している、似ている症状は19個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
発熱は体の異常を知らせる重要なサインですが、その周囲に現れるさまざまな症状の組合せによって、考えられる疾患や緊急性は大きく変わります。体温以外にも全身状態や症状を観察し、少しでも異常を感じた場合は専門医の診断を受けてください。



