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「腎盂腎炎 (じんうじんえん)」の症状・原因について詳しく解説します!

 更新日:2023/03/27
「腎盂腎炎 (じんうじんえん)」の症状・原因について詳しく解説します!

腎臓は体にとってとても大切な臓器のひとつですが、「腎盂腎炎(じんうじんえん)」という病気があるのをご存じでしょうか。

「腎臓」は体内の血液中の老廃物をろ過して余分な塩分とともに尿として排出してくれる役割を持つ臓器で、「腎盂(じんう)」は腎臓で作られた尿を尿管へと送る部分の名称です。

腎盂腎炎とは、尿路から細菌が入り込むことによって引き起こされる感染症のことで、腎臓や腎盂、さらには体全体にまでさまざまな症状が表れることがあります。

大切な腎臓や体を守るために、病気を引き起こす原因や治療方法・対策などについて詳しく解説いたします。

工藤 孝文

監修医師
工藤 孝文(工藤内科)

プロフィールをもっと見る
みやま市工藤内科 院長・糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方治療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビ出演多数。著書は50冊以上におよび、Amazonベストセラー多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が現在人気を集めている。 
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。

腎盂腎炎の症状

発熱した女性

急性と慢性で症状が異なるのですか?

  • 腎盂腎炎になると、発熱や悪寒・背中の痛みなど、体にさまざまな症状が表れることがあります。このような症状が急激に強く表れるケースが「急性腎盂腎炎」、軽い微熱や倦怠感を慢性的に感じる程度か、もしくは全く自覚症状がないケースを「慢性腎盂腎炎」と判断します。
  • 個人によって詳細は異なることがありますが、急性腎盂炎の場合は高熱・悪寒・ふるえ・背部痛などの症状が急激に悪化し、ご自身で「病院に行かなくちゃ」と自覚されるケースがほとんどです。
  • 一方、慢性腎盂腎炎の場合は症状が急激に表れることはほとんどなく、原因不明の微熱や軽い食欲不振・腰痛などを慢性的に感じるケースや、ほとんど自覚症状がないケースもあります。

急性腎盂腎炎の症状を教えてください。

  • 急性腎盂腎炎の代表的な症状は、38度以上の急な発熱・悪寒・ふるえ・倦怠感などの全身症状や、吐き気・嘔吐などの消化器症状が見うけられます。
  • また、膀胱炎と同じような排尿時の痛み・頻尿・残尿感・尿の濁りなどや、腎臓がある(背中の下部・腰の上)あたりを軽く叩くだけで強烈な痛みを感じる場合もあります。

慢性腎盂腎炎の症状を教えてください。

  • 慢性腎盂腎炎の場合はほとんど自覚症状がない、または、軽い倦怠感や微熱・だるさ・食欲不振・吐き気・腰痛などがあるものの急激な症状ではないため見過ごされてしまうことも多いです。
  • しかし、炎症が慢性化すると腎臓の機能が低下し、腎不全などを引き起こすケースがあるため、これらの症状が原因不明で長く続き、繰り返すようであれば注意してください。

症状はいつまで続きますか?

  • 急激な症状は、治療を開始してから約2~3日ほどで改善しはじめます。
  • すべての症状が軽快する(問題ない程度まで改善する)までには、1週間程度の安静と、2週間(14日間)の抗生物質の投与が必要です。
  • もし、なんらかの理由で回復が遅れ、また症状を繰り返すようであれば、精密検査を行ってさらに詳しく調べる必要があります。症状が慢性化していて、ついつい放っておいてしまう状況が続くと、細菌が血液に乗って全身をめぐり重症化する恐れがあるため注意が必要です。

腎盂腎炎の原因と対策

男性医師

腎盂腎炎の主な原因は何ですか?

  • 腎盂腎炎は主に細菌が尿路に侵入してしまうことによって引き起こされる感染症です。
  • 尿路に何らかの理由で細菌が侵入すると、やがて膀胱→尿管→腎盂→腎臓へと逆行して体の中を進み蔓延してしまいます。細菌は大腸菌が多く、単純性腎盂腎炎で約7割を占めており、その他、腸球菌・ブドウ球菌などの細菌も見うけられることがあります。
  • その他、病気の所見では尿が出にくくなる前立腺肥大や尿路結石などや、糖尿病などの免疫力が低下する病気も引き金となる場合があるため、このような疾病をお持ちの方は十分注意が必要です。

女性は腎盂腎炎にかかりやすいと聞きましたが…。

  • 女性は男性に比べて尿路が短いことや、膣や肛門が尿道に近いことなどの理由により、細菌が体内に入りやすいと考えられていることは確かです。
  • これらは、陰部を清潔に保つことや、生理用ナプキンをこまめに取り換える・排便の際は膣側から肛門の方へ向かって拭くことなどで回避できる可能性がありますから、ぜひ心がけてみてください。
  • また、妊娠中にはお腹が大きくなって尿路が圧迫され、尿が出にくくなることによって発症してしまうケースも見うけられますので注意が必要です。

腎盂腎炎の前兆や、取るべき対策はありますか?

  • 前兆として考えられるのは、発熱・悪寒・ふるえ・背中や腰の痛みなどや、膀胱炎の症状にみられるような排尿時の痛み・頻尿・残尿感・尿の濁りなどがあります。これらの症状が急激に強く起こる、または原因不明に繰り返すようであれば注意しましょう。
  • 取るべき対策として尿をため込まない生活習慣をつけることが大切です。例えば、なるべく尿を我慢しない・尿意がなくても時間をみて排尿を試みることや、なるべく水分をたくさんとって尿量を増やし、細菌を尿と一緒に排出することなどが有効です。
  • 生活面では、陰部を清潔に保つことや尿を我慢しないことなどを心がけてください。また病気を疑う場合はすぐに病院を受診しましょう。

腎盂腎炎にかかってしまったら

診察する男性医師

どこで、どんな検査ができますか?

  • 病院の内科・腎臓内科・泌尿器科・感染症内科などを受診して検査しましょう。もし、腎盂腎炎にかかってしまったら、すみやかに病院で受診して、発熱・悪寒・ふるえなどをともなうツラい諸症状を早期に改善させることが大切です。
  • 病院で行う検査は尿検査・血液検査・超音波(エコー)検査・腹部CT検査などです。
  • 尿検査では、細菌がいるかどうかをまず調べ、細菌がいる場合は菌の種類と抗菌薬の種類を見極めます。血液検査では、血液に炎症が起きているかどうか・腎臓の機能が悪くなっているかどうか・合併症の有無などを調べます。また、超音波(エコー)検査・腹部CT検査では、尿路の妨げとなる尿管結石などの所見や腎臓の腫れや炎症が起きているかどうかなどを調べることが必要です。

どのような治療方法がありますか?

  • 治療法は、主に抗菌薬による治療が有効で、抗菌薬は口から摂取する経口抗生物質や、点滴による抗生物質の投与という方法です。
  • 軽傷の場合は経口抗生物質による治療と、十分な水分補給を行って尿量を増やし、細菌を体外に排出することですみやかな改善が見込めます。
  • 一方、全身状態が悪い重症の場合は、入院をともなう抗菌薬の点滴治療と安静、さらに1~2週間程度の経過観察および再検査が必要となります。

治療期間はどのくらいでしょうか?

  • 治療期間は、およそ1週間から2週間程度の抗菌薬の投与を行います。また、抗菌薬の投与が終了した後も一定期間、感染症状の再発を調べるために1~2週間おいて再度尿検査をすることも必要です。
  • 腎盂腎炎は早期の治療であれば、長引かせることなく比較的短期間で快方に向かわせることができます。
  • しかし、これらの治療を行っても快方しない場合は、入院してさらに詳しく検査する必要があるかもしれません。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 腎盂腎炎は、適切な治療を行えば1~2週間ほどで快方に向かいますが、せっかく体が細菌に勝とうとしているときに中途半端に服薬などを中止すると病気がぶり返してしまう可能性があります。
  • 症状が緩和されたからといってご自身の判断で治療をやめてしまうのは危険です。症状が収まってまたぶり返すという悪循環を繰り返すと、慢性化してしまう原因となるため注意しましょう。
  • たとえ症状がなくなったとしても医師から処方された抗菌薬は必ず最後まで飲み切るようにしてください。

編集部まとめ

眩しそうな女性
腎盂腎炎は、細菌が尿路に入って膀胱や尿管などを逆行し、やがて感染症を引き起こす病気だということがわかりました。

予防するためには、尿意を我慢せずにこまめに排尿すること・陰部を清潔に保つこと・水分をとって尿量を増やし細菌と一緒に排尿することなどを心がけることが大切です。

腎盂腎炎には症状が急激に強く表れる「急性腎盂腎炎」と、ほとんど自覚症状がない「慢性腎盂腎炎」という2種類があり、症状の表れ方や感じ方には個人差があります。

軽症の場合は、1~2週間ほどの抗菌薬の投与と安静によって快方に向かいますが、重症化してしまうと、細菌が血流にのって全身に広がって敗血症性ショックや急性腎不全・多臓器不全など命にかかわることもあります。

抗菌薬の効果により症状が早期に緩和しても、自己判断で服薬や通院をやめてしまうと症状がぶり返してしまうことがあるため、十分注意してください。

もし、腎盂腎炎を疑う自覚症状や長く続く慢性的な不調があったら、すみやかに病院の腎臓内科・泌尿器科・感染症内科などを受診しましょう。

この記事の監修医師