左の背中が痛い原因は何?病気の可能性は?医師が徹底解説!
左の背中が痛いとき、原因は何か心配になりますよね。ここではMedicalDoc監修医が背中の左側が痛い症状で考えられる病気や対処法・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状が続く場合は、迷わず病院を受診してください。
監修医師:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。日本認知症学会、抗加齢医学会、日本内科学会などの各会員。
「左の背中が痛い」症状で考えられる病気と対処法
怪我をしたわけでもないのに、急に左の背中が痛み出したら心配になりますよね。左の背中の痛みにはさまざま原因がありますが、心筋梗塞や膵炎などのすぐに医療機関に受診が必要な病気の可能性もあります。どのような症状の場合にどのような病気が疑われるのかを解説していきます。
左の背中が痛い症状の原因と治し方
左の背中がピリピリと痛みを感じるけれども、それ以外は症状がないことがあります。
このような場合、帯状疱疹や肋間神経痛などが疑われます。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
帯状疱疹は水ぼうそうのウイルスが、免疫力低下などの影響で再活性化することで発症する病気です。左右のどちらか片側で、帯状に水ぼうそうのような皮疹が出現して痛みが出ます。抗ウイルス薬での治療が必要になるため、皮疹などがみられるときには皮膚科や内科、脳神経内科を受診してください。
肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)
肋間神経痛は、肋骨に沿って走行する肋間神経が障害を受けることで発症する病気です。肋骨に沿ってピリピリとした痛みがでます。市販の鎮痛薬でも一時的に痛みを緩和することはできます。自然に治ることも多いのですが、痛みが強い場合には他の病気が隠れている可能性もあるため内科、脳神経内科を受診してください。
左の背中が痛くて吐き気がする症状の原因と治し方
左の背中の痛みがあるために吐き気がしたり、吐いてしまうことがあります。
このような場合、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、膵炎などが疑われます。
いずれも上腹部に痛みがでやすい病気ですが、背中に痛みが出現することもあります。痛みは胃潰瘍では食事後に、十二指腸潰瘍では空腹時に多く、膵炎では持続的に出現することが多いと言われます。
胃潰瘍(いかいよう)・十二指腸潰瘍(いじゅうにしちょうかいよう)
胃潰瘍や十二指腸潰瘍はピロリ菌の感染や薬剤(鎮痛薬であるNSAIDsなど)、ストレス、暴飲暴食などにより発症する病気です。胃や十二指腸が胃酸でダメージを受けることで発症します。重症例では、胃や十二指腸に穿孔をおこして(穴が空いて)腹膜炎(ふくまくえん)になることもあります。
膵炎(すいえん)
膵炎は多量飲酒者に多い病気ですが、膵臓に腫瘍がある場合でも発症します。膵臓はたんぱく質を分解する膵液を分泌している臓器であり、膵炎を発症すると膵臓自体を溶かす可能性があります。痛みは前傾姿勢によりやや軽減することがありますが、治療には薬物治療が必要です。重症化した場合は致命的ですので、痛みが強い場合にはすぐに消化器内科を受診してください。
背中の左上・肩甲骨の左側が痛い、左の背中が痛くて息苦しい症状の原因と治し方
左の背中、特に背中の左上、肩甲骨の左側が急激に痛くなる、突然痛みを感じて息苦しさも出現する、などの症状が当てはまります。
このような場合には、心筋梗塞や急性大動脈解離や気胸などが疑われます。
心筋梗塞(しんきんこうそく)
心筋梗塞も急性大動脈解離も典型的には激しい痛みが出現します。
急性心筋梗塞は、動脈硬化などを原因として心臓を栄養する冠動脈が閉塞することで発症します。前胸部の重苦しい痛みだけではなく左肩や左顎にも痛みが放散することがあり、動悸や脈の乱れを自覚することもあります。緊急で治療が必要な疾患なのですぐに循環器内科を受診してください。
急性大動脈解離(きゅうせいだいどうみゃくかいり)
急性大動脈解離は、大動脈という心臓から全身に血液を流す重要な血管の壁がやぶれることで発症します。大動脈解離により大動脈から分岐する血管が狭くなることで、右手と左手で血圧に違いが出ることや、脳梗塞などをおこすこともあります。致命的な病気ですので、すぐに循環器内科または心臓血管外科を受診してください。
気胸(ききょう)
一方で、気胸の痛みは上記の病気ほどの痛みではないと言われています。
気胸は、肺に穴が開くことで肺と肺を包む胸膜の間(胸腔)に空気がたまり、肺が広がりにくくなる病気です。穴が小さく軽度の気胸であれば安静のみで改善します。ただ、穴が大きく胸腔にたくさんの空気が溜まる場合には呼吸不全で命にかかわることもあります。息苦しさがある場合には、すぐに呼吸器内科を受診するようにしてください。気胸は外傷などで起きることもありますが、bullaと呼ばれる肺の上の方にできやすい空気のたまった袋が破れることでおきる自然気胸が最も多く、10-30代のやせ型の男性によく見られます。
左の背中の腰の上が痛い症状の原因と治し方
左の背中の腰の上が痛い場合には、まず尿路結石などが疑われます。
尿路結石(にょうかんけっせき)
尿路結石は尿が濃縮されるなどした際に尿の中に結石ができて、尿管に詰まることで起こる病気です。突然の強い痛みが出現し、血尿が出現することもあります。結石が移動して尿と一緒に排出されれば痛みが改善しますが、それまではとても強い痛みが出ることが多いです。市販の鎮痛薬では一時しのぎに過ぎないことが多いため、痛みが強い場合には内科や泌尿器科を受診しましょう。
息を吸う、咳をすると左の背中が痛い症状の原因と治し方
大きく呼吸したときや咳をしたときに左の背中に痛みを感じることがあります。
このような場合には、肋骨骨折や胸膜炎が疑われます。
肋骨骨折(ろっこつこっせつ)
肋骨骨折は転倒などの外傷だけではなく、激しい咳嗽などが原因となることがあり、骨折した部分に痛みが出現します。痛みを和らげるには深呼吸や咳を控えたり、胸が大きく動かないように固定(さらしを巻くなど)したり、市販の痛み止めを飲むなどが有効です。痛みが強い時や長引くときには整形外科を受診しましょう。
胸膜炎(きょうまくえん)
胸膜炎は、肺を取り囲む胸膜に炎症を起こす疾患で、感染症や悪性腫瘍により発症することが多く、胸痛や背部痛、息苦しさなどの症状がみられます。鎮痛薬で痛みは軽減しますが、胸膜炎の原因が感染症であれば抗生剤での治療が、悪性腫瘍であれば原疾患の治療が必要になることから、早めに呼吸器内科を受診することが勧められます。
すぐに病院へ行くべき「左の背中が痛い」症状・関連症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
痛みが移動する場合は、循環器内科へ
急性大動脈解離(きゅうせいだいどうみゃくかいり)は、心臓からの血液を全身に送る大動脈という血管の壁がやぶれて発症します。痛みの位置が上下に移動することが特徴です。大動脈が破裂した場合には致命的であるため、すぐに救急病院を受診しましょう。
「左の背中が痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「左の背中が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)
急性心筋梗塞は、心臓を栄養する冠動脈が詰まってしまうことで発症します。前胸部の重苦しい痛みが典型的ですが、左肩や左顎、左背部にも痛みが放散することもあります。すぐに救急病院を受診しましょう。
「左の背中が痛い」症状を和らげるストレッチ・生活習慣
日常的に事務作業をしている方の場合には、肩の筋肉や背中から首にかけての筋肉が凝り固まることで痛みが出ることもあります。そのような場合には肩を回す、肩甲骨を動かすように組んだ手を前や後ろに出すなどのストレッチが有効な場合があります。また、同じ姿勢を長時間取らないようにパソコン作業中も30分~1時間に1回は席を立って伸びをする、マッサージをするなどが効果的です。軽い運動やマッサージにより2~3か月程度で症状が改善することがあります。
「左の背中が痛い」ときに飲んでも良い・塗っても良い市販薬は?
痛みの性質にもよりますが、痛みを抑える目的でロキソプロフェンを有効成分とした解熱鎮痛薬などは使用しても問題ありません。しかし、漫然と服用を続けると、胃潰瘍や薬物乱用性頭痛のリスクとなるため注意が必要です。症状が緩和した場合にも、痛みが改善しない場合には、医療機関を受診することを検討しましょう。
「左の背中が痛い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「左の背中が痛い」症状についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
左の背中が痛い症状は膵臓や肝臓と関係がありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
左の背中の痛みと膵臓は関係ありますが、肝臓は関係ありません。
膵臓は、体の真ん中から左側へ広がる臓器であり、膵炎などで左の背中が痛くなることがあります。肝臓は体の右側にある臓器なので、左の背中が痛くなることはありません。
ストレスは左の背中が痛い症状に影響しますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
ストレスや気分の落ち込みにより左の背中が痛くなることがあります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの内臓の病気でも左の背中の痛みが出ることがありますので、痛みの原因となる病気の検査を行った上で、異常が見つからない場合に、ストレスなどの精神的な要因による痛みと診断されることになります。
まとめ
左の背中の痛みは肺、心臓、膵臓、腎臓、胃、十二指腸とさまざまな臓器が原因となります。また肩から背部にかけての筋肉痛や肋骨骨折など、筋骨格系の異常でも痛みが出ます。痛みに関しては市販の痛み止めである程度の症状の改善がえられますが、左の背中の痛みの原因には、命にかかわる病気も含まれます。痛みが強い場合や呼吸困難感や動悸、痛みの位置の移動などがみられた時には、医療機関を受診してください。
「左の背中が痛い」で考えられる病気と特徴
「左の背中が痛い」から医師が考えられる病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
背中を中心に首や肩などは筋骨格系の異常としてコリや神経痛、怪我などの病気が多く見られます。腹部臓器の病気でも痛みが出現することはあります。
「左の背中が痛い」と関連のある症状
「左の背中が痛い」症状と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
内臓疾患でも放散する痛みが出ることもありますが、首や肩、背中などは筋骨格系の異常としてコリや神経痛、怪我などによる影響が考えやすくなります。痛みの性状などによって疑う病気は異なります。
・日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=32
https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/disease_qa/disease_g04.pdf
・日本臨床検査医学会 胃十二指腸潰瘍
https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/152.pdf
・急性膵炎ガイドライン2015
http://www.suizou.org/APCGL2010/APCGL2015.pdf
・急性冠症候群ガイドライン:
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_kimura.pdf
・尿路結石症診療 ガイドライン