「耳たぶにしこり」ができる原因をご存知ですか?医師が徹底解説!
耳たぶにしこりがある時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
「耳たぶのしこり」で考えられる病気と対処法
日常生活において、何気なく自分の耳や耳の下などを触っていて、できものを発見することがあります。
痛みなどの症状がなければそのまま放置することもあるかもしれませんが、なかには徐々にできものや病変部が大きくなって耳の患部が硬くなる、あるいは強い痛みや異臭などの症状が現れることも経験します。
今回は、耳そのもの、あるいは耳周囲にできる代表的な病変の症状や治し方などを中心に解説していきます。
痛くない耳たぶのしこりができる症状で考えられる原因と治し方
痛くない耳たぶのしこりができる症状で考えられる原因疾患としては、「肉芽(にくげ)やケロイド」が挙げられます。
なんらかの外傷や慢性中耳炎に伴う炎症などがきっかけになって、耳たぶの皮膚組織が傷ついたのち、組織を修復しようとする過程でできるものが肉芽です。
また、肉芽の傷跡が受傷後数か月して盛り上がって「ケロイド」という病変に変化することがあり、ケロイドは傷の治癒する過程が過剰に引き起こされている状態と認識されています。
最近よく聞かれるのは、ピアスホールに由来するケロイドであり、美容やファッションのために作成した耳の穴が結果的に耳たぶのしこりとなって残り、耳が変形する原因になることが考えられます。
肉芽やケロイドの治療法は、患部の大きさ、数、部位などを考慮して様子をみる場合も多いですが、手術する際には、通常の切除縫合や皮弁形成術など高度な手術処置を必要とする可能性があります。
心配であれば、耳鼻咽喉科や形成外科を受診しましょう。
耳たぶの下・付け根にしこりができる症状で考えられる原因と治し方
耳たぶの下・付け根にしこりができる症状で考えられる原因疾患としては、「リンパ節炎」が挙げられます。
特に、耳たぶの下や付け根に位置する耳下腺領域のリンパ節が腫脹する原因としては、ウイルスや細菌の感染による急性リンパ節炎などの炎症性病変や腫瘍に伴う変化が代表的であると考えられます。
急性リンパ節炎は、リンパ節腫脹の原因として頻度が高いものであり、腫脹部位においては比較的痛み症状を合併しますが、通常は抗菌薬や消炎鎮痛薬を投与することによって数週間単位で改善されると言われています。
気になる症状がある際には、耳鼻咽喉科などを受診しましょう。
耳たぶの後ろにしこりができる症状で考えられる原因と治し方
耳たぶの後ろにしこりができる症状で考えられる原因疾患としては、「外骨腫(がいこつしゅ)」が挙げられます。
耳の穴の内部は、骨部外耳道という薄い皮膚の下に骨が存在していますし、耳の後ろ部分にも骨乳様突起の構造物があります。
こうした骨に由来する「外骨腫(がいこつしゅ)」を代表とするできものが耳の穴内部や、耳の後側領域に形成されることがあり、その際には病変部は非常に硬く、触ってもびくとも動かないしこりとして認識されます。
骨が成長するにつれて、外骨腫のサイズが増大してくることもあり、患部の痛みや機能障害など症状が認められる、あるいは整容的に困っている際には手術療法で切除します。
気になる場合には、形成外科などを受診して相談しましょう。
耳たぶにしこりができて痛い症状で考えられる原因と治し方
耳たぶにしこりができて痛い症状で考えられる原因疾患としては、「耳介血腫」が挙げられます。
耳介部には、比較的薄い皮膚の下に耳介軟骨が存在しており、柔道やレスリングなどのスポーツを通じて、耳介部に強い物理的な外力が加わると皮膚と軟骨の間のスペースに血性の液体成分がたまって膨隆し、耳介血種という状態が認められることがあります。
耳介血腫に対しては、針を刺す、あるいはメスで小さく切開することで、血液成分を抜き取ってドレナージ処置を実施することもありますが、時間経過とともに再発することも多く、圧迫固定して安静を保持することが重要な観点となります。
また、耳介内部の液体成分が貯留して時間が経過すると、外表上の形態から「カリフラワー」様に耳介が変形する原因にもなりますので早めに治療対応することが重要です。
心配であれば、耳鼻咽喉科や形成外科を受診しましょう。
耳たぶにしこりができて押すと痛い症状で考えられる原因と治し方
耳たぶにしこりができて押すと痛い症状で考えられる原因疾患としては、「粉瘤(別名:アテローム)」が挙げられます。
粉瘤は、垢(あか)成分や皮膚の皮脂成分などを始めとする老廃物が皮膚に溜まって形成される良性腫瘍であり、皮膚に認められる腫瘍性病変のなかでも発生頻度がもっとも高い所見と言われています。
粉瘤は、疲労、ストレス、睡眠不足、偏った食生活など生活習慣の乱れなどが原因となって毛穴の一部である表皮が内側にめくれて袋状の病変ができ、基本的には有意な痛み症状が乏しいことから放置する場合も多いですが、自然に治癒することはほとんどありません。
根治的に治癒するためには、患部の摘出処置など何らかの治療が必要ですので、心配であれば速やかに皮膚科を受診して、専門医に相談することを心がけましょう。
耳たぶにしこりができて、血性の赤いしこりがある症状で考えられる原因と治し方
耳たぶにしこりができて、血性の赤いしこりがある症状で考えられる原因疾患としては、「悪性リンパ腫」が挙げられます。
悪性リンパ腫は、主にホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫に分類されており、特に非ホジキンリンパ腫は、B細胞リンパ腫とT/NK細胞リンパ腫の2種類が存在します。
非ホジキンリンパ腫は、病状の進行速度によって進行が非常に遅い低悪性度のタイプから、進行が急激で早急な治療が必要な高悪性度の症例までケースバイケースです。
悪性リンパ腫の治療は悪性リンパ腫のタイプ、病期によって異なっており、多剤併用の化学療法や造血幹細胞移植を実施する際にはある程度患者さんの身体的負担に繋がります。
悪性リンパ腫の種類によっては、緩徐に進行するものがあり、その際には積極的な治療をせずに慎重に経過観察することもあります。
悪性腫瘍が全身に波及していない早期の段階では、がんに放射線を照射して病変を縮小させる放射線療法のみで治療を行う場合も経験されます。
心配であれば、血液内科など専門医療機関を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「耳たぶのしこり」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
患部の腫れや痛み症状が激しい場合は、耳鼻咽喉科へ
粉瘤自体に痛みがなく強い発赤所見もない際には、しばらく様子を観察してもよいですが、経過中に急激に炎症が悪化して、患部の腫れや痛み症状が顕著に認められる場合も想定され、こうした状況では自然に軽快することは期待できません。
症状が長引いている、あるいは一度治っても炎症を繰り返す場合には手術治療などで切除した方が、傷跡が残ることも少なく治療期間が短縮できる可能性があります。
耳にできたどんな病変でも、徐々に大きくなって痛みが強くなるようであれば、可及的速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「耳たぶのしこり」のセルフチェック法
- ・耳たぶのしこりが硬い状態の場合
- ・耳たぶのしこりが腫れている状態の場合
- ・耳たぶのしこりが痛い状態の場合
「耳たぶのしこり」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「耳たぶのしこり」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
粉瘤(ふんりゅう)
粉瘤というのは、本来であれば自然と剥脱する皮膚の垢成分である角質や皮脂が、耳たぶの皮膚の下部にある袋状の内部に貯留して形成されたできものです。
基本的には、耳たぶの皮膚に袋状の構造物が形成されて、その袋の内部に脱落した皮膚の角質や皮脂が貯留して徐々に拡大した病変を指しています。
細菌が侵入して患部が化膿すると赤く腫れあがって、痛み症状を伴うこともあります。
基本的な治療は、手術による腫瘍の切除であり、手術処置によって形成されている腫瘤を取り除くことが重要であり、症状を放置したままで自然に治癒することはほぼ無いため、腫瘤が小さい段階で耳鼻咽喉科など専門医療機関を受診することが肝要です。
リンパ節炎
リンパ節炎は、いわゆる風邪やインフルエンザなど病原体による感染を原因として、耳の下周辺に位置するリンパ節が炎症を引き起こした状態であると考えられています。
患部の腫れや発熱症状以外にも、リンパ節周囲部の耳が痛むように感じられることがあり、その際には抗菌薬と消炎鎮痛剤の内服が基本治療となりますが、時に扁桃周囲膿瘍などを合併している場合は膿瘍病変部を直接的に切開して排膿する処置が必要になります。
ケロイド
ケロイドは、傷が治癒する過程で組織の異常増殖が生じることで患部が赤く盛り上がる病気を指しています。
ケロイドは、いったん発症しても特に健康被害はありませんが、耳など目立ちやすいところにできるため、美容的などの観点から精神的な負担を強いられる場合もあります。
ケロイドは、ごく小さな傷から発生することもあり、発症するかどうかは遺伝的素因や生まれつきの体質などの要因も関与しています。
ケロイドに対する治療は、抗アレルギー薬の内服治療、皮膚の炎症を抑えるステロイドの外用薬、血流を抑えて瘢痕組織の増殖を予防する物理的な圧迫療法、外科的にケロイドを切除する治療内容が実施されることがあります。
ただし、ケロイドは治療を実際に実施しても、患部に再びケロイドが再発する場合も少なくありませんので、心配であれば皮膚科や形成外科など専門医療機関に相談しましょう。
耳下腺腫瘍
耳下腺腫瘍は、耳下腺に発生する腫瘍のことであり、疫学的な発生頻度は10万人に2人程度と比較的まれな病気です。
ほとんどは良性腫瘍であり、良性腫瘍は腫瘍が増大する速度も遅く、自覚症状が乏しい状態のままに数年単位で経過することも多いといわれています。
ただし、耳下腺の周りには、顔の筋肉を動かす、あるいは顔面の感覚を支配している顔面神経が存在して走行しているため、時に顔面神経麻痺を合併するケースもあります。
耳下腺腫瘍に対する治療は、良性、悪性問わずに原則としては、腫瘍を根本的に摘出する手術療法が推奨されます。
特に、悪性腫瘍の場合は、手術を実施した後に放射線治療や化学療法を実践することもあり、耳下腺の周囲リンパ節に転移しているケースでは、腫瘍のみならず、広範囲の組織を切除する場合もあります。
いずれにしても、心配であれば、耳鼻咽喉科など専門医療機関を受診しましょう。
「耳たぶのしこり」の正しい対処法は?
ニキビなどの皮膚疾患は、ドラッグストアなどの市販店で気軽に購入できる>テラコートリル軟膏などの薬を活用して治療することがありますが、例えば粉瘤などの腫瘍は市販薬では顕著な効果は認められません。
耳たぶにしこりがあっても赤みが強くなければ、一時的に痛み止めなどの市販薬を飲んでもいいですが、患部の疼痛症状がひどくて排膿所見がある際には市販薬だけで様子を見ずに早めに医療機関に受診しましょう。
また、患部をストレッチ、あるいはマッサージすることで、血流が良くなって感染兆候を悪化させてしまう恐れがある事にも留意しておきましょう。
耳領域の血流が改善されて、耳の症状が改善する可能性があるツボとしては、翳風(えいふう)が知られており、耳のつけ根の後ろに位置して、口を開けるとくぼむ部分が該当します。
患部の赤みや炎症所見が強い場合には、温めずに冷やして症状経過を観察することもありますが、しこりの部分を触ったり押したり潰すと二次的な感染を引き起こすリスクに繋がりますので控えましょう。
ピアスを開けている人は、何度も繰り返してピアスを刺すことで皮膚の表面の表皮成分が皮膚の真皮層に移植されることによって粉瘤やケロイド形成の原因になると言われています。
また、マスクの紐やメガネのつるの部分が耳たぶのしこりの部分に当たると、炎症が悪化したり腫瘍がこすれて巨大化したり出血することも危惧されるので出来る限り回避してください。
患部の痛みが強い、赤く腫れて膿が認められる場合には、早期的に治癒を目指して早めに耳鼻咽喉科など専門医療機関へ行って相談しましょう。
「耳たぶにしこり」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「耳たぶにしこり」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
耳たぶの中にできたしこりは何科の病院で相談できますか?
甲斐沼 孟(医師)
粉瘤や耳介血腫などが考えられますので、耳鼻咽喉科や皮膚科、形成外科などを受診しましょう。
耳たぶにしこりができたり消えたりするのは病気のサインですか?
甲斐沼 孟(医師)
耳たぶにしこりが現れたり、消失するのは粉瘤の可能性があり、通常放置しても自然軽快しませんので、専門医療機関に相談するようにしましょう。
耳たぶにしこりができて押すと痛いのは、危険な状態ですか?
甲斐沼 孟(医師)
耳たぶにしこりができて押すと痛い症状で考えられる原因疾患としては、「粉瘤(別名:アテローム)」が考えられます。すぐに命に係わる状態でありませんが、様子を見ていても治らないことがほとんどですので、皮膚科などに相談しましょう。
生まれつき耳たぶにあるしこりは放置して問題ないでしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
耳の穴の前側などに皮膚におおわれたイボ状のできものが生まれつき認められる場合には、副耳が考えられ、それに伴う症状はほとんどありませんが、患部が目立って美容的な理由で外科的な治療を実施されることもあります。
耳たぶにしこりができたらピアスを塞いだ方が良いですか?
甲斐沼 孟(医師)
ピアスの孔をあけると、時に耳たぶにしこりができることがありますが、耳たぶに万が一しこりができた場合には、粉瘤とケロイドが原因である場合が多いといわれています。ピアスを塞ぐだけの処置では、根治的に治癒せず、粉瘤の場合には摘出手術、ケロイドの際にはステロイド外用薬を塗布する、あるいは外科的切除手術が必要となります。
耳たぶのしこりに黒い点がある理由は何ですか?
甲斐沼 孟(医師)
耳たぶのしこりに黒い点がある場合には、粉瘤の存在を疑います。
粉瘤の特徴としては、耳たぶのしこりの中央部分に開口部(黒い点)があり、しこりを強く圧迫すると、悪臭を伴う膿や物質が出てきます。時に、患部が炎症所見を伴って大きくなって、自然破裂する場合もあります。基本的には、粉瘤は、完全に切除しなければ再発することが多く、非常に稀ですが悪性化することもあるので、心配であれば皮膚科や形成外科を受診しましょう。
まとめ
普段、耳を触るときなどに、耳たぶにしこりが存在していることに気づくことがありますね。
しこりの外見上の様子などにもよりますが、そのままにしていても問題ないかどうか、不安になることも経験されますし、中には注意すべき病気が隠れている場合があります。
心配であれば、早めに耳鼻咽喉科など専門医療機関を受診して相談されることをお勧めします。
「耳たぶにしこり」で考えられる病気と特徴
「耳たぶのしこり」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
耳鼻咽喉科の病気
- 肉芽
- ケロイド
- リンパ節炎
- 耳介血腫
形成外科の病気
- 肉芽
- ケロイド
- 副耳
- 外骨腫
- 耳介血腫
皮膚科の病気
そのまま放置しておくこともあるかもしれませんが、痛みや腫れが悪化している場合には受診をした方が良いでしょう。
「耳たぶにしこり」と関連のある症状
「耳たぶのしこり」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「耳たぶのしこり」症状の他に、これらの症状がある場合「粉瘤(別名:アテローム)」「耳介血腫」「外骨種」「肉芽」「ケロイド」「リンパ節炎」などの疾患の可能性が考えられます。複数の症状が併発している場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
・頸部の腫れ・腫瘍(一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会HP)