「言葉が出てこない」原因とは?上手く話せない症状や病気も医師が解説!
言葉が出てこない時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。日本認知症学会、抗加齢医学会、日本内科学会などの各会員。
「言葉が出てこない」症状で考えられる病気と対処法
緊張して思ったように言葉が出てこなかった経験は誰しもあると思います。言葉が思うように出ないと困りますよね。言葉が出てこないという症状の中には、全く何も話せないという症状から、声は出るけれども何を言っているかわからないまでいろいろなものが含まれます。ここでは言葉が出ない時にどのような病気が考えられるかについてご紹介します。
言葉が出てこない症状で考えられる原因と治し方
声を出すことはできるものの、話している内容や自身の状況が理解できず、物の名前が言えない、意味をなさない内容を話すなどの症状を指します。このような場合、感覚性失語が疑われます。感覚性失語の原因は脳梗塞や脳出血が疑われるため、このような症状が突然出現した場合には、すぐに脳神経内科や脳神経外科を受診してください。
言葉が出てこない・ 頭が回らない症状で考えられる原因と治し方
話はできるものの、固有名詞などが思い出せずに「あれ」や「これ」といった指示語が増えたり、理屈に合わないことを話して会話がかみ合わなかったりする症状を指します。このような場合、認知症が疑われます。
認知症には代表的なものとして、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症があり、アルツハイマー型認知症では物忘れが目立ち、レビー小体型認知症では幻覚が見えることが多く、前頭側頭型認知症では欲求に忠実に行動してしまい規律が守れなくなります。
どれも進行性の認知機能低下で症状の改善は困難ですが、他人と積極的に交流したり、パズルを解いたりと頭を使うことで認知機能の維持を目指すことができます。徐々に進行する場合には緊急性はありませんが、脳梗塞などで急激に認知機能が悪化する場合があり、その際はすぐに脳神経内科を受診してください。
言葉が出てこない・上手く話せない症状で考えられる原因と治し方
話すことはできるけども、呂律がまわらずうまく話せない症状を指します。このような場合、構音障害と考えられます。
構音障害
構音障害は、唇や口腔内、舌などの動きが悪くなることで起こる症状で、脳梗塞や脳出血、神経変性疾患(パーキンソン病や脊髄小脳変性症など)、顔面神経麻痺、顔面の外傷など原因はさまざまです。意識的に言葉を出す練習をすることで症状は改善することもありますが、原因に対する治療が必要な場合がほとんどであるため、構音障害が出現した場合にはすぐに脳神経内科を受診してください。
言葉が出てこない・どもる症状で考えられる原因と治し方
思ったことを言葉にできず、どもってしまうような症状を指します。このような場合、適応障害や運動性失語などが疑われます。
発表などの特定環境下でのみ症状がある場合には適応障害と考えられ、緊張するような状況を避けることで症状は出にくくなります。緊張感の少ない環境から徐々に状況に慣れさせる、考え方を変える(認知行動療法)ことで症状が改善することもありますが、過度な負担になりうつ状態になることもあるため注意が必要です。緊急性はありませんが、生活への支障が大きい場合には心療内科・精神科を受診してください。
状況に関係なく言葉が出しづらく、言葉を出すのに努力が必要であったり、とぎれとぎれにしか話せなかったりする場合には運動性失語と考えられます。脳梗塞や脳出血が原因である場合が多く、これらの症状が見られた場合には、すぐに脳神経内科や脳神経外科を受診してください。
20代で言葉が出てこない症状で考えられる原因と治し方
口蓋裂や脳性まひなどの先天性疾患や小児期に発症した疾患の後遺症など、それ以前から言葉が出てこない状態を除いた上で、20代で言葉が出てこなくないという症状を指します。
このような場合、酩酊、睡眠不足などの環境要因も考えられますが、適応障害や自律神経失調症、てんかん発作でも症状が現れることがあります。普段は問題なく会話できる場合には、生活リズムを整えてストレスを避けて生活することで改善することがあります。生活に支障がある場合や同様の症状を繰り返す場合には心療内科を受診してください。
なお、突然うまく話せなくなり、原因がはっきりしない場合には若年であっても脳梗塞や脳出血の可能性があります。もやもや病やファブリー病などでは若年者でも脳梗塞や脳出血を発症することがあります。環境によらずに突然発症した場合や話しにくさが続く場合には、すぐに脳神経内科を受診してください。
すぐに病院へ行くべき「言葉が出てこない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
突然言葉が出なくなった場合は、脳神経内科・脳神経外科へ
突然に言葉が上手く出せなくなる、会話が成り立たなくなる、呂律がまわらなくなるなどの症状がある場合には脳卒中(脳梗塞、脳出血)が疑われます。右半身(もしくは利き手側の半身)の麻痺やしびれを伴うこともあります。そのような症状が出現した場合には、救急車ですぐに脳神経内科や脳神経外科を受診してください。
「言葉が出てこない」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「言葉が出てこない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
脳梗塞
脳梗塞とは、脳の動脈が狭くなったり、詰まってしまったりすることで血流が不足して脳細胞が壊死してしまう病気です。喫煙、高血圧、糖尿病などによる動脈硬化や末梢血管障害、心房細動や心筋梗塞などの心疾患が原因となります。発症早期であれば血栓溶解療法や血栓回収術などの治療を行うこともありますが、基本的には脳梗塞の進行・再発予防としての抗血栓療法が治療の中心となります。
禁煙や適度な運動、バランスの取れた食事などの生活習慣の改善が発症予防として有効な場合もありますが、脳梗塞は再発しやすい病気であるため注意が必要です。突然の麻痺やしびれ、失語、構音障害などが出現した場合には、救急車ですぐに脳神経内科を受診してください。
若年性アルツハイマー
若年性アルツハイマーとは、64歳までに発症したアルツハイマー型認知症を指します。脳にアミロイドβというたんぱく質が蓄積することで発症する病気で、物忘れで発症し、進行すると家事などの普段行っている行為ができなくなる、時間や場所がわからなくなるなどの症状が出現します。非薬物療法は、集団で行う活動や話し合いへ参加することなどによる社会的な活動の強化や運動療法、音楽療法などがありますが、現時点での有効性ははっきりしていません。ドネペジルなどによる薬物療法は一定の効果が期待できるため、年齢のわりに認知機能の低下が目立つ場合には脳神経内科を受診してください。
認知症
少し前のことを忘れてしまったり、料理のレパートリーが減ったり、洗濯や掃除ができなくなったり、時間や場所がわからなくなったり、怒りっぽくなったりと物忘れの他にさまざまな社会的な活動に影響がでる病気です。
脳の変性や脳血管障害により発症し、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症などに分類されます。日常生活に支障がない場合には経過観察でよいですが、日常生活に支障がある場合には、脳神経内科または心療内科を受診してください。
失語症
失語症とは、大脳の損傷により一旦獲得された言語機能が障害されるもので、読む、書く、聞く、話すなどの言語機能が障害されて、意思疎通が難しくなります。主に脳梗塞や脳出血などの脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍などの脳損傷によって起こります。原因によって治療が異なり、医療機関での原因精査、治療が必要となるため、これらの症状が現れた場合には、すぐに脳神経内科または脳神経外科を受診して下さい。
「言葉が出てこない」ときの正しい対処法は?
プレゼンテーションの時などの緊張する場面で頭が真っ白になり言葉が出ないなど、一部のストレス環境下にいるときのみに言葉が出ない場合には、そのようなストレスを避ける、よりストレスの少ない環境から徐々に慣れていくなどが有効な場合があります。そのような対応でもよくならない場合には、心療内科への相談を検討してみましょう。
しかし、急に会話が成り立たなくなる、環境に問わず症状が続く場合には、医療機関での原因検索と治療が必要ですので、すぐに脳神経内科または脳神経外科を受診してください。受診の際には症状のわかる方に付き添ってもらい、発症した日時、発症後の経過、普段の状態、既往歴、服薬歴がわかるようにしてください。
「言葉が出てこない」症状の治療方法は?
言葉が出てこない場合には脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患、脳腫瘍、外傷などによる脳損傷、脳の変性疾患などが疑われるため、問診などによる認知機能評価や麻痺などを確認する身体診察、血液検査や画像検査(CT、MRI、SPECT)を行うことで診断します。
脳梗塞であれば抗血栓療法、脳出血であれば降圧療法や止血剤の使用、脳腫瘍であれば手術や化学療法など原因により治療は異なります。
リハビリテーションでは、物の名前を答える練習や名前を書く練習、文章を音読する練習など症状の程度に応じたリハビリテーションを行います。言葉が出なくなる病気は脳血管疾患で発症することが多く、高血圧や高コレステロール血症などの生活習慣病の予防や禁煙、節酒が予防となります。
バランスの取れた食事や適度な運動などを行い、必要に応じて薬物療法なども受けましょう。
「言葉が出てこない」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「言葉が出てこない」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
急に話を振られて、とっさに言葉が出てこないのは何かの病気でしょうか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
突然のことでとっさに言葉が出てこないのは健常者でもみられます。今まではできていたにも関わらず出来ないことが繰り返される場合には、初期の認知症や適応障害などの精神疾患の可能性があります。
言葉が出てこないのはストレスやうつ病、適応障害が原因でしょうか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
過度なストレスは言葉が出なくなってしまう要因のひとつです。適応障害やうつ病などにより口数が少なくなったり、人前などで発語ができなくなったりします。強いストレスを受けた時に発症する、ストレスを受け続けて少しずつ言葉が出にくくなるのであればストレスによる症状が疑われますが、脳血管障害や脳腫瘍などが隠れている可能性があるため、急に言葉が出なくなったり、症状が続いたりする場合には、脳神経内科や心療内科を受診して下さい。
最近頭が回らずすぐに言葉が出てこないのですが、何か対策はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
集団で行う活動に参加したり、話し合いを日常的に行ったりすることで、言葉が出やすくなることがあります。社会人サークルへの参加など積極的に集団での活動に参加するとよいでしょう。
まとめ
言葉が出なくなることは過度なストレスなどの環境要因、適応障害などの精神疾患でも起こることがありますが、脳血管障害や認知症、脳腫瘍などでも起こります。急に意思疎通が困難になる、認知機能低下が進む場合には脳卒中の可能性があるため、すぐに脳神経内科または脳神経外科を受診してください。
「言葉が出てこない」で考えられる病気と特徴
「言葉が出てこない」から医師が考えられる病気は17個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
一時的なものであれば健常者でも見られる症状ですが、症状が出現してからなかなか改善しない場合には何らかの病気を発症している可能性がありますので受診しましょう。
「言葉が出てこない」と関連のある症状
「言葉が出てこない」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 吃音
- 低血糖
- 呂律が回らない
- 物の名前などがわからない
- 声が出せない
「言葉が出てこない」他に、これらの症状が見られる際は、「脳梗塞」「認知症」「適応障害」「うつ病」などの病気の存在が疑われます。
複数の症状がある場合やなかなか治らない場合は、早めに医療機関への受診を検討しましょう。
・認知症(厚生労働省)