「食べたらすぐ下痢」を催す原因・対処法はご存知ですか?医師が徹底解説!
食べたらすぐ下痢になるとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
「食べたらすぐ下痢になる」症状で考えられる病気と対処法
日々の生活で食事を摂取すればすぐに下痢症状が出現することはありませんか。
今回は、そのような場合に考えられる病気やその対処法などを中心に解説していきます。
食べたらすぐ下痢になる症状で考えられる原因と対処法
食べたらすぐ下痢になる症状で考えられる原因疾患として、「乳糖不耐症」が挙げられます。
乳糖不耐症とは、乳糖を分解するためのラクターゼと呼ばれる酵素が先天的に不足している、あるいは機能が低下することで乳糖を消化吸収できずに下痢症状などを引き起こす病気です。
ラクターゼが生まれつき不足していることによって引き起こされる乳糖不耐症はある遺伝子の異常が原因であることが分かっているため、できるだけ早く診断をして、乳幼児の場合には無乳糖ミルクに切り替えるなどの対処が必要となります。
心配であれば、小児科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
食べたらすぐ下痢になるのが続く症状で考えられる原因と対処法
食べたらすぐ下痢になるのが続く症状で考えられる原因疾患として、「過敏性腸症候群」が挙げられます。
腸管に明らかな炎症や潰瘍などの病変がないのに、腹痛や腹部不快感に下痢や便秘を伴う症状が続く病気を過敏性腸症候群と呼んでいます。
血液検査や内視鏡検査でも顕著な異常が見つからず、日々のストレスで腹部症状が悪化することから心身症のひとつとして認識されています。
過敏性腸症候群は、人口の約15%程度に認められるとされており、そのなかでも特に女性に引き起こされやすい疾患であると認識されていて、年齢を重ねるごとに罹患頻度は減少していくことが判明しています。
腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘などをくり返す病気が過敏性腸症候群ですが、これはストレスを受けやすい20〜40歳代に特に多くみられて、過労や睡眠不足、不規則な食生活や不規則な排便などが誘因となることが知られています。
ストレスや緊張によって自律神経が乱れると、腸管にけいれんが起きて排便のリズムが崩れることによって、下痢などの便通症状がもたらされることにも繋がります。
日々の生活のなかで緊張を感じて、不安になることがあると、腸全体の働きが影響を受けて、下痢などの症状が出現することがありますので、多大なストレスや過度の緊張などに伴って自律神経のバランスが崩れている人は過敏性腸症候群を発症しやすいと考えられます。
心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診してください。
食べたらすぐ下痢になるが腹痛はない症状で考えられる原因と対処法
食べたらすぐ下痢になるが腹痛はない症状で考えられる原因疾患として、「ストレスに伴う自律神経症状」が挙げられます。
日々の生活のなかで緊張を感じて、不安になることがあると、腸全体の働きが影響を受けて、下痢などの症状が出現することがあります。
一般的に、腸の蠕動運動は自律神経によって制御されており、口から入った食べ物は胃を通って小腸、大腸と通過しながら消化、吸収された後に残った残渣物が、腸の蠕動によって直腸に運搬されて便意が起こるという流れになっています。
多大なストレスや過度の緊張などに伴って自律神経のバランスが崩れて、腸の動きが過剰に亢進すると、便内容物が腸管を通過するスピードが速くなって水分の吸収が不十分になることによって下痢症状を引き起こすと考えられています。
ストレスや緊張によって自律神経が乱れると、腸管にけいれんが起きて排便のリズムが崩れることによって、下痢などの便通症状がもたらされることにも繋がります。
規則正しい生活を送ることが重要なポイントとなります。
心配であれば、心療内科など専門医療機関を受診しましょう。
食べたらすぐ下痢になって発熱する症状で考えられる原因と対処法
食べたらすぐ下痢になって発熱する症状で考えられる原因疾患として、「胃腸炎」が挙げられます。
胃腸炎は原因となる細菌やウイルスなどの病原体が多岐に渡り、例えばロタウイルスの場合は便が白っぽく変化するなど病原体によって症状の現れ方が異なると言われています。
胃腸炎における典型的な症状としては、嘔気や嘔吐、下痢などといった消化器に関連したものが多く、下痢や嘔吐症状に伴って体内の水分が喪失して、食欲低下から十分に水分を摂取できずに脱水状態が進行して、倦怠感などの症状が見受けられます。
胃腸炎を予防する方法としては、徹底した手洗い、次亜塩素酸ナトリウムによる環境の消毒、嘔吐物や排泄物の処理の際のゴム手袋着用、食事の充分な加熱などが挙げられます。
心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診してください。
すぐに病院へ行くべき「食べたらすぐ下痢になる」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
慢性疾患に伴って下痢症状が長引く場合は、かかりつけ医へ
慢性疾患を抱えている場合には、数々の定期内服薬などを使用している場合があります。
薬は全身に影響を及ぼすため、予期しない副作用が起こる可能性が考えられ、薬によって症状は若干異なりますが、薬剤性の消化管症状として、下痢、消化管出血などが認められることもあります。
これらの薬剤の副作用としての消化器症状は、原因薬の服用を中止することで改善しますが、薬剤によっては自己判断で使用中止しないほうがよいタイプもありますので、心配になる症状を有する際には、速やかにかかりつけ医師に相談しましょう。
受診・予防の目安となる「食べたらすぐ下痢になる」ときのセルフチェック法
- ・食べたらすぐ下痢になる以外に嘔吐症状がある場合
- ・食べたらすぐ下痢になる以外に発熱症状がある場合
「食べたらすぐ下痢になる」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「食べたらすぐ下痢になる」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
過敏性腸症候群(IBS)
ストレスが発症に関連している過敏性腸症候群は、腹痛や腹部全体の不快感だけでなく下痢や便秘症状を伴う疾患であり、男性では腹痛やお腹の不快感をともなう下痢型、女性では便秘型として出現することが多いとされています。
命に直結する致命的な病気ではありませんが、電車の中などトイレのないところでは非常に困るなど生活の質を著しく悪化させます。
過敏性腸症候群を発症する原因は、はっきりとはわかっていませんが、最近の研究では、何らかのストレスが加わると、ストレスホルモンが脳下垂体から放出されて、その刺激で腸の動きが悪化して、過敏性腸症候群の典型症状が認められると考えられています。
過敏性腸症候群では、腸が刺激に対して「知覚過敏」になり、ほんの少しの痛みやストレスから、脳のストレス反応を惹起して、症状が悪循環になるという負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。
乳糖不耐症
乳糖は大腸内に水を呼び込む特性を有しているので、乳糖が大腸に流れ込むとその分下痢症状をもたらしやすくなりますし、ガスが大腸内部で大量に発生すると腹部膨満感などの症状が出現する原因となります。
このように乳糖摂取によって生じる不快な症状を「乳糖不耐症」と呼んでいます。
この状態になればヨーグルトや牛乳など乳製品を摂取することで、下痢や腹痛などの症状が認められやすくなります。
乳糖は、通常であれば乳糖分解酵素の働きによって小腸でグルコースとガラクトースに分解されて、腸管に吸収されることでエネルギーになりますが、乳糖不耐症の場合には乳糖が十分に分解されずに大腸に運搬されて、大量の水分が大腸に送られることで下痢症状が出現します。
大部分の日本人は乳糖不耐症を有するため、大量に牛乳を摂取しない方が良いと指摘されています。
乳糖の量を抑えた市販の乳飲料、あるいは乳酸菌の発酵によってもともと乳糖成分の30%程度が分解されて乳糖の含有割合が減少しているヨーグルトなどを摂取すれば牛乳などと比較して下痢が起こりにくいと言われています。
ヨーグルトや牛乳を摂取して下痢症状が頻繁に起こる場合には、自分の体質に合った商品を選ぶことも重要です。
乳幼児から症状が出現するため、心配であれば、小児科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
「食べたらすぐ下痢になる」の正しい対処法は?
症状別の対処方法と注意点としては、例えば過敏性腸症候群では日常的に溜まった過労や睡眠不足が影響するだけでなく、食事が不規則な生活が長期的に継続されると身体がストレスを感じて、腸管運動が異常に活発化して下痢などの便通異常症状を引き起こします。
これらの便通異常の症状に対して、市販薬のビオフェルミンなど整腸剤服用を含めて対症療法を活用して改善させることも一時的な対処法としては悪くありません。
しかし、根本的に腹部症状を引き起こす原因となっている日々のストレスを解消して対策を講じることが最も重要なポイントと考えられます。
腸はストレスの影響を受けやすく極めてデリケートな臓器であり、ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、腸管機能にも異常を呈して過敏性腸症候群を発症する可能性もありますので、ストレスを自分なりに上手に解消することが重要な観点となります。
過敏性腸症候群を予防する為にも、休日などは心を解放して、心身ともにリラックスするとともに、普段から十分な睡眠と休養、バランスの優れた食事、適度な運動を実践するなど、規則正しい生活を心がけて腸の調子を安定的に良好に保ちましょう。
下痢をしている際には、温かい白湯などを飲んでお腹を冷やさずに出来るだけ温めるように意識しましょう。
また、牛乳やチーズなど乳製品を摂取して常にお腹が緩く軟便、あるいは下痢になる乳糖不耐症の場合には、乳糖の含有量が少ない低乳糖牛乳を選ぶ、あるいはミルクの1回量を減らして数回に分けて飲むなど乳製品を少しずつ摂取することで乳糖が分解しやすくなって腹部症状が緩和できます。
軽度の症状であれば、用法用量を守って市販薬を使用して様子を見ていてもいいですが、症状が重症化する、あるいは合併して随伴症状が多数認められる際には、市販薬だけに頼らずに専門医療機関を受診しましょう。
早く治したい時、あるいはセルフケアや応急処置をしても症状が収まらない場合は、早急に専門医療機関を受診して相談しましょう。
「食べたらすぐ下痢になる」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「食べたらすぐ下痢になる」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
毎食後すぐに下痢をしてしまうのは病院に行くべきでしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
毎食後すぐに下痢症状を来す際には、乳糖不耐症の可能性がありますので医療機関を受診して相談しましょう。
食べたらすぐ下痢になるのですが市販の整腸薬で治りますか?
甲斐沼 孟(医師)
腸薬を服用して様子観察できますが、症状が重症化する、あるいは長引く際にはできるだけ早く専門医療機関を受診しましょう。
ストレスが原因で食べたらすぐ下痢になることはありますか?
甲斐沼 孟(医師)
ストレスや過度の緊張が原因で食べたらすぐに下痢が出現することもあります。上手にストレス発散して、緊張を緩和し、規則正しい生活を送ることによって自律神経が整って症状が改善する効果が期待できます。
食べるとすぐ下痢をして痩せていくのはお腹の病気なのでしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
食べるとすぐに下痢をするだけでなく、体重が減少して痩せていく場合には低栄養や脱水を危惧する必要がありますし、大腸がんなど腹部疾患が隠れている可能性が考えられますので、早急に専門医療機関を受診して相談しましょう。
まとめ 食べたらすぐ下痢になるのは要注意
頻繁に食後、下痢を起こす際には、過敏性腸症候群や乳糖不耐症、胃腸炎やストレスに伴う生理反応の可能性があります。
下痢そのもので亡くなることは稀ですが、下痢症状に伴って脱水症状が合併すると、体内の水分と電解質のバランスが崩れて人体の機能維持に支障をきたしますので、小まめに水分を補給して胃腸に負担の少ない食事内容を摂取しましょう。
万が一、下痢症状が長期間に渡って継続する場合には、大腸がんなど重大な疾患を見逃さないためにも、速やかに専門医療機関の医師に相談するように心がけましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。
「食べたらすぐ下痢になる」症状で考えられる病気
「食べたらすぐ下痢になる」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器内科の病気
- 過敏性腸症候群
- 胃腸炎
小児科の病気
- 乳糖不耐症
心療内科の病気
- ストレスに伴う自律神経症状
症状が続く際には、早めに医療機関を受診し相談することをお勧めします。
「食べたらすぐ下痢になる」に似ている症状・関連する症状
「食べたらすぐ下痢になる」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 発熱する
- 便秘など便通異常を伴う
- 嘔吐
- 体重が減少する
- 血便が出る
- 自律神経が乱れて睡眠障害など認める
- 下痢が続く
- 腹痛と下痢
- お腹痛くないのに下痢
- 嘔吐と下痢
- お腹が痛い
- 食べるとお腹が張る
- お腹は空くのに食べると気持ち悪い
- 少量の便 何回も出る
「食べたらすぐ下痢になる」症状の他にこれらの症状がある場合でも「過敏性腸症候群」「胃腸炎」「乳糖不耐症」「ストレスに伴う自律神経症状」などの疾患の可能性が考えられます。嘔吐や発熱などの症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。