「胃がパンパンに張る」のは「機能性ディスペプシア」が原因?医師が徹底解説!
胃がパンパンに張るのを治すには?Medical DOC監修医が対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
「胃がパンパンに張る」症状で考えられる病気と対処法
胃がパンパンに張る症状は多くの方が経験する頻度の高い症状です。原因は様々で、主に胃の病気が関わっているケースが多いですが、それ以外の消化管の影響という場合もあります。どんな場合に病院受診を行う必要があるのか解説していきます。
胃がパンパンに張る症状で考えられる原因と対処法
胃がパンパンに張る症状の場合、機能性ディスペプシアが考えられます。機能性ディスペプシアは、後に詳しく説明する胃潰瘍や腸閉塞などの疾患が無いにもかかわらず、慢性的に腹部の症状を自覚する疾患です。その症状は非常に多彩です。代表的な症状はお腹の張り、胃もたれ、吐き気、嘔吐、腹痛、食後すぐの満腹感、膨満感などがあります。
主な診療科は消化器内科、もしくは心療内科です。命にはかかわりませんが、生活の質を下げてしまう病気ですので、日常生活を満足に過ごせるように症状を抑えることが目標になります。
胃がパンパンに張って息苦しい症状で考えられる原因と対処法
胃がパンパンに張って息苦しい症状の場合、胃拡張が考えられます。胃拡張とは大量の食べ物を一度に摂取することによって、本来の胃の容量を超えた結果、胃が拡張してしまう状態のことを指します。胃は、横隔膜という胸腔(心臓や肺があるスペース)と腹腔(胃などの消化管があるスペース)を分ける膜の下に位置しており、胃拡張が起こると物理的に胸腔が圧迫され、息苦しさを感じるようになります。
落ち着かせるには、一旦食事をストップして安静にし、食物消化に努めることです。また再発予防のためには、過食を避けて満腹まで行かないように食事量を抑えることも重要です。
もし急激な腹痛を伴った場合は、緊急性が高いのですぐに医療機関を受診しましょう。診療科は消化器内科や消化器外科です。
胃がパンパンに張って痛い症状で考えられる原因と対処法
胃がパンパンに張って痛みを伴う場合、急性胃炎が疑われます。
急性胃炎は、その名の通り、胃粘膜に炎症が起きた状態です。主な症状はみぞおちの痛みや吐き気、お腹の張りなどが挙げられます。急性胃炎を長く放置しているとどんどん炎症が進行し、胃潰瘍に至っていることもあります。
主な原因としては、ストレスやアルコール、薬剤、ピロリ菌感染などがあります。
受診すべき診療科は、消化器内科です。緊急性はないため日中の受診を行いましょう。胃カメラで胃粘膜の観察を行うのが一般的です。
胃がパンパンに張ってゲップが出る症状で考えられる原因と対処法
胃がパンパンに張ってゲップが出る症状の場合、胃に多量のガスが溜まっている状態が考えられます。胃ガス貯留が増大する要因はいくつかありますが、先述の機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群、逆流性食道炎などが考えられます。
過敏性腸症候群(IBS)は、ストレス状況下で、腹痛や下痢・腹部膨満感が続き、排便によって症状が改善するという疾患です。
IBSの発生原因は腸運動機能障害や精神的な不調などが関わっているとされていますが、詳しい原因は判明していません。
ご自身で出来る対処法としては、刺激の強い食品は避けて、食物繊維が豊富な食べ物を多く摂取することが挙げられます。また睡眠・休養を十分にとり、運動習慣をつけることも有効とされています。主な診療科は心療内科、消化器内科です。社会生活を満足に送ることができる程度に、症状をコントロールすることが目標になります。緊急性はありませんので日中に受診しましょう。
胃がパンパンに張って吐き気がする症状で考えられる原因と対処法
胃がパンパンに張って吐き気がする場合、逆流性食道炎の可能性が考えられます。逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで食道が炎症を起こす病気です。胸焼けや喉の痛み、声枯れや咳などの症状が特徴的です。本来は食道と胃の境目にある食道括約筋という筋肉が胃酸の逆流を防いでいますが、この筋肉の機能低下や胃酸の分泌量が過剰になってくると逆流性食道炎につながると考えられています。
対処法としては、辛い食品やアルコール、カフェインなど刺激の強い飲食物を避けて、食事の量を少なくし、こまめに摂取することが挙げられます。また、寝る前の食事は避け、睡眠時には頭を少し高くすることも効果的です。
主な診療科は消化器内科です。緊急性はありませんが生活の質を下げる疾患ですので、適切な対応をして症状を抑えることが重要です。
便秘で胃がパンパンに張る症状で考えられる原因と対処法
便秘で胃がパンパンに張る症状の場合、腸閉塞の可能性が考えられます。
腸閉塞は、便が通っていく腸管が、腫瘍や炎症、手術後の癒着などによって通過できなくなってしまい、腸管が閉塞してしまう状態のことを指します。消化した食べ物が流れていかなくなるため、胃までパンパンに張る、吐き気がするといった症状が出現します。
このような症状が現れた際は一度消化器内科を受診し、検査を受けましょう。問診、聴診、触診や画像検査で調べることが一般的です。緊急性はありませんので日中に受診するようにしてください。
下痢で胃がパンパンに張る症状で考えられる原因と対処法
下痢を伴って胃がパンパンに張る症状の場合、急性胃腸炎の可能性が考えられます。
急性胃腸炎とは、主にウイルスや細菌による感染が原因となって、お腹の張りや腹痛、不快感、下痢が続く症状を指します。そのほかに発熱や吐き気が見られることもあります。水っぽい下痢が大量に出る場合や粘り気のある血便が少量出る場合など、様々です。
すぐにできる処置としては、経口補水液やおかゆ、バナナ、うどんなど消化に良い食べ物を摂取することが挙げられます。
口からの摂取が腹痛や吐き気で難しい場合は、医療機関を受診することを勧めます。
主な診療科は消化器内科です。緊急性はないので日中に受診するようにしてください。
食べていないのに胃がパンパンに張る症状で考えられる原因と対処法
食べていないのに胃がパンパンに張る症状の場合、上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)の可能性が考えられます。この病気は、上腸間膜動脈という消化管へ血を供給する重要な血管が何らかの理由で狭窄したり詰まったりすることで起こる疾患です。特徴的な症状はお腹の張りや腹痛、下痢、吐き気などがあります。SMAが狭窄する原因は、生まれつきの臓器の位置関係や、痩せすぎによる十二指腸の脂肪減少、手術後の癒着、寝たきりによる圧迫などが考えられていますが、詳しい機序は分かっていません。
対処法としては、栄養価の高い食事を小量ずつ摂取することが推奨されます。特に食べていない期間が続いて極端に痩せていると、この病気になる可能性は高いため、いっそう食事療法は重要となります。
主な診療科は消化器内科、消化器外科です。強い腹痛を伴う場合、緊急性は高いといえますので、出来るだけ早く医療機関を受診してください。
すぐに病院へ行くべき「胃がパンパンに張る」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
急激に増悪する腹痛がある場合は、消化器外科へ
胃がパンパンに張るだけでなく、急激にひどくなる腹痛が見られた場合、急性腹症という緊急性の高い状態が考えられます。原因としては先述の胃拡張やSMA症候群の可能性が考えられます。
受診すべきは消化器外科ですが、夜間休日の場合は高度救命救急センターの受診も検討してください。特に咳払いや歩行だけでも腹痛が激しく増す、お腹に響く場合は要注意です。すぐに受診してください。
受診・予防の目安となる「胃がパンパンに張る」ときのセルフチェック法
- ・胃がパンパンに張る以外に吐き気症状がある場合
- ・胃がパンパンに張る以外に下痢症状がある場合
- ・胃がパンパンに張る以外に腹痛症状がある場合
「胃がパンパンに張る」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「胃がパンパンに張る」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
急性胃炎
急性胃炎は、胃の粘膜に炎症が起きた状態で、突然のみぞおちの痛みや吐き気、お腹の張りなどが出現する病気です。状態がひどいものは胃潰瘍に至っていることもあります。
原因としては、ストレスやアルコール、薬剤(痛みどめや抗生物質など)、ピロリ菌感染などがあります。
主な診療科は、消化器内科です。胃潰瘍がないことを確認する意味でも上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を施行する場合が多いです。緊急性はないため日中の受診を行いましょう。
しかし、吐血している、便に黒いものが混じっている場合は胃潰瘍や胃粘膜からの出血の可能性があるため、出来るだけ早い日程で医療機関を受診しましょう。
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(IBS)は、ストレスのかかる状況になると、慢性的なお腹の痛みや下痢・お腹の張りが続き、かつ排便するとその症状が改善するという疾患です。IBSの発生原因は腸の運動機能障害や知覚過敏、精神的な不調が関わっているとされていますが、詳しい原因は分かっていません。対処法としては、高炭水化物食、脂っこい食べ物、コーヒー、アルコール、香辛料など刺激の強いものは避けて、食物繊維が豊富な食べ物を多く摂取することが挙げられます。また睡眠・休養を十分にとり、運動習慣をつけることも有効とされています。
主な診療科は心療内科、消化器内科です。社会生活を満足に送ることができる程度に、症状をコントロールすることが目標になります。消化器内科の医師による腸の状態の把握は重要ですが、ストレス負荷による精神的な不調が原因のこともありますので、カウンセリングや認知行動療法などの心理療法を行う医師の診察を受けることをお勧めします。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、症状の原因となるような器質的疾患(胃潰瘍や腸閉塞など、形としての異常)、代謝性疾患(糖尿病や甲状腺機能など、体内のホルモンの異常)、全身疾患(感染症や自己免疫疾患など)が無いにもかかわらず、慢性的に腹部の症状を自覚する疾患です。
緊急性はありませんが、生活の質を下げてしまう病気ですので、日常生活を満足に過ごせるように症状を抑えることが目標になります。主な診療科は消化器内科、もしくは心療内科です。治療としては、まず本当に症状の原因となる器質的疾患がないかの検査と、その上で対症療法を行うことが一般的です。
緊急性はありませんので日中に受診しましょう。
胃拡張
胃拡張とは、本来の胃の許容する容量を超えた食物が入ることによって、異常な大きさまで胃が拡張した状態のことを指します。胃拡張は病名ではなく、あくまで状態を表す言葉です。
胃は元々伸縮性のある臓器なので、多少多く食べたくらいでは拡張にはなりません。ただし、一度に大量に食べる(過食)習慣が続くと胃拡張に至ります。
対処法は食事量をコントロールし、適切な量を一定のペースで摂取することです。
多少のお腹の張りや違和感であれば緊急性はありませんが、急激な腹痛を伴う場合は“急性胃拡張による胃の壊死”という状態が危惧されます。この場合は速やかに医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科目は消化器内科、消化器外科です。
「胃がパンパンに張る」の正しい対処法は?
一旦自身で出来る対処法は、食事をストップして胃内容物の消化に努め、次に食べる食品も消化しやすいものを心がけることです。重篤な疾患でない場合はこの対応で、胃の中身が腸の方へスムーズに動けば、胃の張った感覚は改善します。
しかしそれでも良くならない場合はこれまでにご紹介した疾患の可能性が高いため、一度医療機関での精査をお勧めします。
「胃がパンパンに張る」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「胃がパンパンに張る」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃がパンパンに張っているときにすぐできる対処法はありますか?
中川 龍太郎(医師)
とにかく安静にして、胃の中身を消化するように努めましょう。
胃がパンパンに張っているのですが食べ過ぎでしょうか。
中川 龍太郎(医師)
過食が原因で胃拡張を引き起こしている可能性があります。食事の一回量を把握して食べすぎていないか注意しましょう。
胃にガスが溜まってパンパンに張る膨満感は胃腸の病気でしょうか?
中川 龍太郎(医師)
可能性はあります。一度受診を検討してください。
あまり食べないのにお腹が張って苦しいのは何科で相談できますか?
中川 龍太郎(医師)
消化器内科で相談できます。
生理のときに胃がパンパンに張るのは問題ないですか?
中川 龍太郎(医師)
生理の時に決まって胃がパンパンになるのであれば、消化管というより婦人科的領域の問題で、ホルモンバランスの影響が考えられます。胃腸には問題ないかもしれませんが、症状が長期間続く場合は婦人科でご相談ください。
まとめ
胃がパンパンに張る症状は、普段の生活でもよく経験する症状ですが、ただガスが溜まっていると思っていた中に重大な病気が隠れていることがあります。自然に治れば良いですが、症状が辛い場合は医療機関を受診するようにしましょう。
「胃がパンパンに張る」症状で考えられる病気
「胃がパンパンに張る」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
多くの場合には胃の病気が関与する症状ですが、食道や大腸の病気など他の消化管の病気の影響も考えられます。
「胃がパンパンに張る」に似ている症状・関連する症状
「胃がパンパンに張る」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胃が張って痛い
- 胃の張りで苦しい
- 位の張りで吐き気がする
- 胃が張る
- 食べるとお腹が張る
- お腹が張る
- すぐお腹いっぱいになる
- 快便なのにお腹が張る
- みぞおちの圧迫感で息苦しい
- ガスが溜まる
- お腹が妊婦並みに出てる
胃がパンパンに張る症状以外に、これらの症状を認める際には「急性胃炎」「機能性ディスペプシア」「過敏性腸症候群」「腸閉塞」などの可能性があります。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。