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「便が黒い」原因とは?下痢・便秘・貧血を伴う症状についても解説!

「便が黒い」原因とは?下痢・便秘・貧血を伴う症状についても解説!

便が黒い症状で、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

中川 龍太郎医師

監修医師
中川 龍太郎(医師)

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名古屋大学医学部卒業、名古屋大学医学部附属病院、江南厚生病院などで眼科医として勤務経験を持つ。患者の笑顔を見ることを何よりの喜びと思っている。日本眼科学会所属。現在は医学の発展に貢献できるよう、また目の前の患者にひたむきに向き合うため日々邁進中。

「便が黒い」症状で考えられる病気と対処法

「便が黒い」状態を、黒色便やタール便と言いますが、これは食道や胃・十二指腸といった上部消化管からの出血の可能性が考えられます。本来出血は赤色ですが、胃酸と反応して黒色に変色するためです。
以下で具体的な疾患について解説して行きます。

下痢で便が黒い症状で考えられる原因と治し方

下痢で便が黒い症状の場合、特に高齢者においてはまず内服薬の影響を疑います。もちろん後述する上部消化管からの出血の可能性はありますが、同時に多くの高齢者が、慢性的な貧血に対して、鉄剤(鉄分の薬)を内服しています。この鉄剤は便を黒くする作用があるため、出血があるのかどうか判別がつきません。また、多くの場合、高齢者は薬剤を多数内服しており、その影響で腸内細菌叢が乱れ、下痢を起こしてしまうこともあります。
受診すべき病院は、まずはかかりつけの医療機関です。内服している薬剤を整理してもらい、その上で血液検査や胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を行うのが一般的です。緊急性はないので日中に受診しましょう。

便秘で便が黒い症状で考えられる原因と治し方

便秘で便が黒い症状の場合、多くは便自体が硬くコロコロとしたものになります。このような場合は、腸内環境の乱れが原因と考えられます。
対応策としては、水分摂取と食物繊維の摂取が推奨されます。豆類やキノコ類などの食物繊維を豊富に含んだ食品を多く摂取するよう心がけましょう。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、1日18〜21g程度(性差あり)の食物繊維の摂取が推奨されています。
これらの対応策を行なっても症状が改善しない場合は、病院を受診しましょう。受診すべき診療科は消化器内科です。便の性質・状態に応じて、適切な内服薬を用いて治療されるのが一般的です。緊急性はないので日中に受診しましょう。

便が黒く腹痛がある症状で考えられる原因と治し方

便が黒く、腹痛も伴っている場合、胃潰瘍の可能性が考えられます。胃潰瘍の詳しい病態については後述しますが、胃粘膜が損傷し、腹痛や出血を起こす病気です。原因はピロリ菌感染、ストレス、薬剤性などが挙げられます。
 胃潰瘍の損傷が粘膜だけでなく血管にまで及ぶと、大出血をきたし非常に緊急性の高い状態になります。腹痛があり黒色便が見られる時点で、胃潰瘍の可能性は非常に高いですので、早急に医療機関を受診しましょう。
 受診すべき診療科は消化器内科です。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で検査、診断を行い、病気の程度によってはそのまま治療も行われることがあります。

便が黒い症状と貧血で考えられる主な原因と治し方

便が黒く、貧血が見られる場合、胃がんの可能性が考えられます。胃がんは初期では自覚症状が出現することは稀で、かなり進行してから自覚する場合も多いです。
自覚症状としては、腹痛や胃の不快感、吐き気、食欲が出ない、といったものです。また胃がんから出血することもあり、黒色便や貧血から見つかる場合もあります。
 この病気は早期発見、早期治療が重要になります。大丈夫だろうと放置せず、早めに胃がん検診やかかりつけのクリニックを受診し、血液検査や胃カメラの検査を受けましょう。もし精密検査となれば、速やかに大きな病院で検査を受け治療に取り掛かることをおすすめします。

便が黒く吐き気がする症状で考えられる原因と治し方

便が黒く吐き気がするような症状の場合、急性胃炎の可能性が疑われます。
急性胃炎は、胃の粘膜に炎症が起きた状態で、突然のみぞおちの痛みや吐き気、お腹の張りなどが出現する病気です。状態がひどいものは上述の胃潰瘍に至っていることもあります。
原因としては、ストレスやアルコール、薬剤(痛みどめや抗生物質など)、ピロリ菌感染などがあります。
主な診療科は、消化器内科です。胃潰瘍がないことを確認する意味でも上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を施行する場合が多いです。出来るだけ早い日程で医療機関を受診しましょう。

便が黒く臭い症状で考えられる原因と治し方

便が黒く臭い症状の場合、大腸がんの可能性が考えられます。一般的に大腸がんでは赤い血便がみられたり、便が細くなったり、便秘などがみられます。しかし、小腸に近い盲腸や上行結腸という部分にがんが発生すると、頻度は少ないのですが黒い便が出ることもあります。
大腸がんについて詳細は後述しますが、胃がんと同様に早期発見、早期治療が重要となる疾患です。自分の便が黒い、匂いがおかしいと感じたら、まずは病院を受診しましょう。受診すべき診療科は消化器内科です。下部消化管内視鏡検査(お尻からのカメラ)で検査、診断を行います。病変の進行度によって手術などが必要なケースなど、治療はさまざまですので、まずは早い段階で受診しましょう。

便が黒い症状とストレスで考えられる主な原因と治し方

便が黒い症状とストレスで考えられる主な原因は、先述した胃潰瘍です。強いストレスがかかると胃酸の分泌量が増加し、胃粘膜の防御機構とのバランスが崩れ、胃潰瘍発生の原因になります。
根本的な解決策は、ストレスの除去ですが、黒色便まで出現していると胃潰瘍の程度も進行しており、胃カメラで診断や治療、薬物治療も必要なケースがあります。ストレスの除去は今後の再発予防になりますので、現時点での症状への治療と並行して行なっていくべきでしょう。
受診すべき診療科は消化器内科です。できるだけ早い日程で受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「便が黒い」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

便が黒く、フラつく、目の前が真っ暗になるような症状の場合は、消化器内科へ

便が黒く、ふらつく、目の前が真っ暗になるような症状の場合、胃潰瘍や胃がん、十二指腸潰瘍などの上部消化管出血の可能性が高く、そのうえ高度貧血に陥っている可能性があります。
このような場合は非常に緊急性が高く、早急な診断と治療が必要になることがありますので、できるだけ早く医療機関を受診してください。受診すべき診療科は消化器内科です。胃カメラで検査、診断を行います。貧血の程度によっては止血処置だけでなく輸血が必要なことがあります。

受診・予防の目安となる「便が黒い」ときのセルフチェック法

  • ・便が黒い以外にふらつき症状がある場合
  • ・便が黒い以外に腹痛がある場合
  • ・便が黒い以外に吐き気症状がある場合

「便が黒い」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「便が黒い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

胃潰瘍

​​胃潰瘍とは、胃酸によって胃の粘膜が傷つけられ、痛みや出血を起こす病気です。胃酸と胃壁を守る粘液の分泌のバランスが崩れ、胃酸によって胃壁が傷つくために起こります。このバランスが崩れる原因は複数あり、特に喫煙やヘリコバクター・ピロリという細菌の感染、非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)の濫用、ストレスやアルコール過剰摂取などが挙げられます。重症の場合は胃壁全層に傷が到達し、出血や穿孔(穴があくこと)を来す場合もあります。
ご自身で出来る対処法は、まず上記の原因で心当たりのある物(喫煙やアルコールなど)を避けることです。その上で痛みが強い場合は医療機関受診を検討しましょう。
受診すべき診療科は消化器内科です。診断は胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で行います。軽症であれば内服薬で治療可能ですが、重症(出血や穿孔がある場合)では入院の上、内視鏡や手術での治療が必要になります。腹痛があり嘔吐を繰り返してしまう場合は、早めに医療機関を受診しましょう。もし吐血や黒色便、血便が見られた場合は緊急性が高いため、すぐに病院を受診してください。

十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍とは、上述の胃潰瘍と同様に、胃酸によって十二指腸粘膜が傷つけられ、痛みや出血を起こす病気です。胃潰瘍では食事中や食後に症状を自覚しやすいですが、十二指腸潰瘍では空腹時に痛むことが多いとされています。正常であれば胃と同様に、十二指腸粘膜も胃酸に対する防御機構を備えています。しかし喫煙やヘリコバクター・ピロリという細菌の感染、非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)の濫用、ストレスやアルコール過剰摂取などが原因となって、胃酸と十二指腸粘膜の防御機構のバランスが崩れてしまいます。
ご自身で出来る対処法は、胃潰瘍と同じく、まず上記の原因で心当たりのある物(喫煙やアルコールなど)を避けることです。その上で痛みが強い場合は医療機関受診を検討しましょう。
受診すべき診療科は消化器内科です。診断は胃カメラで行います。軽症であれば内服薬で治療、重症では手術での治療が必要になります。腹痛があり吐血や黒色便、血便が見られた場合は緊急性が高いため、すぐに病院を受診してください。

胃がん

胃がんは文字通り、胃粘膜に発生した悪性腫瘍のことです。初期では自覚症状が出現することは稀で、かなり進行してから自覚する場合も多いです。症状は、腹痛や胃の不快感、吐き気、食欲が出ない、といったものです。それに加えて、胃がんから出血することもあり、黒色便や貧血から見つかる場合もあります。
胃がんの発生要因として、喫煙、アルコール多量摂取、暴飲暴食、運動不足、肥満、ピロリ菌感染などが判明しています。
 対処法としては、まず上記の要因を避ける生活を心がけ、定期的な胃がん検診を受けることです。検診の内容は、問診や胃部X線検査または胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)です。検査結果が「要精密検査」となった場合は、必ず精密検査を受けましょう。精密検査では胃カメラが行われます。

大腸がん

大腸がんは、大腸から発生した悪性腫瘍のことです。その発生要因は、多くの場合生活習慣と関わりがあるとされています。
喫煙、大量の飲酒、肥満、そして女性では加工肉や赤肉の摂取により大腸がんが発生する危険性が高まる可能性が指摘されています。大腸がんの予防策としては、これらの要因を取り除くことです。つまり禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、運動、適正な体形の維持が有効です。特に運動は大腸がんの予防に効果的であることがほぼ確実とされています。
また早期発見のために検診も重要です。大腸がん検診は多くの自治体で40歳以上の方が公費負担で受けられます。検診の内容は問診と便潜血検査です。検査結果が「要精密検査」となった場合は、必ず精密検査を受けましょう。精密検査では下部消化管内視鏡検査が行われます。

「便が黒い」の正しい対処法は?

便が黒い場合、基本的には病院での検査が推奨されますので、ご自宅でできる対処法や市販薬での効果は見込めません。一方で既に発生しているであろう、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんに対して、これ以上悪化しないように対応することはできます。
まずは極端に熱いものや冷たいもの、辛いものといった刺激のある食べ物や、アルコールの摂取、喫煙を控えることがあげられます。禁煙禁酒を行い、消化に良いものを食べてください。
そしてできるだけ早い日程で医療機関を受診してください。

「便が黒い」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「便が黒い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

排便が黒くタール便なのですが何科の病院を受診すべきですか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

一般内科や消化器内科を受診してください。

食べたものが原因で便が黒くなることはありますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

イカ墨を使った料理や多量のココア、チョコレートを使用した料理を食べた後は、便が黒くなることがあります。

服用した薬が原因で便が黒くなることはありますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

鉄分を補充するための鉄剤の影響で、便が黒くなります。

まとめ

「便が黒い」症状には上部消化管出血を起こす重大な疾患が隠れていることが少なくありません。自己判断せず、医師に相談しましょう。

「便が黒い」で考えられる病気と特徴

「便が黒い」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

基本的には消化器の病気であることがほとんどですが、合併する貧血や、それに伴う心不全など、消化器の診療範囲を超えた病態に繋がることはあります。そうなる前に「便の黒さ」を自覚した時点で受診しましょう。

「便が黒い」と関連のある症状

「便が黒い」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

便が黒い症状以外に、これらの症状を認める際も「急性胃炎、胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」「胃がん」「大腸がん」などの可能性があります。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。