生理が終わらない原因は何?病気の可能性は?医師が徹底解説!
生理が長引いてなかなか終わらないとき、身体はどんなサインを発信しているのでしょうか?ここではMedicalDoc監修医が生理が終わらない症状で考えられる病気や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
楯 直晃 医師(リアラクリニック)
2015年 熊本大学病院 総合診療専門修練医
2018年 国立熊本医療センター 救急集中治療部医員
2020年 リアラクリニック名古屋院院長
2021年 メディカル・テート株式会社 CEO
救急科専門医、抗加齢医学専門医、プライマリケア認定医、内科認定医、産業医、健康スポーツ医、医療経営士、禁煙サポーター、日本産婦人科学会会員、厚労省緊急避妊研修修了、厚労省緩和ケア研修修了
「生理が終わらない」症状で考えられる病気と対処法
「生理が終わらない」「生理が終わっているはずなのに出血が続いている・・」生理のとき以外に出血(いわゆる不正出血)が起こると、何か体に異常があるのではないかと不安になりますよね。生理には、脳の下垂体から分泌される「下垂体ホルモン」と卵巣から分泌される「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の3つのホルモンが深く関わっています。女性の月経周期は、これらのホルモン分泌量の変化によって、コントロールされています。不正出血は、多量に出血する場合もあれば、おりものに少し混じる程度の量である場合もあります。血の色についても真っ赤(鮮血)や茶色など、個人差があります。不正出血の原因の多くは、ホルモンバランスの乱れによって起こる「機能性出血」です。一方で、膣・子宮・卵巣などなどの病気が原因による「器質性出血」もあります。生理が終わらない場合は、安易な自己判断はせず、早めに医療機関を受診することが大切です。
生理が長引いて終わらない症状の原因と治し方
生理が長引く要因のひとつとして、子宮筋腫が考えられます。
子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)
子宮筋腫は、子宮にできる良性のコブ(筋腫)です。最近では若年層でも増加傾向にあり、30歳以上の女性の20~30%に子宮筋腫が存在するといわれています。エストロゲンの影響により、筋腫が育つといわれています。筋腫のできる場所によって症状が変わりますが、過多月経、月経痛、不妊症や全身症状がみられます。このうち最も多い症状は、過多月経と月経痛です。子宮内部に向かって育つ筋腫のことを粘膜下筋腫といいますが、多くの場合、月経痛が強くみられ、過多月経になります。生理時の出血が多量になり、生理期間も長くなります。過多月経が習慣化することもあり、長期間に及ぶと慢性的な貧血になります。
治療は、薬物療法、手術療法などが挙げられますが、年齢や症状などによって適切な治療が選択されます。また、粘膜下筋腫は流産や不妊の原因になる可能性があるので、将来妊娠・出産を考えている方は、早めに婦人科を受診しましょう。
生理がなかなか終わらず少量の経血が続く症状の原因と治し方
生理日でないのに、少量の出血が長期間続く場合があります。
このような症状の場合、無排卵周期症などが原因として考えられます。
無排卵周期症
無排卵周期症は、卵巣は機能しているものの排卵が起きていない状態で、排卵せず出血がだらだら続きます。環境の大きな変化、それに対するストレスや、過度なダイエット・過度なスポーツなどが原因として考えられています。また、30代女性では、多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、甲状腺疾患が原因となることもあります。
治療は、長期間出血が続く場合で妊娠を希望していない場合は、ホルモン剤や低用量ピルの服用です。少量の出血のみにとどまる場合には、そのまま経過観察をすることもあります。
40代・更年期に生理が終わらない症状の原因と治し方
更年期とは、閉経の前後5年間、計10年間を指し、多くは40代半ばから始まります。
更年期になると、月経周期やホルモン値の変化で、月経不順や心身の不調が表れやすくなります。また、萎縮性膣炎、頸管ポリープ、子宮体がんなどは不正出血の原因として重要です。
萎縮性膣炎(いしゅくせい ちつえん)
萎縮性膣炎は、閉経後にエストロゲン分泌量が減ることで膣、外陰や膀胱の粘膜がただれるために発症します。この炎症により不正出血をきたします。
頸管ポリープは、子宮頸部にできるポリープのことで、40-50代に多くみられ、閉経前や閉経後の不正出血の原因となります。
子宮体がん
子宮体がんは、子宮体部の子宮内膜に発症するがんのことで、40代後半から増え始め、閉経後の50〜60代でピークを迎えます。不正出血や、血の混じったおりものなどの症状が現れます。子宮体がんによる不正出血は、早い段階からみられることがあるため40代で出血がたびたび見られる人は、子宮体がんの検査を受けましょう。
40代後半の更年期はホルモンバランスの影響で生理周期がゆらぐ時期でもあります。更年期の月経不順による不正出血と思い込んで放置せずに、必ず婦人科を受診してください。
10代に生理が終わらない症状の原因と治し方
10代で不正出血が起こる場合は、ホルモン異常などによる機能性出血の可能性が最も考えられます。病的な原因よりも、環境の変化や、ホルモンバランスが安定しない時期のため起こることが多く、若年性出血や思春期出血ともいわれます。ほとんどの場合は、成長とともに出血は止まるので、心配はいりません。しかし、出血が長期間続く場合や、貧血症状がみられる場合は、早めに婦人科を受診した方が良いでしょう。
生理痛が長引く症状の原因と治し方
生理痛は、別名「月経困難症」ともいいます。
月経困難症
月経困難症は2つに分類され、「機能性月経困難症」「器質性月経困難症」に分けられます。月経困難症の大部分は、機能性月経困難症になります。これは、生理時に分泌されるプロスタグランジンというホルモンの量が多いために、子宮が収縮しすぎて痛みを伴います。器質性月経困難症は、身体に何らかの原因疾患があって症状が現れます。その原因として、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋腫などが挙げられ、下腹部痛が起こることがあります。生理日以外に下腹部の痛みが長く続く、あるいはだんだんひどくなる場合は、早めに産婦人科を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「生理が終わらない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
出血量が多く、出血期間も長い場合は、産婦人科へ
過多月経が長期間続く場合には、貧血症状をきたす場合があります。具体的には、立ちくらみや動悸などの症状で、貧血が進行すると心臓機能の低下(心不全)につながります。
不正出血による原因はホルモンバランスによるものから、感染症によるもの、良性・悪性の腫瘍によるもの、妊娠に関連するものなどがさまざま考えられます。出血が長期間続く場合には、治療を行いながら検査を行って出血の原因を突き止めることが必要です。早めに産婦人科を受診するのが良いでしょう。
「生理が終わらない」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「生理が終わらない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
子宮頸がん
子宮の入り口となる子宮頸部に生じるがんで、数年から数十年かけて悪性化し発症します。子宮頸がんの原因の多くは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスです。性行為などにより、子宮頸部にHPVが感染します。ほとんどの場合、HPVに感染してもがん化せず自然に消失していきます。100種類以上のタイプがあるHPVの中には発がん性の高いウイルスもあります。高リスクタイプのウイルスに感染することで、がん発生のリスクが高くなります。おりものの量の増加や、性行為後の出血がみられます。
子宮腺筋症
30代後半〜40代に最も多い病気です。症状としては、過多月経、慢性骨盤痛などがみられ、月経を重ねるごとに月経痛の症状が強くなってきます。また過多月経により貧血を伴うこともあります。
性感染症
性行為に伴うクラミジア、トリコモナスや淋菌などの感染によって、子宮の入り口が炎症を起こし、出血することがあります。クラミジア感染では、不正出血以外に下腹部痛や右脇腹あたりが痛むといった症状がみられます。性感染症に伴い、卵管炎や骨盤腹膜炎を起こした場合は、不妊の原因になりますので、しっかりと検査することが必要になってきます。
「生理が終わらない」ときに飲んでも良い市販薬・気をつけたいサプリメントは?
生理が終わらず、出血が長期間にわたると貧血症状を伴うことがあります。貧血になると、動悸や息切れ、倦怠感などの全身症状がみられることがあります。出血が続いている場合、鉄分の補給が大事です。できるだけ食事から摂るように心がけ、日々の食事メニューの中にレバー・しじみ・昆布・煮干しなどの鉄分を多く含む食品を積極的に取り入れるようにしましょう。また、食べ物で補えない時には、サプリメントの力を借りる方法もあります。薬局やコンビニには鉄分を気軽に摂取できる商品がたくさん並んでいます。これらを摂取する際は、商品記載の用法・用量をよく守って摂取するようにしましょう。
「生理が終わらない」症状の治療方法は?
ホルモンバランスの乱れによる出血が少量ですぐに止まるようならば、多くの場合は経過観察となります。長期間出血が続いたり貧血症状がみられたりする場合は、症状などの患者さんの状況に合わせてホルモン剤や止血剤、漢方薬、造血剤などの薬物療法を用いて治療を行います。がんによる出血の場合には、がんに対する詳しい検査と治療が必要になります。
「生理が終わらない」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「生理が終わらない」症状についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
生理が終わらない症状と豆乳やトラネキサム酸は関係がありますか?
楯 直晃 医師
あります。大豆製品である豆乳には、イソフラボンという抗酸化成分が含まれます。
イソブラボンは、エストロゲンが足りない人はエストロゲンを補うように働き、エストロゲンが過剰な人にはエストロゲンを抑えるように作用します。イソフラボンはちょうどいいバランスにもっていく働きをする天然のエストロゲンのような成分です。止血効果のあるトラネキサム酸は、子宮内膜の出血を改善することが期待されます。しかし、血栓ができやすい方の場合、トラネキサム酸の服用により、血栓症のリスクが高ますので、注意が必要です。
産後から生理がなかなか終わらない気がします。対処法はありますか?
楯 直晃 医師
産後において出血が続いている場合、卵膜の一部や脱落膜が子宮内に残っている可能性があります。
また、完全母乳であっても女性ホルモンが分泌されつつあり、その影響を受けて、無排卵月経のような不正出血が起こることもあります。最も心配なのは、子宮頸がんなどの悪性腫瘍です。いずれにしても、一度産婦人科を受診してください。
まとめ
不正出血は、ホルモンの影響をなんらかの形で受けていることが多いです。また女性の生涯は、初経から閉経において女性ホルモンと大きな関わりを持っています。一度の出血だけなら様子を見てみようと思うこともあるかもしれません。しかし、不正出血の原因は幅広く、大きな疾患が隠れている体からのサインかもしれません。不正出血があった場合、原因を特定するためにも婦人科を受診しましょう。
「生理が終わらない」に関連する病気や症状
「生理が終わらない」症状で考えられる病気
「生理が終わらない」から医師が考えられる病気は13個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
似たような症状でも、年代によって疑われる病気は異なります。
「生理が終わらない」に似ている症状・関連する症状
「生理が終わらない」症状と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
「生理が終わらない」症状の他に、これらの症状がある場合「子宮筋腫」「多嚢胞性卵巣症候群」「高プロラクチン血症」「萎縮性膣炎」「頸管ポリープ」「子宮体がん」「月経困難症」「子宮内膜症」「子宮腺筋症」「子宮頸がん」「性感染症」などの疾患の可能性が考えられます。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。