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「黄体機能不全」とは?症状・原因・改善する食べ物も解説!医師が監修!

 更新日:2023/08/17
「黄体機能不全」とは?症状・原因・改善する食べ物も解説!医師が監修!

黄体機能不全とは女性の卵巣に関わる病気の1つです。

何らかの原因で、妊娠維持に重要な役割を果たす黄体から十分なホルモン分泌が行われない状態を指します。

黄体が担うホルモン分泌が正常に行われないと、月経周期の乱れ・不正出血が見られたり、不妊の原因になったりします

今回は女性の病気である黄体機能不全について、その原因と検査・治療方法、改善の仕方を紹介していきましょう。

前田 裕斗

監修医師
前田 裕斗(医師)

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

黄体機能不全の症状と原因

生理予定

黄体機能不全はどのような状態ですか?

  • 卵巣にある黄体という器官がうまく機能せず、月経周期の異常や不正出血を引き起こす病気です。黄体とは卵巣内で、排卵後の卵胞が変化してできる一時的な内分泌構造です。女性ホルモンであるエストロゲン・プロゲステロンを放出して、子宮内膜を厚くし、発達・保持をする役割を担っています。もし排卵後に妊娠しないと、黄体はホルモンの分泌をストップしてその役割を終え、月経時に消えてしまいます。黄体機能に異常があると女性ホルモンの中でもエストロゲン・プロゲステロンの分泌がうまくいかず、女性の月経・妊娠に影響が及ぶのです。

黄体機能不全の症状を教えてください。

  • まず挙げられるのが月経周期の短縮化や不正出血です。女性の月経周期は以下の3つに分けられています。
  • 卵胞期:月経が始まってから排卵までの期間
  • 排卵期:成熟した卵胞から卵子が排出される期間
  • 黄体期:排卵後、月経が始まるまでの期間
  • 卵胞期・黄体期はそれぞれ約14日間ありますが、黄体が作られない・機能しないという状態では、この黄体期が短くなります。結果、月経周期が短くなり、また女性ホルモンの乱れから不正出血が生じるのです。また、黄体は妊娠の維持においても大切な役割を果たします。黄体からプロゲステロンが放出されないと、受精しても受精卵がうまく着床しないなどの問題が起こりやすく不妊や習慣性流産の原因となり得ます。

黄体機能不全は何が原因で起こりますか?

  • 黄体の機能が落ちる原因は様々に指摘されており、多様な原因が考えられます。例えば脳機能について、卵巣のホルモン分泌を調整している脳の間脳視床下部、下垂体という部位が正常に働かないことが原因となることがあります。また卵巣自体がうまく機能せず、卵胞が黄体に移行できない場合や、黄体が正常にホルモンを分泌しているのに、子宮がホルモンを正常に受けとれないというケースも報告されています。 ほかに糖尿病などの全身性の疾病、飲酒・喫煙などの嗜好品、精神的ストレスでも黄体機能不全になるケースが報告されており、原因がはっきりわからないこともあります

不妊の原因になると聞きましたが・・・。

  • 黄体から放出されるプロゲステロン(黄体ホルモン)は、受精卵が子宮内膜へ着床し、妊娠を維持するのに大きな役割を果たしています。黄体機能不全によりプロゲステロンが放出されないと、受精卵の着床失敗や妊娠が維持できず早期流産などを引き起こす可能性があります。

黄体機能不全の検査と治療方法

注射

受診の目安を教えてください。

  • この病気の症状としては、黄体期が短くなることや黄体ホルモンの量が不十分になることによる月経周期の短縮化・不正出血が挙げられます。普通約14日間ある黄体期は月経周期のうち体温が高くなる高温期ですので、基礎体温を付けている方は、高温期が10日以内と短い場合に受診をおすすめします。また不正出血が見られる場合は黄体機能だけでなく、それ以外の病気が潜んでいる可能性がありますので早めに婦人科を受診してください。一方、この病気は自覚症状が少ない方も多く、不妊の検査において発覚する場合も多いです。

どのような検査がありますか?

  • 基礎体温で高温期が12日以下である・黄体期の途中で体温が下がる・高温期の体温が36.7度以下もしくは低温期との体温差が0.3度以内の時にこの病気を疑います。また、黄体期の5日~7日頃に採血を行い、血液に含まれるプロゲステロンの値も測定します。プロゲステロン値が1ml 当たり10ng未満である場合、黄体機能不全の可能性があると診断されます。ただ一度の検査で確定することは困難で、もし異常値が出た場合は、再度翌月以降に検査を行う場合もあります。

黄体機能不全の治療方法が知りたいです。

  • 排卵後のタイミングで黄体ホルモンを毎日投与します 。プロゲステロンの作用がある薬剤は、内服薬・注射での投与ができます。特に妊娠を希望している方には、排卵期から黄体ホルモン製剤の投与が必要です。この場合は妊娠後、黄体ホルモンが胎盤で生成されるようになる妊娠8~10週頃まで筋肉注射や経腟投与で続けられます。また、体質を整えるために漢方を併用することもあります。ほか特に妊娠希望がない場合の治療としては、月経周期を整えるために低用量ピルを用いることもあります。また黄体機能を活性化するために使っているのがhCGという薬です。この薬で黄体機能を刺激するという治療方法もあります。

黄体機能不全の注意点

体温計と薬

黄体機能不全は完治するのでしょうか?

  • 原因によって改善できるものと改善できないものがあります。そもそもこの病気は原因がはっきりしないことが多いのですが、タバコなどの嗜好品・極端なダイエット・精神的ストレスなどが原因と思われる場合は、嗜好品をやめたり生活を見直すことが改善に繋がるでしょう。脳機能・卵巣機能・子宮機能が原因でそれが回復できない場合の治療方法は、必要な時に黄体ホルモンを投薬や注射によって投入することです。

黄体機能不全と診断された場合、妊娠は可能なのでしょうか?

  • 排卵期から連日黄体ホルモンを投与することで妊娠は可能です。妊娠を希望する方は排卵期から妊娠8~10週頃まで、妊娠を維持し続けるために黄体ホルモンを注射などで連日投与を受ける必要があります。またこの病気の方は排卵障害など他の病気を抱えている方も多いです。産婦人科にて診察後、適切な不妊治療を受けてください。

黄体機能不全を改善する食べ物はありますか?

  • 今のところ、この病気に有効な食べ物やサプリメントは報告されていません。ただ東洋医学的には、漢方を使ってホルモンバランスを整えるようなアプローチは実践されています。こちらは黄体ホルモンを補うような直接的な考えではなく、月経期全体、ひいては女性の血のめぐりや血気不足を整えていくことで黄体期も改善させるという考え方です。月経期自体の不調を改善したい方・妊娠を急がないが黄体機能不全を抱えている方にはおすすめの方法です。

放置するリスクについて教えてください。

  • 黄体機能不全は妊娠を急がない方にとっては気づきにくいかもしれませんが、黄体ホルモンという妊娠に欠かせないホルモンの機能不全は、早めに気づくことに越したことはありません。将来妊娠時に適切な治療が受けられるほか、低用量ピル・漢方による長期的な治療アプローチで改善する場合があります。また月経以外の出血はこの病気のほか、感染症やがんなどの病気のサインである可能性があります。必ず婦人科で診てもらうようにしてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 黄体機能不全は診察も原因特定も難しい病気です。この病気に気づくためには、自分の月経周期を把握し基礎体温をつけるなど、まず自分の月経をしっかり理解することが大事です。一方でこの病気を抱えていても、適切な時期に黄体ホルモンなどの投与を受ければ妊娠・出産することができます。不妊に悩まれている方は婦人科にてこの病気のチェックを受けることをおすすめします。

編集部まとめ

お腹のケア
黄体機能不全は、黄体ホルモンが機能しない女性特有の病気です。

黄体期に適切なホルモンが放出されないことで、月経周期が極端に短くなったり、不正出血が起こったりします。

また妊娠とその維持に関して重要な役割を持つ黄体ホルモンが正常に機能しないと、妊娠できなかったり、流産を繰り返したりすることもあります。

一方で黄体機能不全は排卵期に黄体ホルモンを投与することで改善する病気です。妊娠を考えている方は、しっかりと基礎体温をつけて黄体期に異常がないかを確認しましょう。

妊娠を考えていない方には、低用量ピルや漢方で治療を行っています。早めに治療を開始することが、病気を改善させるためのポイントです。

この記事の監修医師