唇の痺れで考えられる病気・原因は?医師が徹底解説!
唇が痺れるとき、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?ここではMedicalDoc監修医が唇がしびれる症状で考えられる病気や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。日本認知症学会、抗加齢医学会、日本内科学会などの各会員。
「唇の痺れ」で考えられる病気と対処法
唇がしびれる症状でお困りになっている方も多くいらっしゃるかと思います。唇の感覚は三叉神経(さんさしんけい)という感覚の脳神経が担っているため、この神経が過敏になると唇はしびれます。唇のしびれとは、上唇や下唇の違和感や通常よりも感覚がにぶくなっている状態のことを指します。歯科治療や唇の怪我でも痺れを感じますが、それ以外の代表的な原因や病気などについて解説していきます。
唇が赤く腫れていて痺れがある症状の原因と治し方
唇が赤く腫れており、痺れや痛みを感じる、赤いぶつぶつがあるなどの症状を指します。このような場合、口唇ヘルペスなどが疑われます。
口唇ヘルペス(こうしんへるぺす)
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型というウイルス感染によって、腫れや赤いぶつぶつ(水疱)、痛みなどの症状が出現します。2週間ほどで自然に治りますが、一度ウイルス感染をすると紫外線や疲労などをきっかけに再発しやすいという特徴があります。そのため、ストレスを溜めないように日頃から気を付けることは重要です。再発を繰り返す場合には、症状が出る前に痛みやかゆみなど違和感が見られるため、早めに皮膚科などへ受診することをお勧めします。
唇と舌が痺れている症状の原因と治し方
唇と舌がどちらもしびれている場合には、三叉神経(さんさしんけい)の病気が疑われます。
唇と舌の感覚をともに司る神経は、三叉神経と呼ばれる脳神経です。三叉神経は、脳神経の中で最も太い神経で、頭蓋内で3つの枝に分かれます。1番目は額の感覚などを、2番目は頬や上唇の感覚などを、3番目は下唇や舌の感覚などを司っています。そのため、唇と舌がしびれている場合には、三叉神経の2つ目や3つ目の枝に対する損傷が起こっている状態と考えられます。
この原因は、他に出現している症状があるかどうかによってさまざま考えられます。手足の動かしづらさ(麻痺)や痺れ、喉の動きが悪い(嚥下障害)などの症状が突然出現すれば、脳卒中(脳梗塞や脳出血)などが考えられます。また、口や唇あたりにのみ違和感を感じる場合は、口内炎や口腔がんなどのような口の中のトラブルが考えられます。これらは自分で対処する方法は難しい状況が考えられますので、病院を受診しましょう。
脳卒中を疑う症状がある場合には、すぐに脳神経内科や脳神経外科を受診してください。口の中のトラブルがある場合には、歯科口腔外科を受診するのが良いでしょう。
下唇や上唇の一部のみに痺れがある症状の原因と治し方
唇全体ではなく、下唇や上唇の一部のみが痺れることもあります。これは、先ほど説明したように、下唇は、三叉神経の3番目の枝が司っており、上唇は三叉神経の2番目の枝が司っているという感覚神経の解剖学的な理由です。そのため、この三叉神経への何らかの損傷が原因と考えられます。代表的な病気として三叉神経痛が考えられます。
三叉神経痛(さんさしんけいつう)
三叉神経痛は、顔面に突然の激痛が走る病気です。顔を洗おう、ご飯を食べようとした際などに、急に数秒から数十秒の間、頬から唇にかけて痛みや痺れが生じます。市販の痛み止めは効きづらいので、刺激となる動作を可能な限り避けて、早めに脳神経内科や脳神経外科を受診しましょう。
下唇の痺れは、親知らずなどの抜歯の麻酔が残っている状態でも起こるので、しびれる原因となるエピソードが明らかであれば、様子をみていて良いでしょう。
すぐに病院へ行くべき「唇の痺れ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
突然唇がしびれて手足も動かしづらくなった場合は、脳神経内科・脳神経外科へ
手足の動かしづらさ(麻痺)やしびれ、喉の動きが悪い(嚥下障害)などの症状が突然出現すれば、脳卒中(脳梗塞や脳出血)が疑われます。脳卒中は発症してからすぐに受診して治療を受けることが重要な病気です。休日夜間問わず、すぐに救急車を呼んで救急病院を受診してください。
「唇の痺れ」が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「唇の痺れ」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
脳梗塞(のうこうそく)
脳梗塞は、脳の動脈(血管)が狭くなったり、血の塊ができたりすることによって、途絶えてしまい、その先にある脳神経の細胞が死んでしまう病気です。発症の原因は、動脈硬化によって動脈が狭くなってしまうことや、不整脈によって心臓で作られた血の塊が脳の血管の中に飛んでいき血流が途絶える状態などが挙げられます。早期の発見で静脈注射やカテーテル治療といった治療法ができる場合があります。病院へ行くべき目安は、FASTが提唱されています。F(face)は顔が左右対称でなく顔がゆがむこと、A(arm)は片側の手足が麻痺して動かなくなること、S(speech)は話すことで呂律が回らなくなること、T(time)は早い時間の受診が提唱されています。
突然起こった場合は、すぐに救急車を呼んで脳神経内科や脳神経外科のある救急病院へ受診してください。
「唇の痺れ」や違和感を和らげるには
唇の痺れや違和感を和らげるためにどんな事ができるでしょうか?唇の痺れを和らげるためには、腫れや痛みを伴うようであれば氷で冷やしてみましょう。違和感がある時に辛い物を食べる事や、無理に温めること、無理な飲酒は控えましょう。
唇がしびれるのが突然起こり、痺れが顔面の半分に起こり手足が麻痺する場合は脳梗塞の症状の場合もありますから病院に相談して下さい。
「唇の痺れ」があるときに飲んでも良い市販薬は?
市販薬で、唇の痺れに非常に効く飲み薬は少ないと思います。唇の痺れが痛く感じるようであれば、痛み止めを飲むと多少は緩和される可能性があると思いますが、違和感は取りきれないと思います。
赤いぶつぶつがあり、唇の痛みもあるような口唇ヘルペスによって唇の痺れの症状が出現している場合は、再発の場合であれば市販薬の塗り薬を使うと症状を緩和することができるでしょう。しかし、このような唇の痺れの症状がはじめて出現した場合には、皮膚科を受診して診断を受けることをお勧めします。
「唇の痺れ」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「唇の痺れ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ストレスや貧血で唇が痺れる症状が現れることはあるのでしょうか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
あります。
例えば、口唇ヘルペスはストレスや疲労、貧血のような免疫力が低下している状態で発症することが考えられます。
親知らずの抜歯後や、麻酔の後に唇が痺れているときはどうすれば良いですか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
親知らずの抜歯では、麻酔薬を使っているために数時間はそのまま様子を見ていただくのが良いでしょう。薬の影響が次第にとれて痺れはなくなると思います。もし治らなければ治療を受けた歯科口腔外科に相談してください。
突然、上唇に麻酔のようなしびれが出た場合歯医者に行くべきでしょうか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
上唇の痺れが突然出現した場合には、脳血管障害や三叉神経痛などの症状も考えられるため、脳神経内科や脳神経外科への受診をお勧めします。
ただし、突然の症状ではなくて、上唇に麻酔のような痺れが出た場合は、歯科治療後や口内炎などの口に関するトラブルがある状況であれば、歯科医院に相談しても良いでしょう。
朝起きたらくちびるに違和感があり麻痺していたのですが、病気の可能性はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
あります。
過去に口唇ヘルペスを発症している方の場合には、再発を起こす直前に唇に違和感を感じる場合もあるため、麻痺が一時的なものであれば、口唇ヘルペスの再発を疑います。
しかし、麻痺の症状が続く状態であれば、脳卒中の症状であることも考えられるため、脳神経内科や脳神経外科を受診することをお勧めします。
まとめ
唇の怪我や、歯科治療後などの場合には、唇が痺れていても様子をみておくことも可能です。
口唇ヘルペスも何度か発症している方であれば、自分で気が付きやすいのではないかと思います。
ただし、突然症状が現れる場合には、脳卒中など緊急性の高い病気も隠れているため、注意が必要です。医療機関を受診するタイミングを逃さないように気を付けましょう。
「唇の痺れ」で考えられる病気と特徴
自分で対処することが難しい病気が多くあるため、病気を疑う場合には、医療機関で相談することが望ましいでしょう。
「唇の痺れ」と関連のある症状
「唇の痺れ」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 唇が赤い
- 唇の腫れ
- 唇が痛い
- 舌のしびれ
「唇の痺れ」症状の他に、これらの症状がある場合も、「脳卒中」「口唇ヘルペス」「脳腫瘍」「三叉神経痛」「口腔がん」などの疾患の可能性が考えられます。
突然症状が現れる場合は、すぐに医療機関へ受診することをおすすめします。
・日本臨床皮膚科医会
http://plaza.umin.ac.jp/~jocd/disease/disease_26.html
・日本口腔外科学会HP
https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/kouku/shibireru/