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ポリフェノール摂取で「肝臓がん」リスク低下 どんな食品にどれくらい含まれている? 医師が解説

 公開日:2025/07/17

国立がん研究センターの研究員らは、 日本人を対象に食事から摂取するポリフェノールとがんの発症リスクの関連を調査しました。その結果、全体のがんリスクとの明確な関係は認められなかったものの、肝臓がんや大腸がんについては、特定の食品に含まれるポリフェノールの摂取量が多いほど、リスク低下の傾向がみられました。この研究結果について、中路医師にお話を伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

国立がん研究センターの研究員らが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

国立がん研究センターの研究員らが実施した日本の大規模前向き研究では、食事から摂取されるポリフェノールとがんのリスクの関連が検討されました。この研究には、45〜74歳の男女約9万人が参加し、約15.8年にわたって追跡されました。 研究の結果、総ポリフェノール摂取量とがん全体のリスクとの関連はみられませんでしたが、部位別では一定の関連が確認されました。総ポリフェノール摂取量が多い人では、男女ともに肝臓がんのリスクが低い傾向がみられ、特に男性ではお茶やコーヒー、アルコール飲料を除いた食品からのポリフェノール摂取量が多い場合に大腸がんリスクが低下する傾向が確認されました。また、こうした食品由来ポリフェノールを多く摂取する人は、健康的な生活習慣を持つ傾向もありました。 結果として、総ポリフェノールはがん全体の予防に直接つながるとは限らないものの、特定のがんに対しては予防的に働く可能性が示されました。今後は、食品の種類や生活習慣も含めた詳細な研究が求められます。

ポリフェノールの健康効果

ポリフェノールの健康効果はどのようなものがあるのですか? どんな食品にどれくらい含まれているか、1日の適切な摂取量も教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

ポリフェノールは、植物に多く含まれる苦味や色素の成分で、強い抗酸化作用を持ちます。活性酸素を除去し、動脈硬化や高血圧、糖尿病、さらには美肌やアレルギー予防にも関与するとされ、健康維持に役立つとして注目されています。 ポリフェノールは、赤ワインやコーヒー、緑茶、ブルーベリー、チョコレート、そば、大豆などに多く含まれ、例えば赤ワイン100gには約230mg、コーヒーには約200mg含まれています。ポリフェノールは水溶性で体内に長くとどまらないため、毎日こまめに取り入れることが大切です。健康のためにも、様々な食品を組み合わせてバランスよくポリフェノールを摂取しましょう。

研究内容への受け止めは?

国立がん研究センターの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

この研究結果の特記すべき点は、特にコーヒー由来の総ポリフェノール摂取が肝臓がん予防に寄与する可能性が高いと示唆されたことです。しかし一方で、特定のポリフェノール(主に大豆由来のイソフラボン)は、女性で摂取量が多いほど肝臓がんリスクが高まるという別の報告もあるので、ポリフェノールの肝臓がん予防効果に関しては、まだ議論の余地はありそうです。元来、飲食は性別や個人の体質や基礎疾患などによって影響が大きく異なるため、今後さらなる検討が必要です。ポリフェノールの摂取に関しては、そのバランスと個別化が重要と考えます。

編集部まとめ

ポリフェノールには、抗酸化作用をはじめとする健康効果があるとされ、今回の研究では特に肝臓がんや大腸がんとの関連が注目されました。緑茶やチョコレート、赤ワインなど、日々の食事に取り入れやすい食品に多く含まれており、こまめに摂取することで私たちの体を守る力が期待できます。無理なく、できることから始めて、健康的な食生活を心がけていきましょう。

この記事の監修医師