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大阪万博で話題の「レジオネラ属菌」もし感染したらどうなる? 症状・感染経路を医師が解説

 公開日:2025/06/26

2025年の大阪万博の会場内で、「レジオネラ症防止指針」の指針値を超えるレジオネラ属菌が検出されたことが報告され、来場者の間で不安が広がりました。自然界に存在するレジオネラ属菌は、状況によっては肺炎などの感染症を引き起こすこともあります。そこで今回は、感染経路や症状、予防のポイントについて、本多医師に詳しい話を伺いました。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

大阪万博でレジオネラ属菌が話題になった経緯

大阪万博で「レジオネラ属菌」はほとんど検出されなかったとのことですが、現在までの発生状況を教えてください。

本多 洋介 医師本多先生

大阪万博に関連して報告されたレジオネラ属菌の検出については、これまでに複数の調査と対応がおこなわれてきました。

2025年5月28日、大阪万博・静けさの森の水盤において、大阪市保健所の検査により「レジオネラ症防止指針」の指針値を超えるレジオネラ属菌が検出されました。これを受けて、日本国際博覧会協会は水盤の排水と利用停止を実施し、6月7日には西側と南側の水盤の清掃と消毒をおこないました。その後の検査では、いずれもレジオネラ属菌は検出限界以下であるとの判定が出ています。また、ウォータープラザにおいても、6月4日および6日に海水から指針値を超えるレジオネラ属菌が検出されたとの速報があり、大阪市保健所の助言を受けて水上ショーの中止や噴水の停止などの対策が講じられました。

しかし、これらの検出結果は生菌PCR法によるものであり、同時におこなわれた培養法による再検査の結果、5月30日、6月3日、6月7日のいずれの検体からも指針値を超えるレジオネラ属菌は検出されませんでした。このことから、ウォータープラザの海水中にはレジオネラ属菌が指針値を超えて存在していないことが確認されています。

レジオネラ属菌とは?

レジオネラ属菌に感染するとどうなるのでしょうか? 症状や感染経路、感染しやすいシチュエーションを教えてください。

本多 洋介 医師本多先生

レジオネラ属菌に感染すると、主に「レジオネラ肺炎」または「ポンティアック熱」という病気を発症します。レジオネラ肺炎は、全身のだるさや頭痛、筋肉痛、38度以上の発熱、咳、胸の痛み、呼吸困難などの症状が表れ、重症化すると命に関わることもあります。一方、ポンティアック熱は突然の発熱や悪寒、筋肉痛などがみられるものの、自然に回復する軽い症状が特徴です。

感染経路としては、レジオネラ属菌に汚染された水から発生する細かい水しぶきを体内に取り込むことで感染するケースが最も多く、冷却塔水や加湿器、循環式浴槽などが感染源になることがあります。また、温泉や河川で汚染水を誤って口に入れたり、土壌中の粉じんを吸い込んだりしたことで感染するケースも報告されています。特に温泉施設やプール、加湿器の使用など、水を扱う場面では注意が必要です。

大阪万博のレジオネラ属菌に関する騒動の受け止め

大阪万博で話題になったレジオネラ属菌について、受け止めや今後気をつけるべきことを教えてください。

本多 洋介 医師本多先生

2025年の大阪万博でレジオネラ属菌が検出され、多くの人が不安を感じたかと思います。レジオネラ属菌は自然界の水や土壌に広く存在する菌で、主に人工的な水循環設備で増殖しやすくなります。通常、健康な人に感染することは少ないものの、免疫力が低下している高齢者や持病のある人などは、重い肺炎(レジオネラ症)を起こす可能性があります。

今回の件では、水質管理の不備が疑われており、今後は施設側としては、徹底した再発防止策と透明性のある情報発信が重要です。私たち市民は、必要以上に不安を抱くのではなく、正しい知識を持ち、体調に変化があった際には早めに医療機関を受診することが大切です。今回の事例を「騒動」で終わらせず、より安全な施設運営につなげていくことが求められます。

編集部まとめ

大阪万博で話題となったレジオネラ属菌は、適切な管理を怠ると肺炎などの深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。温泉や加湿器など、日常生活にも潜む感染経路には注意が必要です。水を扱う施設では、衛生管理の徹底が求められます。

この記事の監修医師