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「ノロウイルス」にかかりやすい“血液型”が研究で明らかに 感染しやすいのは何型?

 公開日:2025/03/01

アメリカのベイラー医科大学の研究員らは、ノロウイルス属に分類されるノーウォークウイルス(NV)とABO組織血液型との関連性を調査しました。その結果、血液型Oの人はノーウォークウイルスに感染しやすく、B型の血液型抗原を持つ人は感染および症候性疾患のリスクの低下が示されました。この内容について吉川医師に伺いました。

吉川 博昭

監修医師
吉川 博昭(医師)

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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。

研究グループが発表した内容とは?

アメリカのベイラー医科大学の研究員らが発表した内容を教えてください。

吉川 博昭 医師吉川先生

今回紹介する研究報告は、アメリカのベイラー医科大学の研究員らによるもので、その研究報告は医学雑誌「The Journal of Infectious Diseases」に掲載されています。

ノーウォークウイルスとは、ノロウイルス属に分類されるウイルスの種であり、急性胃腸炎を引き起こす原因ウイルスの1つです。ノーウォークウイルスの感染には個人差があり、一部の人は感染しにくいことが知られています。しかし、感染に対する抵抗力や感受性を決定する要因については十分に解明されていません。

この研究では、ABO組織血液型とノーウォークウイルスの感染および症候性疾患のリスクとの関係が調査されました。研究に参加した51名のボランティアの血清サンプルを分析した結果、血液型がO型の人はノーウォークウイルスに感染しやすいことが示されました。具体的には、O型の人が感染する可能性はほかの血液型よりも高く、オッズ比は11.8(95%信頼区間1.3〜103)と報告され、特にB型の人は感染する可能性が低いと確認されました。これは、遺伝的要因がノーウォークウイルスの感染および症候性疾患のリスクに影響を与えることを示した初めての研究であり、今後の研究によってさらなる検証が求められます。

ノロウイルスとは?

今回の研究テーマに関連するノロウイルスについて教えてください。

吉川 博昭 医師吉川先生

ノロウイルスは、急性胃腸炎や食中毒の原因となるウイルスで、特に冬季に流行します。感染経路は経口感染が中心で、汚染された食品や水の摂取、感染者の便や吐物を介した二次感染、飛沫感染、食品取扱者を介した汚染などがあります。感染力が非常に強く、少量のウイルスでも発症するため、集団感染が起こりやすいのが特徴です。

主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛で、軽度の発熱を伴うこともあります。潜伏期間は24~48時間で、通常1~2日で回復します。治療法としては、特効薬はなく、輸液などの対症療法が中心です。予防策としては、食事前やトイレ後のこまめな手洗い、食品の十分な加熱、調理器具や環境の消毒が推奨されます。便や吐物の処理は速やかにおこない、感染拡大を防ぐことが重要です。

ノロウイルスに関する研究内容への受け止めは?

アメリカのベイラー医科大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

吉川 博昭 医師吉川先生

この研究は、ノロウイルスの感染の感受性に遺伝的要因が影響を与える可能性を示唆しており、非常に興味深いものです。ただし、感染のしやすさは血液型だけでなく複数の要因が交絡するため、今回の結果を一般化するにはさらなる研究が必要であると考えます。

編集部まとめ

研究により、ノロウイルスの感染リスクが血液型によって異なる可能性が示されました。特にO型の人は感染しやすく、B型の人は感染リスクが低いという結果が得られました。これは、血液型がウイルス感染の感受性に関与することを示す重要な発見であり、今後の研究によりさらなる検証が求められます。ノロウイルスの感染予防には、引き続き手洗いや消毒などの基本的な対策が重要です。

この記事の監修医師