「ノロウイルス」はどんな「食べ物」からうつりやすい?【医師監修】
公開日:2025/11/06


監修医師:
居倉 宏樹(医師)
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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
目次 -INDEX-
ノロウイルスとは?ノロウイルスの特徴と感染した際の症状
ノロウイルスとはどのようなウイルスですか?
ノロウイルスは人の腸管で増殖し、嘔吐や下痢などを引き起こすウイルスです。1968年にアメリカの小学校でウイルスが原因と推察される集団下痢症が発生しました。当時はその形態が明らかになっておらず、1972年に非細菌性急性胃腸炎を起こす小型球形ウイルスと判明しました。2002年に国際ウイルス分類委員会で現在のノロウイルスという名称が正式に付けられました。
このウイルスは感染力がとても強く、10〜100固程度の少量でも発症することがあります。乾燥や低温に強いため、冬場に流行しやすいのも特徴です。
ノロウイルスに感染すると一度は体内で免疫が作られますがいずれ失われます。免疫の持続期間は6ヶ月〜2年程度と考えられていますが、解明されていない点も多くあります。さらに、ノロウイルスには現在確認されているだけでも30種以上の型が存在します。年によって流行する型が異なるため、過去に感染したことがあっても再度感染する可能性があります。
参照:
『Norovirus』(Clinical Microbiology Reviews)
『Norovirus and Foodborne Disease: A Review』(Food safety)
『ノロウイルスの流行と集団免疫』(国立健康危機管理研究機構)
『ノロウイルスとは』(国立医薬品食品衛生研究所)
ノロウイルスに感染した際の症状を教えてください
ノロウイルスは感染後、通常24〜48時間の潜伏期間を経て発症します。
主な症状は吐き気や嘔吐、下痢、腹痛です。ノロウイルスによる嘔吐は二日酔いや車酔いによる嘔吐とは異なり、突然強く襲ってくるのが特徴です。
発熱は軽度にとどまり、数日以内に治ります。健康な方であれば症状から2日程度で自然に治癒し、後遺症もほとんどないといわれています。
ただし、乳幼児や高齢の方、基礎疾患のある方では症状が長引き、重症化したり脱水症状を起こしたりするケースもあります。また、嘔吐物による窒息や誤嚥性肺炎による重症化や死亡に至る例もまれにあります。
参照:
『【管内情報】 【保健所健康危機管理事例】感染性胃腸炎集団発生事例報告(高知県)』(国立保健医療科学院)
『ノロウイルスの流行と遺伝子型』(日本食品微生物学会)
ノロウイルスの感染しやすさと感染経路
ノロウイルスは人から人に感染しますか?
ノロウイルスは人から人へ感染します。感染者の嘔吐物や便に含まれるウイルスが体内に入ることで感染します。
感染者の嘔吐物や便には多量のウイルスが含まれています。ノロウイルスは少量でも感染するほど感染力が高いのが特徴です。そのため家庭内や保育施設、学校、介護施設、飲食店など人が集まる場所では毎年集団感染が発生しています。
また、感染しても症状が出ない不顕性感染のケースもあります。症状が現れていなくても便からウイルスが排出されるため、本人が気付かないうちに周囲へ感染を広げてしまうおそれがあります。
ノロウイルスの感染経路を教えてください
ノロウイルスの主な感染経路は下記のとおりです。
ノロウイルスは人から人への感染だけでなく、食品からも感染するのが特徴です。そのため、マスクや手洗い、うがいなどの基本的な感染対策をしていても感染、発症する可能性があります。
また、ノロウイルスによる感染症は、感染経路によって呼び方が異なります。人から人への感染により発症する場合は感染性胃腸炎、ウイルスに汚染された食品や水を原因として発症する場合は食中毒といいます。
| 感染経路 | 感染の仕組み | 感染例 |
|---|---|---|
| 食品媒介感染 (食中毒) | 汚染された食品や水を摂取する | 生食や加熱不十分な二枚貝を食べる 感染者が調理時に食品を汚染する |
| 接触感染 | 嘔吐物や便に含まれるウイルスが手指を経由して体内に入る | ドアノブや手すりなどに付着したウイルスに触れ、その手で食事をする |
| 飛沫感染 | 感染者の嘔吐物や便の飛沫が体内に入る | 嘔吐物を処理した際に飛沫を浴びる |
| 粉塵感染 | 乾燥した嘔吐物や便が粉塵となり空気中に舞い、吸い込む | 嘔吐物の処理が不十分で、乾燥後にウイルスを含むほこりを吸い込む |
ノロウイルスはどのような食べ物からうつりますか?
ノロウイルスは二枚貝からうつる場合があります。
二枚貝は海水を大量に取り込み、海水中のウイルスを体内で濃縮します。こうして汚染された貝を生や加熱が不十分な状態で食べることで感染する可能性があります。
カキやシジミ、アサリ、ハマグリなどがノロウイルスに汚染されていることがありますが、生食の習慣があるカキがノロウイルスの代表例として有名です。
一方、ノロウイルスによる食中毒事例の約7割では原因となる食べ物が特定できていません。ウイルスに感染した食品取扱者が調理や配膳の際に手指を介して食品を汚染するケースが多いためです。
参照:『ノロウイルスに関するQ&A』(厚生労働省)
ノロウイルスがうつりやすい季節や期間と感染対策
ノロウイルスはどの季節に流行しやすいですか?
ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は1年を通して発生しますが、特に冬に流行します。11月頃から感染者が増え始め、12月から翌年1月にかけて流行のピークをむかえます。
寒い時期に流行するのは、ノロウイルスが低温や乾燥した環境に強いためです。温度が低いほど長期間生存し続けることができ、気温が20度では約1ヶ月、4度では約2ヶ月間生存が可能ともいわれています。
参照:
『食品健康影響評価のためのリスクプロファイル ~ ノロウイルス ~』(内閣府食品安全委員会)
『調理場における衛生管理&調理技術マニュアル 第6章 食中毒病因物質の解説』(文部科学省)
ノロウイルスに感染してからどの程度の期間うつりますか?
ノロウイルスは症状がある間だけでなく、回復後も他者にうつす可能性があります。
嘔吐や下痢などの症状がある間は特に感染力が強く、回復後も通常は1週間程度、長い場合は1ヶ月以上にわたって便からウイルスが排出されます。このため、回復した方も二次感染や集団感染の発生源となります。
ノロウイルスの予防法を教えてください
ノロウイルスには有効な予防接種がないため、日常生活のなかでの予防が求められます。主な方法は下記のとおりです。
- 徹底した手洗い
- 換気
- タオルや食器などの個別使用
- 食品の加熱
- 調理や配膳時の衛生管理
- 身の回りの消毒
ノロウイルスの感染者と接する際はどのような点に気を付ければよいですか?
ノロウイルスに感染した方と接する際には二次感染に気を付けなければなりません。感染予防のため、マスクと手袋、エプロンを着用します。また、接触後は必ず手洗いを行いましょう。
ノロウイルスは乾燥にも強く、嘔吐物や便の処理が不十分だと、乾燥したウイルスが空気中に舞い、粉塵を吸い込み感染することがあります。そのため、嘔吐物や便はペーパータオルで覆いながら静かに拭き取り、処理後は次亜塩素酸ナトリウムで消毒を行います。
参照:『食品中のウイルス管理への「食品衛生の一般原則」の適用に関する ガイドライン』(Food and Agriculture Orgnization of the United Nations)
ノロウイルスによる胃腸炎の治療法
ノロウイルスによる胃腸炎は自然に治りますか?
多くの場合、ノロウイルスによる胃腸炎は発症から数日で自然に回復します。症状は1〜2日間で強く現れますが、回復に向かうにつれて次第に落ち着いてきます。下痢止め薬はウイルスの排出を妨げ、回復を遅らせることがあるので自己判断で使用しないようにしましょう。
体内は嘔吐や下痢によって水分が失われやすい状態になっています。特に乳幼児や高齢の方、基礎疾患のある方は体調の変化に注意しながら様子を観察し、症状が落ち着いてきたら少しずつ水分や栄養を補給します。強い症状が長引くときや、脱水が心配される場合には早めに医療機関を受診しましょう。
病院でのノロウイルスによる胃腸炎の治療法を教えてください
ノロウイルスに特効薬はなく、症状に応じた治療が行われます。
軽度から中度等度の脱水がある場合は経口補水液での水分補給が推奨されます。症状が進行し、意識障害や腸管の運動機能が著しく低下、または停止している場合は、点滴で水分や電解質を補います。
嘔吐や下痢の症状が強く、水分が大量に失われていると判断された際には、制吐剤や消化管運動抑制薬が用いられることもあります。
抗菌薬は、ノロウイルスには効果がないため、通常は使用されません。
参照:『JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015-腸管感染症-』(一般社団法人日本感染症学会)
編集部まとめ
ノロウイルスは感染力が強く、人から人や食品を介して感染することがあります。また、症状が出ている間だけでなく、回復後もしばらく人にうつす可能性があります。
発症しても数日で治る場合がほとんどですが、乳幼児や高齢の方などはこまめに様子を観察し、脱水や体力の低下が心配な場合は医療機関を受診しましょう。
手洗いの徹底や食品の加熱、嘔吐物や便の適切な処理など、日常生活の基本的な対策が感染予防に有効です。
参考文献



